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2009.08.14

『忘れないで、わたしたちの戦争~中居正広が聞く戦場の声』 (NHK)

Sp_h3_img 日は終戦の日。記念日と言ってよいのやら。
 毎年NHKで繰り返される戦争を語り継ぐための企画。やはりNHKが中心となっているラジオ体操や高校野球も、皆戦争の記憶を引きずっています。引きずるというよりも、半分は懐かしんでいる。戦争の記憶というのは、当事者たちにとって、単に忌まわしいものというわけではない。そこが非常に難しい部分なのです。
 このことは案外指摘されないことですね。人間にとって、記憶とは「不幸」であり、そして記憶は「郷愁」という愛すべきものに転換されます。つまり、「不幸」が「愛すべきもの」になるという、本質的な自己矛盾を、我々は抱えているのです。
 ですから、戦争に対する、感情的でない論理的な論議は、どこか白々しく無責任で心のこもらないものになっていきます。戦争経験者も未経験者も、右も左も、みんなワガママになっていくだけです。戦争をネタにプチ戦争しています。そういう恥ずかしい自分たちの姿には無反省なのに、妙に他に対しては攻撃的になる。それこそこの世から戦争がなくならないことの原因であると、私はいつも思うのです。
 私も若い頃は、それなりに「戦争」を語ろうとしてきました。いちおう教育者ですから、特にそういう無責任の大波が立っている現場にいますし。
 最近も、来年度開校予定の中学で使う歴史の教科書の選定をしたんです。若手の社会科教員が選んだ教科書があまりに自虐史観的なので、中庸なものに代えさせました。彼は若いので思想的に選んだのではありません。そして私がそれを退けたのも私の戦争観に基づく判断ではありません。逆に個人的な「感情」や「論理」を離れるために、最も中庸なものにしました。
 教育という現場での「戦争」の扱いは、非常に難しいというより、非常に面倒です。ただ、私は無責任に憂いの表情を見せる、いや場合によっては怒りの表情を見せる、某組合員のような態度だけは取りたくありません。
 そういう意味も含めまして、本日のこの番組の司会、中居正広くんの「ニコニコ」ぶりには、あんまり違和感を覚えませんでした。なんだ、ニヤニヤしやがって、不謹慎だ!という意見が多かったようですが、私はなんとなく彼にシンパシーすら感じたんですよ。
 私を知る人はわかると思いますが、私も「ニコニコ」人間なんです。人の不幸を聴く時も、ついつい笑顔になってしまうんですよね。で、気がついて、無理に神妙な顔をしたりする。以前はそうだったんです。でも、最近は、無責任で表面的な同情はやめて、「ニコニコ」しながら、そういう話を聞くことにしたんです。
 最近もそういうことがいくつかありました。でも、その方が自分も相手も楽だし自然だということが分かったんです。だから、中居くんの司会ぶりは、あれはあれで真実だと思いました。
 中居くんを責めるなら、ゲストの金子兜太さん、奈良岡朋子さん、五木寛之さんも同様に責められなければなりませんよ。金子さんは多少の兵隊経験はありますが、あとのお二人はある意味戦後世代ですからね。そして、お三人とも戦後人生を謳歌しましたから。インタビューに登場した、ずっと外出もできずに人生を終えた元将校さんのあの重い言葉を、彼らはどう聞いたのでしょう。
 今回は静岡の連隊の兵士たちの証言が多く取り上げられていました。静岡の護国神社も登場。実は私の実家は、あの護国神社のすぐ近くにあるんです。間に小山を挟んでいますが、直線距離だと700メートルくらいしか離れていません。しかし、私がそこに住んだ高校時代、護国神社がどういう神社なのか、誰も教えてくれませんでした。実は一度も行ったことがありません。
 ちょうど今日ですね、8月の14日に護国神社で花火大会があり、山越しにそれを眺めた記憶しかありません。今思えば、あれは鎮魂の花火だったのですね。そう、つまり、あの頃(30年前)は、誰も戦争について語ろうとしていなかったということです。
 つまり、戦後の何十年間かは、戦争経験者は何も語らず、未経験者が無責任に語り過ぎていたのです。それが日本の間違いでした。教育現場における妙な戦争観もそうして醸成されてしまいました。私もそういう教育を受けて、そして今教育者になっています。
 この番組が終わってすぐに、24時間テレビという偽善極悪番組とともに恒例となっている「火垂るの墓」が始まりました。この「アニメおそるべし」作品の違和感については、以前こちらに書いたとおりです。最も無責任な同情を煽る恒例行事ですね。上の娘は絶対に観たくないと言いましたが、まだ観たことのない下の娘はどうしても観ると言い張りました。結局みんなで観るハメに(笑)。ま、これも通過儀礼みたいなものだからいいか。
 日本の夏。戦争の記憶。こういう夏の風物誌が形成されたのは、昭和19年頃からでしょう。
 そして戦後、一つは鎮魂として、一つは思い出として、一つは教育として、この習慣は定着してきました。夏休みお盆休みの我々日本人の心に、ある意味見事に溶け込んで、現在と過去と未来をつなぐ貴重な機会として、あまりにしっくりそこにあります。
 おかげで、故郷に帰省した戦後世代が、戦前戦中世代と、たとえばお墓参りを通じてつながることができる。あまりに悲惨な、世界中で数千万に上る死者の魂の力で、我々はようやくつながることができるのです。
 私は時々思います。大正時代や明治時代の夏休みはどんな感じだったのかと。江戸の夏はもっと能天気だったのか。

NHK 戦争証言プロジェクト

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コメント

初投稿です。sun

 「火垂るの墓」我が家でも、みんなで観るはめになりました。

 ・・・・私は途中で脱出しました。

 どうもラストシーンがいけません。

 せめて天国で家族が幸せにしている・・・という感じで終われば、後味がよろしいんですが。(*^-^)

投稿: 宮田寿望 | 2009.08.15 11:32

宮田さん、コメントありがとうございます!
そうですねえ、あのアニメはいけませんね。
でも、そのおかげで、教材としての原作が生きてきます。
あれを読むと、生徒もびっくりしますよ。
私は原作は名作だと思います。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.08.15 11:49

 そうですか。shine

 今度原作を読んでみます。delicious

投稿: 宮田寿望 | 2009.08.15 15:40

ぜひ。
本文で「火垂るの墓」の記事へのリンクを張り忘れてました。
以下の記事です。
http://fuji-san.txt-nifty.com/osusume/2004/12/_.html

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.08.15 19:47

前略 薀恥庵御亭主 様
「平和」は本当に尊いですね。
愚僧など「平和」を
失った瞬間から・・・
「完全無欠の鬼」に
変身するはずです。笑
愚僧は「平和」な時だけ
「調子がいい」のです。苦笑
あっ・・・それから
どうでもいいことですが・・・
「高畑勲」様演出
「花登筐」様原作
の「アパッチ野球軍」は・・・
近代アニメの金字塔です。笑
ふぅぅぅぅ・・・・やっぱり
愚僧は本物の「あかんたれ」です。笑
合唱おじさん          拝

投稿: 合唱おじさん | 2009.08.16 00:37

合唱おじさん様、こんにちは。
「平和」が一番です。
戦いはフィクションの中だけでけっこうですね。
プロレスとか、アニメとか。
「アパッチ野球軍」、高畑さんなんですか!?
知りませんでした。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.08.16 10:38

今晩は。

仕事柄お年寄りと接する機会が多い職場なんですが、介護の世界では戦時中の話題は一応タブーなんです。

それだけ皆さんが言葉に出来ない位辛い体験をなさったんだと思います。

それでも、話して下さる方もいて勉強にはなりますが、その後の声かけに困るんですよね(>_<)

戦争は本当に無意味です!平和が一番!

以前アジアに旅行に行った時に、現地の方に日本が戦時中にしてきた事を教えて頂き、申し訳ない気持ちで一杯になりました。

私は靖国神社は総合的に考えて、やはり別けるべきだと思います。
毎回あれだけ問題視されるのですから。

先生はどう思いますか?

投稿: ノリ | 2009.08.23 00:28

ううむ、これは実に難しいしデリケートな問題だよね。
オヤジといつもケンカになるよ、この話題で。
まず、靖国が一般の宗教法人だというところが問題なんだよね。
当時の兵隊さんはみんな「靖国で会おう」と言って戦ったわけだから、
今さら国立の別施設を作るのも難しいしね。
A級戦犯の分祀が一番いいのかもしれないけど、
それが簡単に行かないところに、この問題の根の深さがあるね。
とにかく靖国自身の判断で変えていくしかないので、
今後の靖国の対応に期待しましょう。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.08.23 09:31

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