中川翔子 『Magic Time』
接続詞「なので」はあり?なんて次元を、とっくに飛び越えている、いうなれば、夏目漱石レベルの天才「しょこたん」。彼女の新語創造能力はずば抜けています。
最近では、えっと、「バッカルコーン!!」ですか。以前記事にしたギザカワユスにせよ、まあいまだ本人は使い続けてますからね。単なる流行語ではないようです。
彼女の新語というのは、厳密に言うと完全なる新語ではありません。「バッカルコーン!!」も実はすでに存在していた言葉ですよね。そう、クリオネの触手みたいなヤツです(って私も初めて知りました)。しょこたんは、そういう現存する言葉の語感(音感)から、それが与えられた本体をも巻き込んで新たな意味を与え、そして敷延するという能力を持っているようにうかがえます。これは簡単なようで難しいことですよ。
普通、新語というのは、既存の音と意味の組み合わせの、そのまた組み合わせによって作られることがほとんどです。つまり語源というか、意味上の語幹が存在するんですね。アニメのキャラ名なんかも案外そういうベースを持っていたりします。ところが、彼女は本来の「意味」ではなく、本体が持っているイメージと語感(音感)の偶然のマッチングの部分に注目して、そこから新たな「意味」を生み出してしまうんです(ってよく分からん説明だな)。
つまり、ある海洋生物のキャラクターやデザインと、そこにまじめに与えられていた「スカシカシパン」とか「バッカルコーン」とかいう、言われてみれば珍奇な名称のマッチングというかミスマッチングを、我々に気づかせてくれる、だけでなく、その「気づき」から、全く別の感嘆的存在を現出させることができるのですね(って余計分からん説明だな)。
とにかくですね、彼女の言語世界は、記号論への挑戦なのです(笑)。マジで。シニフィエもシニフィアンもバッカルコーン!?
そんな天才、中川しようこ(電波りようこみたいだな…いや、こっちが真似したのか)のニューアルバムを遅ればせながら聴いてみました。『スカシカシパンマン・ザ・ムービー』を貸してくれた人が、こちらもわざわざ貸してくれました。生徒の妹さんです。
で、で、これが、いい!バッカルコーン!!(使い方間違ってるかな?)
これはいいですよ。正直感動してしまったっす。ギザヨス(って言うのかな)。だって、だって、なんか懐かしいんだもん。
歌謡曲バンドで、80年代アイドルのカバーをやることがけっこうある私は、とにかく、最近あの頃の楽曲のクオリティーの高さを再認識して感動することが多いんですけど、このアルバムはその頃にタイムスリップさせてくれるんですよ。
まず、歌がうまい!こんなにうまかったっけ、しょこたん。楽曲によって声も歌い方も微妙に調整していますけど、基本キラキラしていて、しっかり往年のアイドルしてます。時代を超えていますねえ。
得意のアニソン風のポップ・ロックもなかなかいい。アニソンへの愛を感じますね。しかし、なんと言ってもやっぱり80年代風楽曲でしょう。なにしろ、松本隆&筒美京平の黄金タッグまであります!いやあ「綺麗ア・ラ・モード」は超名曲っす。すごい。王道。
本当に彼女は「タレント」ですね。今もカミさんと話してたんですけど、しょこたんとあやや(松浦亜弥)がいるから、いわゆる芸能界は安泰だなと。若いのに妙に昭和を感じる。
最近、家族でドリフを観ることがよくあります。当時のアイドルたちが捨て身でコントをやり、そのすぐあとにまじめにアイドルになりきって歌う、そういう姿を見て、ああ、すごいなあ、プロだなあ、と思うことしばしば。そういうパワーというか、アドリブと演技と両方できる「タレント」。これってあらゆる分野で欠如してますよ、平成の世の中では。
このアルバムはぜひ聴いてみましょう。特におじさんたち!絶対はまります。それにしてもうまいな…。
ああ、そうそう、私の母は、ある場所でしょこたんのおばあちゃんとよく会うそうです。おばあちゃんも音楽に並々ならぬ愛情を注いでいらっしゃるとか。やっぱり血筋でしょうかね。才能は遺伝するのか。
Amazon Magic Time
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