『世界一わかりやすい「老荘思想」』 長尾剛 (PHP文庫)
今日も一日研修。教科「道徳」に関するありがたい研修の合間にこんな不道徳な本読んでていいのかな(笑)。だって、こんなこと書いてあるんですよ。
「仁義」だの「道徳」だの「孝行」だの「慈愛」だの「忠義」だのは、人々が「道」を解っておらぬから国が乱れて、そこにつけ込むようにして出てきた理屈に、過ぎぬ(by老子)。
この本では、こんな調子で、老子と荘子が、私たち現代日本人に講演をしてくれています。昨日書いたように、ちょっと日本語間違えてますけど(笑)。
こんな本を読んでいる私は、つくづく非国民教師だと思います(笑)。それにしても、日本の教育っていうのは実に儒教的ですね。そういう感覚でこの研修に参加している先生はいるのでしょうか。まあ、いないでしょう。ま、それより、自民党的教育施策を聞く民主党的組合先生の心境やいかに。実に混沌としておりますな(笑)。つくづく私学の教員で良かったと思うのであります。
いやいや実は、禅宗の教えをベースにする私学の教員として、けっこう根本的な矛盾に突き当たってるんですよ。
この本にも書いてあるとおり、老荘思想は中国禅と習合して日本禅として定着しました。一般人からすると、老子の「無為自然」がそのまま「禅」の境地だとしても良いほどです。ですから、「智慧」ではなく「悪知恵」やら「知識」ばかり教え込む現代の教育に違和感を抱くのは当然ですよね。
なんだか最近空しさを覚えるんですよ。入試に勝つための戦略ばっかり教えて、それでいい大学に入れて、私も生徒も欣喜雀躍してるんですから。それで金持ちになって勝ち組になれっていうことでしょうかね。いやですねえ。
かといって、たとえば老荘思想なんかを教え込んだら、現代社会では負け組になって命さえ危うくなる。死なないために、下手すると犯罪者になるかもしれない。貧すれば鈍する。
ですから、最近は少し割り切ってですね、やっぱり自分の命が一番大切だから、しかたない、環境に適応してある程度うまくやってかなきゃ、その先理想も実現できない、と考えるようにしてます(無理あるなあ)。動物も植物も、まずは死なないために環境に適応していきますからね。
ところで、この不二草紙に今まであんまり(全然?)「老荘思想」が出てこなかったのを不思議に思っていた方がいらっしゃるかもしれませんね。
だって、私の言う「コトよりモノ」という理念は、考えようによっては「人為より自然」ということになりますからね。まんま老荘思想じゃないかと。人間による概念化や生活の随意化、すなわち「コト化」を否定するのが老荘思想ですからね。コトの権化「言の葉」を否定するという意味でも一致していますよね。
実はですね、全くその通りだと思う反面、ちょっと違うなとも思っていたんです。それはたぶん、老荘思想と孔孟思想とが、デジタル的に対比されすぎていたからでしょう。今回、こういうとっても分かりやすい本を読んで再確認しました。
私は「コトよりモノ」と言いつつ、「コトを窮めてモノに至る」とも言っています。つまり、儒家のように、人間が作り出した、ある意味不自然である「仁義」や「礼」や「法」という「コト」を窮めた結果、「無為自然」という「モノ」に還るということもあると思うんですよね。最初から「仕事(シゴト)」しないのはどうかと。
禅は非常に形式化した生活(仕事)を営みながら、そこからモノに還っていきますよね。カタ(コト)を重視し、それを繰り返し、窮めていく中で悟っていく。不自由の中の自由といいますかね、器の中の水といいますかね。そういう感覚が私の中にあるんです。
ですから、まあ結局は、儒家と道家とを峻別して対峙させるんじゃなくて、禅的に融合していくのが正しいのだと思うわけです。
そういう意味で、中国の「道(タオ)」が、日本で「道(みち)」になっていったというのは、実に面白いことです。
教育の世界も「道(みち)」を説くものでありたいですね。「コト」を教えていくにしても、その究極の目的は「モノ」でありたい(もちろん、そのモノは「物質」としての物ではありませんよ)。
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