ラヂオ体操第三
↓Wikiから拝借
早朝、メンデルスゾーン編曲のバッハのマタイ受難曲を聴いてたら、いきなりカミさんがラジオを手に階段を下りてきた。上の娘もいっしょだ。
ラジオからは大音声で「ラジオ体操第一」が流れている。あのAMのノスタルジックな音質だ。あえなく轟沈するメンデルスゾーン&バッハ。
團伊玖磨の名曲とNHKのアナウンサーのさわやかすぎる掛け声が耳をつんざく。それに合わせて嬉しそうに体操を始める女二人…。いったいなんなんだ!?
というわけで、今日はメンデルスゾーン&バッハおよびシューマン&バッハについて書こうと思ってたんですけど、強制的にラジオ体操について書くハメになりました。わけわからん。
えぇと、夏休みの風物誌にはいろいろありますが、このラジオ体操も避けて通れないイベントの一つですよね。
これから少しずつ書いていこうかと思っていますけど、夏休みってものすごく戦争の臭いがするじゃないですか。それがいいか悪いか、好きか嫌いかは別としまして、日本人がなぜかこの暑い季節に、「鎮魂」という一つのテーマのもと、不思議な一体感を抱くというのは事実です。
高校野球については、いつかも書きましたでしょうか。あれはまさに「戦争の記憶」そのものです。坊主頭、軍隊式行進、負けたら終わりの背水の陣、故郷への思い、故郷の思い、原爆の日、終戦の日、お盆、土、汗、涙…炎天下での過酷な戦い。だいたい日本で最も暑い日の最も暑い時間に、最も暑い場所で決勝が行われるんですからね。あれをですね、ドームで冷房きかせて、人工芝の上でやってたら、誰も見ませんよ。あれはスポーツではありません。鎮魂の神事(&仏事)です。
ラジオ体操も非常に軍国主義的ですよね。そんなこと考えていない人がほとんどですけどね。やってる人もやらせてる人も。まあ、もともとは「大日本国民体操」ですからねえ。
毎朝たくさんの親子が集まって、あの音質の音楽と掛け声に合わせて、みんなで体操している姿をですね、外国の方が見ると、かなり怖いものがあると思います。実際近所の外国人の方々はみんな目を丸くしています。北朝鮮と同じに見えるらしい。
だいたいですね、日本の学校の体育というのは、ほとんどあの時代の遺物です。私もそんなこと考えずにやってましたけどね。体育の先生もそんなこと知らないし。あの「気をつけ」「休め」とか、行進とか集団行動とか、跳び箱とか鉄棒とか、あと運動会という一大イベントもそうですね、みんな軍隊式です。
そうそう、あの体育座りっていうやつ、あれは捕虜を拘束する座らせ方ですよね。
いや、私は日教組じゃありませんから、そんなのどうでもいいと思ってます。ってか、日教組さん、そのへんについてはどうなのよ?教科書のこととかより、自分たちがやっている学校行事や学校的統制法は軍国主義じゃないのかい?
ま、いいや、それも。私には単なる興味の対象にしかすぎませんから。
そうだ、今日はラヂオ体操第三の話だった。
皆さん、ラジオ体操にはいろんな種類がある(あった)のをご存知ですか?上のYouTubeに上がっているラヂオ体操第三は、いわゆる「ラジオ体操第三(二代目)」のピアノ・ヴァージョンです。
これは戦後すぐ橋本国彦によって作曲されたものです。ピアノは丹生健夫。GHQも、この国民的体操が軍国主義的だと感じていたんでしょうね、それまで主流だった「ラジオ体操第三(初代)」をやめさせ、この新しい第三を作らせました。初代に比べますと、ずいぶんとまろやかになっています。
というか、本当によく出来た名曲ですね。素晴らしすぎ。橋本国彦はウィーンで学んだ名作曲家(&ヴァイオリニスト)で、矢代秋雄、芥川也寸志、團伊玖磨、黛敏郎らを育てた優れた教育者でもありました。戦中は軍国歌謡や行進曲をたくさん作りましたが、戦後は強い反戦思想を持っていたようです。
ラジオ体操は、結局昭和22年にいったん実質上禁止になります。やっぱり軍国主義的だという批判があったんですね。結局4年間放送されませんでした。
昭和26年になって復活したわけで、今考えれば、戦後5年くらいで「戦後」は終わってしまったとも言えるんですよね。朝鮮特需によるすさまじい復興と成長、そしてアメリカナイズによって、精神的バブルが起きてたんですね。それも良かったのか悪かったのか…。
ちなみに初代第三も橋本国彦の作曲です。興味のある方は右のCDをどうぞ。少し試聴できますよ。
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