アンドレ・プレヴィン 『アンドレ・プレヴィン・プレイズ・マイ・フェア・レディ(1946-1956)』
PREVIN, Andre: Andre Previn Plays My Fair Lady (1946-1956)
この前の小澤征爾さんも世紀をまたぐ大指揮者だと思いますが、このアンドリュー・プレヴューさんも同レベルですごい指揮者、いや音楽家ですね。
今年の9月から、とうとうNHK交響楽団の首席客演指揮者になるとのこと。ぜひカツを入れてやってほしいですね。
さて、そんな巨匠アンドレ・プレヴィンですけど、ご存知の通り、もとは天才ジャズ・ピアニストとして鳴らしていました。
そんな当時の素晴らしい録音を集めたアルバムがこれです。最近NMLで聴けるようになったので、なにげなくクリックしてみましたら、これが非常に良い!
私、クラシック音楽には疎いので、プレヴィンの指揮ってあんまり意識して聴いたことがありません。なんとなくですが、比較的正統派というイメージだけはあるんですが。
ですから、この若きプレヴィンのジャズ演奏を聴いて、ちょっとビックリしました。いわゆる正統クラシック的(そういうものがあるのかどうか知りませんけど…)な世界からはほど遠いからです。
私のような巨匠…素で間違えた(笑)…狭小なエセ音楽家からしますと、クラシックとジャズって、やっぱり両立しにくい世界だと思うんです。究極的に言えば、Black or White っていうことですからね。
それを同時にやろうとすると、たとえばガーシュインのような融合的アプローチをするか、あるいはジョン・ルイスのような木に竹を接ぐ的アプローチをするか、はたまたキース・ジャレット&チック・コリアのようなジャズ奏者がクラシックをまじめにやりました的アプローチになるかしかない、と思っていたんです。
それが、こういうレベルで両方自然に極めちゃう人がいるんだなと。正直ビックリです。
グルダなんかもジャズをよくやってましたけど、あれなんか、クラシック奏者がジャズをやってみました的になっていて、まあ微笑ましくはありましたけど、やっぱりちょっと痛いことになってましたからね。
そういうジャンルの壁と言いますかね、それを何気なく越えてしまう人っているんですね。
だって、ちょっと考えてみて下さい。発声が違うんですよ、クラシックとジャズでは。歌手で両方自然にできる人って絶対いません。クラシック崩れのジャズ歌手はいますけど。そう、どちらかで崩れないとなかなかもう一方には行けません。
ピアノやヴァイオリンなどの楽器にも、発声というのがあります。基礎の基礎にそういう発音法みたいなものがあるんです。それって、本当にベースの部分、物理的というより生理的な部分ですので、なかなかコントロールしにくいんです。
ピアノで簡単に言えば、タッチというものであり、そこには鍵盤へのアプローチの力学やタイミングなど、非常に複雑で深い世界があります。
ヴァイオリンで言えば、右手のボウイングですね。バロックとクラシックでも、ほとんど両立が不可能なくらい違うわけですから、メニューインがグラッペリをまねできないのも当然というものです。もどきにしかならない。
2カ国語を完全にネイティヴ風にしゃべるのが難しいのと同じです。どうしてもどちらかが母語になって、外国語の方には「訛り」が生じてしまう。
それが、このプレヴィンはなんですか。だって、このアルバムは17歳から27歳の録音でしょう。もうその時点で完璧なジャズ・ピアニストなわけですよ。シェリー・マンが選ぶくらいですからね。その他エラ・フィッツジェラルドなんかとも録音してますよね。
で、のちクラシックの勉強もして、ピアニストとして、そして指揮者として大成していくわけですか。おそるべしですね。
天才ですね。なにしろ、超イケメンですし、ハリウッド・スターやら、ヴァイオリニストのアンネ・ゾフィー・ムターなんかと、何度も結婚してますし、作曲の方でもアカデミー賞獲ったり、普通のエネルギーではありませんよ。悔しいけれどホンモノの色男ですね、こりゃ。
今年80ですけど、まだまだ精力的に活動しているようです。N響の皆さん、覚悟した方がいいですよ(笑)。
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コメント
プレヴィンのCDは、私もクラシックとジャズの両方で何枚か持っています。
さりげなくこなしてしまっているので、プレヴィンの天才性って(クラシック界では)さほど騒がれないけど、凄いですよね。天才に付きものの悲劇性って雰囲気も、あまり感じさせないからかな。でも、こういう人生やキャラって、あこがれますよね。
クラシックでは、しゃれた雰囲気のフランスものや近現代ものも良さそうだけど、私はウィーン・フィルを振り&弾きした、モーツァルトのピアノ協奏曲24番が好きです。
投稿: Dr.TOM | 2009.07.09 14:14
Dr.TOMさん、こんばんは。
両方お持ちですか!
そうそう、天才なのに幸せそうですよねえ…ずるい(笑)。
プロレスも総合もちょちょいのちょいってやっちゃうイケメンって感じでしょうかね。
ちと違うか。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.07.09 19:36