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2009.05.27

『ネコ好き自分の取扱書』 Chien Chat (イーストプレス)

78160000 る教室に、いわゆる「説明書シリーズ」「説明書系」と言われるたぐいの書籍が山積みになっていたので、テキトーに拾い読みしてみました。
 全部似たような装丁に似たような構成、紙面。そして似たような価格設定。しかし、出版社はみんな違っていたりして、この業界の厳しさ(すなわち、なりふり構わないプライドのなさ)が垣間見られ面白かった。
 みんな似たような感じとは言いましても、それなりに、いや、それだから、ライターやデザイナーやイラストレーターの技量の違いが明確にわかるという利点(なんの?)もあります。もちろん、同じテーマを扱っておきながら、互いに内容に矛盾があるところなんかも、まるで分裂、分派した教団の教義を見るようで楽しい。
 ま、そんなどうでもいいことを考えながら読んでる人もいないと思いますけどね。たぶん、こういう説明書系を読むのは女性が多いと思われますから、作る側はこんなオタクな男なんか、ハナっから想定していないのでしょう。
 そう言えば、オタクオヤジついでに言っておくと、こういうシリーズって、その存在自体矛盾がありますよね。だって、もともと女性って説明書、取説、マニュアルっていうのが大の苦手でしょ?ウチのカミさんなんかも、もうそういう説明書とか読む以前に見るのもいやだと申しております。
 ま、私も基本取扱説明書なんか熟読しませんけどね。男は違った意味で取説読みません。読まなくてもわかるわけです。
 そう考えると、取説って可哀想な存在ですよね。だって、いろいろと企業には責任がありますから、そうプロダクト・ライアビリティーっていうんですか、そういう面倒なこと(法律)がありますから、重箱の隅に至るまでちゃんと説明しとかないといけない。説明責任を果たしとかないと、責任逃れできませんからね。なのに誰にも読んでもらえない(一部の取説マニアを除いて)。
 話を元に戻します。我々男子は、「コト」にこだわりますので、結局他を支配するというか、コントロールすることに喜びを覚えます。車を操ったり、パソコンを改造したり。
 そうか、女性は、いわゆる製品としての「モノ」よりも、まず自分という「モノ」の取扱いに興味があるのかな。女性は他をコントロールする以前に、自分のコントロールが難しいのかもしれません。自分に興味がある、自己愛が強いとも言えますかね。母性というのも、基本は自己愛です。母親にとって、子どもは自分の分身ですから。
 で、こういうシリーズは、ほとんどが女性の興味をそそるものです(最近の草食系男子も読んでるかも)。ですから、そこんとこを突いた企画なのかもしれませんね、説明書シリーズ。普通に考えれば、他者の取扱いのために取説を熟読すると思いますけど、こういう本の読者って、ほとんどが自分にあてはまるのを読むわけでしょ?誰かの扱いに困って、その誰かの属性にあてはまる本を購入している例は少なそうです。
 そういう私もご多分にもれず、「ネコ好き」やら「AB型」やらの本をまず手に取りました。そして、読んでみました。なんだ、これら、全然説明書じゃないじゃん。説明書、取説の体を為してない。取説って、こういう時はこうしろ、ここを押すとこうなる、つまり使い方の説明のはずじゃないですか、この本たちは、そういう内容じゃなくて、スペックとか特徴(特長)とか、そういうのの羅列ですね。
 それも、けっこう「そりゃ違うよ」とか「え?そうか?」っていうのが多い。もし、電化製品の取説がこんな感じだったら、それこそ説明責任を問われちゃいますね。ま、結局この手の本は、昔からある心理テスト(エセだけど)の最新ヴァリエーションってことになりそうですね。
 文句言ってるわけじゃないですよ。面白かったから。でも、一冊15分で読み切れてしまうのに税込み1050円は高いよなあ。
 それでも、別の視点から見ると、それなりに価値があったものもありました。もちろん微妙な共感と反発、疑問という、本来の文学的意味からしましても。それが、この本でした。「ネコ好き自分の取扱書」。これはもうちゃんと「自分」って言ってるとこが良心的と言えば良心的。例によって取扱書にはほとんどなってませんが、ポエムとしては面白かった。
 独特の視点と感性と、そして文体が、読んでいてなかなか心地よかった。これを詩集と言えるかは微妙ですけど、ある種の文学性は感じられましたね。リズムの強弱、あるいは緩急が絶妙でした。そう、好きな音楽を聴いているような感覚で読めましたね。
 結局、自分は単純に猫が好きで、そして、そういう自分が好きなのでしょう。これは私に限らず、皆がそうなんだと思います。結局自分が好き。ま、それでいいんじゃないですか。
 こういったシリーズのブームがどこまで続くか分かりません。そろそろ市場には飽きが来ているように見受けられます。次はどうやって、ナルシストたちの心をくすぐるか…実は、古典の世界からずっと、文学というものは、自己愛の充足のために存在してきたのでした。他者への変身願望や、現実からの逃避願望なんてのも、単に自己愛の裏返しであるということです。
 なにかと不安な世の中、こういう時こそ、頑張れ文学界、出版業界!

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