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2009.07.26

日本…「にほん」か「にっぽん」か?

↓画像に深い意味はありません。
20080829_1429 後に衝撃的な事実が発覚しますのでお楽しみに。
 自国の国名の読み方が決まっていない…そんな国は世界中探しても日本以外にないでしょう。明治以来、いやそれ以前からかな、ずっと論議されてきた国号読み方問題ですが、今年の6月の30日にいちおうの結論が出ました。
 「にっぽん」でも「にほん」でも、どちらでもよい。  どちらでもよい…って、結局決まってないじゃん!漢字の読みがお得意な(?)麻生総理らしい玉虫色の結論ではあります。
 皆さんはどのように読んで(呼んで)いますか?
 私の場合、ほとんど日常生活においては「にほん」ですね。アンケートでもそういう結果が出ています。国際的な場面で、他国を意識する時はなんとなく「にっぽん」という気がしますね。国際大会での応援は「ニッポン・チャチャチャ」ですよね。「ニホン・チャチャチャ」じゃリズムが悪い。
 会社名や学校名などではいろいろです。日本生命、日本航空、日本大学は「にほん」ですが、日本通運、日本ハム、日本体育大学は「にっぽん」です。日本テレビは…正式名は日本(にっぽん)テレビ放送網株式会社だけど、略称は日本(にほん)テレビ…笑。
 もう訳が解らん国ですね。自分の名前の読みが二種類あって、どちらでもいいっていう人はそうそういないはずです。逆にこだわりますよね。「○沢」の「沢」が「さわ」なのか「ざわ」なのかとかね。
 ああそうそう、ウチのカミさんの旧姓は「安倍」なんですが、これって実は3種類の読みがあるんですよ。で、ウチのは「あべ」じゃない読み方でして、よく間違われたそうです。彼女のおじは面倒くさいので戸籍上の読み方を「あべ」に変えちゃったそうです。そんなこともできるんだ。
 ちなみにNHKでは特別な場合以外は「にっぽん」に統一しているとのこと。逆に今回この件でもお世話になった「日本国語大辞典」では「にほん」に統一しているとのことです。ふぅ。
 なんでこんなことになっちゃったんでしょう。日本語学的に説明しようとしますと、かなり時を遡らなければなりません。まずは、なんで我が国が「日本」になったのか、から。
 実はこれもよく分かってないんですよ。困ったもんですね。一般には中国が我が国を指して、東の海上にある国ということで、「日が昇るところ」という意味で「日本」と称したのが始まりとされていますが、実は違う説もたくさんあるんです。今日はそこは省略しましょう。
 とにかく中国(外国)から「日本」と称されて、ああ我が国は「日本」という名なのだと、我々日本人(?)は初めて意識したのでしょう。そして次は、「日本」と表記された外国語をどう読むかという段になります。
 当時(今も)中国には様々な民族が住んでおり、多くの方言が存在していました。ですから、「日本」の読みも様々です。奈良時代にもいろいろな発音が聞かれたと思われます。当時最もよく聞かれたのは、朝鮮半島経由で流入した中国南部の方言でしょう。のちに呉音と言われるものです。呉音によると、「日」は「にち」、「本」は「ほん」ですから、普通に並べれば「にちほん」となりますね。しかし、中国語の音便の習慣(これもいろいろあるし、よく分かっていないんですが)から、やはり「にっぽん」と聞こえたと考えられます。
 そうすると「にっぽん」が大本ということになりますから、やっぱり「にっぽん」が正式なような気がしますね。しかし、事情はもっと複雜でして、「日本」をそのまま訓読みして「ひのもと」と読んだ人もいましたし、「日本」流入以前の自称(国名ではない)「やまと」と読んだ人もいたわけです。
375486_1 さらに漢音(中国北部の方言の音)が主流になってくると「じっぽん」と読むようにもなりました。この「じっぽん」が「ジパング」や「ジャパン」や「ジャポン」や「ヤーパン」の元になっているのはお分かりですね。つまり、ヨーロッパの人たちが中国人の発音を聞いて、それぞれのお国訛りで定着させたわけです。ついでに、「中国」を日本で「支那(シナ)」と言ってましたが、その英語なまりが「China(チャイナ)」だというわけです。
 さてさて、「日本」という文字の並びで自国の名称を表現することは確定していったのですが、上述のようにその読みは不確定でした。
 さらに難しい問題が生じます。当時の表記法の問題です。たとえば「ニッポン」という発音を、今私たちは「にっぽん」と仮名書きしますが、昔は促音の「っ」や半濁音の「◦」はありませんでした。ですから、単純に言えばですね、「ニッポン」という発音を表記するとすれば「にほん」になってしまったわけですね。その「にほん」という仮名の並びをそのまま発音すれば「ニホン」になります。ちなみに奈良時代以前は「はひふへほ」は「パピプペポ」と発音されていたことが分かっています。だから万葉集なんかに出てくる「母」は「パパ」ですよ(笑)。ついでに言うと、「ひよこ」は「ピヨピヨ」鳴くから「ピヨコ」だったわけです。面白いでしょ。
 それから、我々日本人の感覚として、これは現代人でもそうなんですけど、つまる音(促音)や破裂音である半濁音は、ちょっと「強い」「きつい」感じがするんですね。今でも、「ニホン」よりも「ニッポン」の方がそういう感じがするでしょう。だから対外的に、あるいは応援的に語気を強める時には自然と「ニッポン」と言ってしまいます。
 昔もそういう語気を嫌う人々がいたと思われます。自国について身内で話す時、日常的な会話として自分たちを表す時には、なんとなく柔らかく発音したくなりますね。特に女性はそうだったのではないでしょうか。それで「にほん」をそのまま「ニホン」と読むことが増えてきたと思われます。
 ですから、中世、ポルトガル人が作った日本語の辞書なんか見ますと、「にほん」「にっぽん」「じっぽん」、三つの「日本」が出てきます。もうその頃にはかなりカオスなことになっていたんですね。それが今まで続いてきたし、麻生さんにも踏襲されているというわけです。
 あっそうだ、また余計なことを思いついたので、書かせてください。すみません、あっちこっち行って。
 「〜本」について。これは外国人が面食らうんですよね。鉛筆の数え方。1本は「いっぽん」、2本は「にほん」、3本は「さんぼん」…もうこの時点で「本」は三種類の読み方をされています。で、普通に考えて、というか頭のいい外国人の方なら、「そうか、『ん』の後では『ぼ』になるんだな」と思いますよね。しかし、いきなり次の4本でその予測ははずれてしまいます。「よんほん」ですね。「よんぼん」とは読まない。だいたい、「よん」というのは訓読み(日本語)の「よつ」が音読み(中国語)の「さん」の影響を受けて生まれたもので、もうすでに複雑な素性の持ち主なんですけどね。ついでに言えば7本を「しち+ほん」と読んだ場合も、1本からの類推「しっぽん」にはなりません。複雜怪奇としか言いようがありません。
 さて、話を戻します。「日本」です。結局、今まで通り「にほん」と「にっぽん」を「適当に」使い分けるしかないみたいですね。
 で、最初に予告した「衝撃の事実」ですが、ここまで書いてくるとなんだかあんまり大したことじゃないような気がしてきました(笑)。
 実はですね、「にほん」という読みが、漢字学習的には「誤読」である可能性があるということなんです。
 漢和辞典を調べても「日」を「に」と読むという記述は一つもないということです。ですから、漢和辞典的には、つまり正式には、「日本」を「にほん」と読むことは不可能だということになってしまいます。なんと、自国の国名が「誤読」である可能性があるんですよ。漢字検定では不正解になってしまうかもしれない(笑)。
 これについても、実はちゃんと説明されていません(たぶん)。同様なものとしては、「読経」を「どきょう」と読んだり、「合点」を「がてん」と読んだりする例が挙げられます。これらは辞書の記述を超えた「特殊な読み」として扱われます。どちらかというと「暖簾」を「のれん」と読んだりする「熟字訓」に近い感覚でしょうか。ちなみに「時計」は当て字です。もとは「土圭」です。
 ということで、つまり、我々が親しんでいる「にほん」という呼び名は、いろいろな意味で誤りを含んでいるということです。もちろん、言葉の性質からして、それをどうのこうの、間違いだから使うな!とか、そんなことは言いませんよ。でも、ちょっと面白い事実ではないでしょうか。案外みんな知らないことです。灯台下暗し。日の本暗し。そうそう、「日下(くさか)」も間違いなんですよ。もとは「日」ではなくて「曰」だったらしい。 
 というわけで、結局よく分からないままです。さすがとてつもない日本(笑)。

 

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コメント

へぇ〜
の一言です。やっぱり日本語スゴいですね。
外国人が日本語の勉強が難しい訳ですよね。
アタシの友達の台湾人は何人かのキャバ嬢と色恋で付き合い、お家がお金持ちだった為、貢いで貢いで。
キャバ嬢がうらやましい限りでしたが、おかげですっかりペラペラに
自国に帰っても新入社員なのに、日本との窓口になってましたよ。
って、また関係ない話しでした

アタシが中学生の時、憲法の前文を暗記させられました。
日本史の先生は、
「にほんこくみんは、正当に選挙された国会に.....」(あってますかね?)
って、にほんと言ってました。
これも漢字の並び?それともまちがっちゃた?
どちらなのでしょうか?

投稿: カオル | 2009.07.28 06:00

カヲル、おはよ。
実は「大日本帝国憲法」は「にっぽん」なんだけど、
「日本国憲法」は読みが定まってないんだよね。
だから「日本国民」もどっちでもいいらしい。
考えてみればすごい国だよ、まったく(笑)。
ただ、戦後すぐの頃には、「だいにっぽん」という言葉に対する抵抗もあったと思うんだ。
それで、どっちかというと「にほん」と読ませたかったのかも。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.07.28 10:03

そうでしたか。
スゴいです、おそるべし日本語
いい機会だから、憲法前文また見てみます。

全く関係ない話しですが、週末実家に帰り、ヒマなので富士山方面の道を通ったら、道路に♪が
妹と何だろって言ってたら、富士山の歌が
スゲー
オシャレですね。

夜通ったら、街頭ないから怖くてすぐ帰りました。

投稿: カオル | 2009.07.28 13:09

そうそう。
あの音が出る道路、もうすぐ記事にするつもり。
オレは毎日あそこ通るんだけどさあ、
行きが下りだから、後半から聴くことになるんだよね(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.07.28 13:12

戸籍に読み方ありましたっけ?漢字が書いてあるだけのような気がします。そんなわけで、関西にある本家のほうでは、うちと同じ字ですが読み方が違います。住民票には読みがついていたと思います。
うそかほんとか、難しい読み方の字の姓の方が、戸籍に振り仮名がついていて面倒といっているのを聞いたことすらあります。

投稿: 貧乏伯爵 | 2009.07.28 23:01

伯爵さま、どうもです。
ああ、そうかもしれません。
住民票の読みを変えたってことでしょうかね。
ちょっと確かめてみます。
もしかして、本家のお名前は濁点がないとか?
とにかく、名前や地名は面倒ですねえ。
ウチはシンプルな名前で助かってます。
画数も少ないし。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.07.29 13:10

日本はニホンと読むのが正しいのですよ。
大日本帝国時代には九州地方の権力者も多く、彼らは一様にニッポンと言っていたそうです。
つまり、九州地方の方言なのだそうです。
さらに彼らは軍国主義を広めるために軍国主義の象徴として日本を「にっぽん」と読むように憲兵を使って各企業団体に強制したそうです。
つまり、ニッポン=軍国主義 となるのです。
私は日の丸君が代を肯定しますが軍国主義の象徴であるニッポンは否定しますよ。

投稿: gonta | 2010.06.02 18:43

gontaさん、こんばんは。
なるほど。私も同様の立場ですよ。
そういう近過去によって汚されてしまった「にっぽん」は可哀想とも言えますね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.06.02 20:27

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