『いと、バロスw』 むらかみ汁 (鉄人社)
ううぅぅむ、なんということだ。
先ほど驚愕の事実が発見されました。周りはみんな大笑いしてるけど、ワタクシはなんとなくショック…。
いやぁ、巷で(アキバで?)評判になっているというこの本、同僚に借りて読み始めたら、あまりに痛すぎて、それで、ある2ちゃんねらー率88.88…%のクラスに持っていってですね、それこそフルボッコにしてやったんですよ。さすがにみんな萎えてました。これはひどすぎだろって。ああ、やっちゃったって。逆にすごいかもしれないぞ…と、いちおう言ってみたりして。
何がひどいって、2ch用語で古典や近現代の名作を訳すという発想は、まあいいとしましょう。しかし、そのセンスの問題なのです。ちょっと見てください。一部紹介します。
【源氏物語 桐壺】
ある時代の話なんだけど、まぁ聞いてくれ。とある政治家がよく行くクラブに、たいして学もなくて、話もつまらないのに、いっつも先生の指名を受けるコがいたんだ。「私の方がレベル上じゃね?」なんて言っちゃう上昇志向なスイーツwは当然「Uzeeeee!」「半年ROMってろ」なんて大ブーイング。ちょwww露骨過ぎw
【徒然草】
!おらニート!暇だから書いてたら、なんか盛り上がってきた。
まあ聞いてくれ
【太平記】
元弘元年8月27日、後醍醐天皇は笠置寺に入って、そこの本堂を皇居にしたんだ。最初のうちは、みんな幕府コワス((((゜Д゜)))で誰も来なかったんだけど、比叡山坂本の合戦で幕府側がフルボッコにされたってニュースがうpされると、笠置寺の儲や近所の香具師がワラワラ集まってきたワケよ。
どうですか。2chに疎い人にとっては、ナンダコリャ?でしょうし、2chに精通している人にとっては、ものすごい痛いことになっているのでは。
昨日も時代における仮名遣いの多様性について語りました。私は、2chの言語世界は、その日本語の多様性を象徴するものであり、それほど嫌悪すべきものではないと考えています。逆に江戸時代以降の庶民の言語センスを示す素晴らしい場であるとさえ考えています。
そう、あの世界って、センスが必要なんですよ。そのセンスとは何か…それこそ言語化するのが難しいのですが、まあ、「粋」っていうヤツでしょうかね。「粋」じゃないと、とっても「野暮」になっちゃうんですよ。その匙加減には、知性と経験と、そして生来の空気を読む能力が必要だったりするんです。
で、この本は、正直かなり野暮なんです。センスがないんです。簡単に言ってしまえば、やりすぎてしまっている。実際の2ch世界では、そのやりすぎというのはすぐに叩かれます。
センスがなくて、粋でなくて、野暮だと、周りはどういう気持ちになるかというと、つまり「かたはらいたし」なんですね。そう、「かたはらいたし」と言えば、私は以前(3年ほど前)、『枕草子』に見る「空気嫁」&「痛杉」という記事を書いています。ここで私も、2ch用語をちょっとだけ使って、枕草子を訳していますね。ちょっと読んでみていください。
たしかに、もう「空気嫁」とか「痛杉」とかも古くなってるでしょう。KYとかあるし(KYもそろそろ旬を過ぎてますが)。私はですね、そういう時代的な推移を想定して、それでわざとコテコテの2ch世界を希釈して書いたんです。だって、自分が書いたものが「かたはらいたき」ものになっちゃったらイヤじゃないですか。
でも、「いと、バロスw」の筆者は、そういう危険を全く想定せず、ガンガンやっちゃってます。実際、コアな2ちゃんねらー生徒たちによると、もう2年前くらいの言葉ばっかりじゃん!ということになってしまう。だから、失笑どころか噴飯してしまうんです。逆の意味で大受けしてしまう。でも、そのうち疲れてみんな放り出してしまいました。いや、すごい勇気だ、ある意味ネ申だ!ということにもなったんですが…。
で、いろいろみんなで眺めてたらですね、「枕草子」の冒頭が出てきました。
「春は明け方に萌え(;´Д`) だんだん白くなて逝く山際の空が、ちょっと明るくなって、紫っぽく雲がユラユラするのがポイント高し!!(・∀・) 中学生のオニャノコが、だんだん足首が細くなっていくようで(・∀・)イイ!! まさに女の夜明けですね、わかります」
「これって、先生のパクリじゃん!」生徒たちが一斉に言います。「をかし=萌え」ですね。ははは、たしかに。ちょっと違うけど。でも、いいよ、別に。こうして私の説が一般化していけば、それはそれで。このブログの読者の皆さんにはお分かりと思いますし、生徒たちもよ〜く分かっていると思いますけど、自分にとってはこの説はそれほど大きな価値はありません。全体のほんの一部ですから。
それにしても、ひどいなあ。全然直訳じゃないし。筆者の勝手に足した部分のセンスもいまいち…てか、意図がわからん。
古文単語の勉強もかねて、いとかたはらいたし、いとねたし、いとすさまじ…などと、生徒たちとケチョンケチョンに言っていたらですねえ、いよいよ驚愕の事実が!?
最後までページを繰って、そして最後の参考文献を見て、どっか〜ん!ですよ。
参考文献のwebのところに、こうあるじゃないですか。
「レコーディングダイエットのススメ」
えぇっ!これって岡田斗司夫センセイのブログじゃないですか。ってことは、つまり、これのことですよね。だって、ほかはダイエットの話とか、この本に関係があるとは思えない記事ですからね。
ということは、間接的にではありますが、筆者は、この「不二草紙 本日のおススメ」を参考にしたということですな。
えぇぇぇっ、じゃあ、この、みんなにケチョンケチョンに叩かれた本には、私の遺伝子が濃厚に受け継がれているということですか!?私が片棒かついでるってことですか!?ガーン…orz(笑)。
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コメント
google2ch語訳があったらこんな感じじゃないですかね
いと、バロス
投稿: shihori | 2009.03.18 12:25
shihoriさん、初めまして!
なんちゃって。
バロス自体、微妙だよね。
昔はこういうのがあったんだけど。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.03.18 16:11
前略 薀恥庵御亭主 様
御亭主様の文才はネ申の領域です。
えぇぇぇぇ・・・
「2ちゃんねる」は情報の宝庫です。
同時に「喧騒」の世界でもあります。笑
うぅぅぅぅん。
私も「情報技術」の世界に触れて・・・
30年ほどになります。
そうですねぇぇぇぇ・・・
「2ちゃんねる」も今後・・・・
ますます神化×深化×進化◎していくことで
ありましょう。
高齢化社会と共に・・・
「老人2ちゃんねる」
「介護2ちゃんねる」
「独居2ちゃんねる」
「葬祭2ちゃんねる」
「極楽2ちゃんねる」
「彼岸2ちゃんねる」
これは「2ちゃんねる」の進化
というよりも・・・・・ 老化ですね。笑
絵空事師「合唱おじさん」 拝
投稿: 合唱おじさん | 2009.03.18 20:37
合唱おじさん、おはようございます。
2ちゃんねるには私も大変お世話になっております。
庶民文化のパワーとセンスを感じますね。
高齢化に伴う進化した2ちゃんねる、これはありですね。
2ちゃんねる世代が地獄に行ったら、なんか楽しそうですね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.03.19 08:03
前略 薀恥庵御亭主 様
あっはっはっはっ。
愚僧もまだ「くたばって」おりませんので
確かなことは申せませんが・・・
私の場合「地獄行」の特急券は自動予約
されている予感がします。笑
地獄も「住めば都」です。
地獄では御隣御近所の御方々様と仲良く
日暮(せいかつ)痛し×致したいと存じます。笑
その後「愛妻」が救いにきてくれることを
願っています。爆笑
合唱おじさん 彼岸駐日×中日 寺坊にて 拝
投稿: 合唱おじさん | 2009.03.20 12:12
痛いっす。
で、見たくもないセンスの悪さをつい垣間見てしまった時、こっちが恥ずかしくなるのは何故なのかしら。
投稿: LUKE | 2009.03.21 00:56
LUKEさん、どうもです。
まったく、こっちが恥ずかしくなるというのは、なんなんでしょうね。
もしかして、自分にも同様の過ちを犯す可能性がある、
あるいは以前やってしまったという記憶があるんでしょうかね。
たぶん、そうなのではないでしょうか。
広い意味でのシンパシーなのかも。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.03.21 13:31
シンパシーだったのか...。orz
そういえば、ぶらりと入った飲食店などで、否応なくNHK素人のど自慢を見せられた時なんかもう、居たたまれなくなる程なのですが、確かに私はもの凄く音痴なのでした。...はぁ。
投稿: LUKE | 2009.03.22 00:36
LUKEさん、おはようございます。
だいたい嫌悪感の対象の要素って、自分の中にもあったりしますよね。
というか、やっぱり一番よくわかってるんでしょう、自分の欠点を。
ですから、最近私は、他人に甘いんです。
人を責めるということが、自分を責めることだと気づいちゃったからでしょう。
私は基本自分に甘いので(笑)。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.03.23 07:50