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2009.04.04

『刑事コロンボ 「だまされたコロンボ」』 (NHK BS-hi)

1 日のコロンボは面白かった。こういうパターン崩しというのは魅力的ですね。
 タイトルのとおり、今回はコロンボが完全にだまされました。結末的にはある意味逆転勝利でしたが、左の写真のシーン、犯人からの乾杯を拒否するところでは、いつもと違うコロンボの表情を見ることができました。いつものとおりの完璧な推理が、結局自らを敗北に導いてしまいました。屈辱と怒りの表情です。
 皆さんご存知のとおり、コロンボはいわゆる倒叙ものです。先に犯人と犯行現場を提示しておいて、いかにコロンボがそれをつきとめていくかという部分と、追いつめられる犯人の心理状態を楽しむ作りになっています。
 この倒叙ですと、犯行の背景や犯人像を詳しく描写できますので、シリーズとしては常に変化を楽しむことができます。単なるトリックものとして、あるいは謎解きものとしてではなく、人間ドラマとして長期間提供することが可能となるわけです。
 日本では、コロンボの二番煎じとも言われた「古畑任三郎」シリーズがこの技法を使いました。まあ、あれは三谷幸喜お得意のパロディーですからね。日本版コロンボと言ってもよいものです。
 で、今回の「だまされたコロンボ」は、その倒叙のパターンを崩した、というか、倒叙のパターンを利用したセルフ・パロディーのような趣向になっていたわけですね。原題は「COLUMBO CRIES WOLF」。邦題だと視聴者もちょっと構えてしまうかも。期待もしてまう反面、余計な予想をも喚起してしまいます。タイトルの難しさですね。
 結果として、我々視聴者もいつものパターンに乗っかって観ていると、すっかりだまされてしまうようにできていました。それこそが狙いだったのでしょう。ただ、最後はしっかり我々が溜飲を下げるようにできていましたね。そうしないと、みんななんとなく不満というか、消化不良というか、裏切られたような感じになってしまったことでしょう。
 予定調和というのは、それはそれで魅力ですよね。安心して観ていられる。しかし、そればかりだと、いずれ飽きられますし、興奮というようなものはなくなっていきますよね。かといって、いつも一寸先は闇だと、それはそれで不安ですし疲れちゃいます。ですから、そのバランスというのが非常に重要になってくるわけですよね。統一と変化。音楽の魅力と一緒です。
 ちょうど今、プロレス誌「Gスピリッツ」の最新号をじっくり読んでいるところなんですが、ここでは、まさに「予定調和を崩す」という意味での「対抗戦」について多くが語られています。
 最近のプロレスが、あまりに行儀良くなってしまっている、ある種のパターンにはまってしまっている、ということを再認識させる内容です。今は、ある意味では対抗戦ばかりなんですが、それもまた、どこか緊張感のないものばかり。美しいアンサンブルばかりでは、みんな飽きてしまいますね。レベルは高い好勝負が提供されているのは事実ですけれど、どうもあまりに予定調和的で、「闘い」の本質がうまく表現できていないんですね。
 音楽も全く一緒です。クラシックの演奏なんか、本当に予定調和に陥りやすい。どこまでアドリブを混入し、練習と違うことをし、一瞬でも緊張感を醸すか。これをできる演奏家はなかなかいませんよ。ジャズならまだしも、ポップスの世界でもそれはやっちゃだめみたいに言われていますから。
 そういうことを思い出しながら、今回の「だまされたコロンボ」を観ていました。ドラマもプロレスも音楽も、フィクションです。そこにどれだけリアルが混入するか、あるいはフィクションのパターンを豊かなものにするか。もしかしすると、昨日書いた「宗教」もそういうものかもしれないなあ。

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