吉田の火祭り2009
コノハナサクヤヒメさんの嫉妬の炎(爆発・噴火)を鎮めるために、こうして我々人間がチョロチョロと火をともして、「そうですよねえ、ひどいですよねえ、ニニギさん。まあ、なんで男ってヤツは自分のことを棚に上げて、女を疑うんでしょうねえ…」とご同情申し上げるこの祭。
今年に入ってから、個人的にずいぶんとコノハナサクヤヒメさんにお世話になっている…というか、ちょっと良くしてもらいすぎな感すらあるワタクシ。それこそご主人のニニギさんに申し訳ないくらい(笑)。
そんな日頃のお礼も含めて、家族で火祭りに参加してまいりました。一昨年と同様、まずは我々夫婦の結婚式の場でもあった北口本宮冨士浅間神社拝殿で二礼二拍手一拝。教え子が巫女さんをやっているのを見つけ、特別にお神酒を何杯もおかわりさせてもらいました(笑)。
そして、ある意味祭りのクライマックスである点火式を拝見。屋台がある方には人がたくさんいるのに、この大切な神事を観る人はまばら。地元の人より外国人の方が多いのでは。まあ、いいか。
最後の大松明に炎が上がると、たしかにコノハナサクヤヒメさんの怒りの炎の方は収まったような気がしましたから不思議です。前にも書いたかもしれませんが、こうして「火をもって火を制す」という発想自体が日本的ですよね。西洋的な発想なら、鎮火なら「水」でしょう。つまり、日本では「制圧」よりも「懐柔」が重要視されたのですね。
さて、その後は子どもたちの要望に応えて、屋台の並ぶメインストリートへ。なんかテキ屋さんの風情も変わりましたね。ヤクザ文化の衰退とともに。ヤクザさんたちは神仏の前では「必要悪」から「必要善」に変身できたんですが、そういう場すらも失われてしまいました。なんだか単純な市場経済原理しか残っていないような気がしてちょっと寂しい光景でしたね。
いや、もちろん一般の市場とは違うメチャクチャな「非常価格」は健在ですよ。でも、それがなんというかなあ、テキ屋さん(ヤクザさん)を通じての神仏への上納という感じではなく、単純に詐欺でしかないような気さえするのですよ。それも結構外国に流出しているような気がする。
下の娘が買ったピカチュウのお面は原価の100倍とおぼしき800円!いちおう made in Japan と書いてありましたが(笑)。
上の娘は絶対に当たるはずのない、くじ引きと、あのヒモを引っ張るヤツをやり、見事に散財していました。まあ、そういう非常体験も必要でしょう。こちらも単純な市場原理にとらわれてはいけない。
一通り子どもたちにそういう体験をさせたのち、ものすごい火の粉と人波から逃れるように、我々は静かな横道に入りました。日常空間が戻ってきます。知りあいのお宅の庭先で、しばしおいしい焼肉とお酒をいただきました。地元の人たちはこの祭りの夜は、こうして喧騒から一歩退いて自宅でまったり飲み食いするんですよね。
さあ、そろそろ屋台もたたまれる時間になりましたので、最後にもう一度非日常ロードへ繰り出しました。子どもたちももう1回だけ夢を見たいと言います。つまりゼッタイ当たらないくじ引きなどをやりたいと。こちらもお酒でいい気分になっておりますから、じゃあどうぞということで、最後のチャレンジをさせました。
下の娘はヒモを引っ張って、謎の手品グッズを手に入れ、なんとなく満足。上の娘は「ラッキーボール」というパチンコの元祖みたいなゲームをやりたいと言いだしました。パチンコのように球を打って、その球を盤面に単純に並んだ穴に入れるだけのゲームです。それが一列(4個)並んだらビンゴということで、何かもらえるらしい。
でも、盤面の釘の配置を見ると、まあビンゴするのは奇跡に近い。ま、このように思い通りにならない現実を学ぶのもいいかと思ってやらせてみました。
実際やり始めてみますと、まあ全然入らない。お店のおっちゃんはとっても優しい人で、球がなくなるとオマケでいくつかの球をくれます。そうこうしているうちに縦に三つ並びました。リーチです。でもどう見ても最後の一つの穴には球は入りそうにありません。あの釘の位置では物理的に絶対不可能です。
そしてあと残り球もあと三つとなった時です。いきなりウチのカミさんが「摩訶般若波羅蜜多心経…」とか言い出したんですよ。ま、おふざけですね。そして娘は球を発射。球は全く的外れな方向へ…。
すると、お店のおっちゃんがこう言いました。「お母さん、祈る対象が違うよ。今日は仏じゃなくて神様でしょ」。たしかに。そしておっちゃんはさりげなく「天津祝詞」を唱え始めました。やるな。本来のテキ屋の伝統をしっかり受け継いでいる。
で、カミさん、「そっか!」と言って、またふざけてテキトーに「コノハナサクヤヒメのミコト…ムニャムニャ…」とエセ祝詞を唱えた…その瞬間発射された球は、本当にあり得ない動きをして、見事に狙った穴にポコッと収まったのです!!
「当たり〜!」。さすがにおっちゃん(神農さん)もビックリしたようです。なんと霊験あらたかなエセ祝詞でしょう(笑)。もちろん娘は大喜び。珍しいポケモンカードをゲットして大満足です。
この体験は娘にとって非常に大きいものになるでしょう。神様を味方につけること。これは我が家のチャッカリ処世術の基本ですから(笑)。
というわけで、帰りもしっかり浅間神社の拝殿にお参りしてきました。すっかり静まり返り、巫女さんの他には誰もいない、ある意味とっても贅沢な参拝となりました。家族みんなで「神」の存在を体感して、今年の我が家の火祭りは終わり、同時に短い夏も終わりを告げたのでした。
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