« 富士山ナンバー | トップページ | 『100年インタビュー 指揮者 小澤征爾』 (NHK BShi) »

2009.06.28

太宰治 『律子と貞子』

Photo_3 りぎりセーフ。山梨県立文学館で開かれていた「太宰治展 生誕100年」、最終日に行ってきました。
 招待状をいただいたのはずいぶん前。いつか行こういつか行こうと思いつつ、今日になってしまった。たしかにここ数ヶ月、土日というものがなかったからなあ。
 最終日閉館間際ということもあったのでしょうか、とにかくすごい混みようでびっくり。太宰ゆかりの「ホンモノ」の迫力よりも、正直観覧者の熱気に気圧されてしまいました。
 特に団体さんとおぼしき「オバサン軍団」の萌えパワーは、あの阿修羅展にも伍する迫力。おかげで私はすっかり萎えモードに。も少し静かに観ろよ!
 しかし、ある意味、それこそが、この前書いたイケメン太宰の本質であり、そう考えれば実に貴重なライヴ体験をしたとも言えますね。私の不快感(ある種の嫉妬心だったのかも)もまた、彼のトラップ(トリック)に見事にひっかかった結果だったのかも。これもまた彼一流のいたずらなのでしょうか。
 展示内容は、それなりに貴重なものもあり、まあまあでしたかね。しかし、なんでまあ、あんなに「国中」に偏るのでしょうか。山梨と言えば甲府盆地が中心になってもしかたありません。しかし、太宰の文学にとっての「郡内(富士五湖地方)」地方はあまりに重要です。心理的影響ということで言えば、国中以上のものがあります。
 それが、ほとんど天下茶屋富嶽百景でほぼ終了というのは、どんなもんでしょうね。
 まあ、実を言うと「太宰と郡内」の研究自体が進んでいないというのもあるんですよね。というか、はっきり言うと、私がそれをやらなければならない立場なのに、しっかり怠けているんです。どうもそういう「研究」というか「勉強」というのが苦手でしかたない。
 ただ、ここのところ何回か書いているように、来年度ウチの中学が建つ予定の場所は、まんま太宰作品の舞台なので、さすがに重い腰を上げなければならないかなとも思われるのであります。あまりに確率的に低いことが起きているので、そこに意味を感じずにはいられないわけです。
 というわけで、今日は一つそこを舞台にした作品を紹介しましょう。
 『下吉田町という細長い山陰の町に着く。この町はずれに、どっしりした古い旅籠がある。問題の姉妹は、その旅館のお嬢さんである』
 隠れた名作とも言えるこの作品、まさに下吉田が舞台です。そして、作中の姉妹「律子と貞子」の家である旅館のモデル(の一つ)になったのが「杉ノ木旅館」。その跡地がウチの学校の職員駐車場であり、その裏手が中学建設予定地となっています。まんまですね。
 作中に出てくる豆腐屋さんや呉服屋さんも近くにありますし、我々にとっては実に身近な風景が展開されていきます。
  短い作品なので、ぜひこちらで読んでみてください。相変わらず軽妙な文体とストーリー展開ですなあ。そして、太宰の女性観やら恋愛観、結婚観、また聖書マニアの一端などがうかがえる佳作ですよ。
 皆さんなら、「律子と貞子」どちらを選びますか?ちなみに、私なら断然「律子」ですね(笑)。

不二草紙に戻る

|

« 富士山ナンバー | トップページ | 『100年インタビュー 指揮者 小澤征爾』 (NHK BShi) »

文学・言語」カテゴリの記事

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

はじめてコメントいたします。太宰作品を朗読させていただいている原きよと申します。私も、この展示の最終日に一日かけて展示を見ました。どこかですれ違っていたかもしれませんね。律子と貞子の旅館跡、ぜひ訪れてみたいです。富嶽百景に出てくる、吉田の宿も、どこなのか気になります。実は、先日、山梨県立文学館で朗読をさせていただいたとき、お客様のお一人で、その場所を探しているけれどわからない、という方がいらっしゃいました。もしかして、同じところなのでしょうか?

投稿: 原きよ | 2011.12.02 16:52

原さま、コメントありがとうございました。
私の調べたところによると、「律子と貞子」の旅館も「富嶽百景」の旅館も、「服装に就いて」にある「池のほとりの大きい旅館」だと思います。
それはすなわち月江寺の池の向かいにあった「杉林旅館」です。
比較的最近までその建物は残っていたのですが、数年前に解体され、今は私の勤める中学校になっております。
何も面影は残っていませんが、よろしかったらお出かけください。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2011.12.09 14:23

お返事をありがとうございました!
10日に山梨県立文学館で、クリスマス朗読会を、そして太宰の通った喜久乃湯温泉で11日に「富嶽百景」と「美少女」を読んでまいりました。湯村温泉の旅館「明治」にも泊ってきました。次回はぜひ、「杉林旅館」跡に伺いたいと思います。よろしければ、一度メールでご連絡くださいませ。

投稿: 原きよ | 2011.12.13 21:16

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55913/45485725

この記事へのトラックバック一覧です: 太宰治 『律子と貞子』:

« 富士山ナンバー | トップページ | 『100年インタビュー 指揮者 小澤征爾』 (NHK BShi) »