« 『仏教のこころ』 五木寛之 (講談社) | トップページ | 『日本語ヴィジュアル系−あたらしいにほんごのかきかた』 秋月高太郎 (角川oneテーマ21) »

2009.03.09

レミオロメン 『レミオベスト』(山梨限定盤)

51mfy39wcl_sl500_aa240_ 3月9日です。特別な日に特別なアルバムが発売されました。
 レミオロメンの「3月9日」は、あらゆるジャンルにわたり、おそらく数万曲に及ぶ音楽を聴いてきた私にとって、もしかすると最も大切な曲の一つかもしれません。いつ聴いても、これほど心に染み込み、そして温かい何かで私を包み込んでくれる音楽、そして言葉は、そんなにたくさんあるものではありません。
 そんな、私にとっても、レミオロメンにとっても特別な、大切な日に、これまたスペシャルなベスト盤が発売されたのは、本当にうれしいことですし、何と言っても、ふるさと山梨の風土と人に育てられ、またそれらを心から愛する彼らが、「山梨限定盤」を作ってくれたのは、これは山梨県民としては本当に幸せなことです。
 「ベスト盤」という一般的な概念と、その魅力や問題点については、ここでは語りません。なぜなら、もうそのことについては、世界中で何十年にもわたって繰り返し議論されてきたからです。そして、その議論…ほとんど盲目的な賛美と愚痴のどちらかに分類されますが…が、あまりそのアルバム自体、あるいはミュージシャン自体、そして意見を発する私たちにも建設的な意味を与えるものではないようですから。 
 特に、音楽のデジタル化、個人化の進んだ現代において、こうして一般に売り出されるベスト盤というのは、昔のそれとはずいぶんと意味が変わってきているように思われます。つまり、本当に自分自身のベストを望むなら、いくらでも自分のお好みをセレクトして、アレンジし、iPodに入れればいいだけのことでして、それはいろいろと愚痴を言うヒマがあれば、いくらでもできる作業です。
 たしかに「あの曲が入っていない」「なんでこの曲が入ってるんだ」というような感想は、ほとんど全ての人にあるでしょうし、私ももちろんその例外ではありません。しかし、純粋に、この日に、こうしたパッケージングで、こういう選曲と並びで、このアルバムが発売されたその意味を、それぞれのファンが味わい、考えればいいことだと思います。
 実際、心を無にして、まさに初めて聴くアルバムとして聴けば、統一と変化のバランスのとれた、なかなかの一作品になっていると思いますよ。
 そして、再び聴き直せば、今度は彼らの、そして私たちの大切な風景と時間がそこに堆積し、また新たな情景が現出していることに気づきます。それで充分ですし、それこそがこういうベスト盤の意味だと思いますね。あの曲も入れたいと思えば入れて結構。あの曲がいらないと思えば飛ばして結構。しかし、そこに現れる情景は、もしかすると新たなそれではないかもしれません。今までの自分の見てきた、愛してきた情景が、この世のベストであるとは限りませんし。
 ところで、山梨盤に特別付いてきた「ラジオ」という未発表曲ですが、これはまた、このベスト盤に新たな意味を加える名曲ですね。比較的最近の曲が多くなっているベスト盤本体と対照的に、この「ラジオ」は初期の味わいが濃厚に感じられました。
 彼らにしてはディストーションがきいたギターと、それとユニゾンのベースによる力強いリフが、イントロからずっと続いていきます。まさにロックという感じ。そういう重厚なロックのリズムと響きの中に現れる藤巻君の声。艶があって、ちょっとフェミニンで、そのある意味アンバランスというか、ミスマッチ感というか、ツンデレ感(笑)というか、ああ、これこそレミオロメンの世界だな、と思いましたね。
 どうも、最近はそういう藤巻君の魅力を忘れてた。まあこれは結局愚痴になってしまうんですけど、たとえばストリングスやシロフォンといったある種フェミニンなおかずが多すぎるとですね、せっかくの彼の魅力が減殺されてしまうというか…。ドラムスの治くんがまたフェミニンなので(笑)、結局男らしさでロックするのはベースの前田くんだけになってしまう。そこが最近、ちょっと違和感を催させる原因なのかなあ…などと、また勝手な思いを抱いてしまいました。
 ということで、「シンクレティズム」的、すなわち混淆的な表現、まさに日本のロック、それも田舎の(失礼)ロック、それが彼らの原点であり、魅力なのでした。それはもちろん繊細な「詩」の世界にも言えることです。
 それにしてもなあ、おまけ(?)で付いている滑走路ライヴのDVD、感無量で観ましたよ。私にとっては、あれが彼らとのつきあいの始まりでした。あのライヴから、本当にいろいろなご縁が生まれ、私の人生も大きく変わりましたからね。あれからもう2年半ですか。なんと、濃厚な時が流れたことでしょう。そんな時を演出し、多くの縁を生んでくれた彼らに、心から感謝したいと思います。
 今月20日、久々に彼らのライヴに参戦する予定です。私は感謝の気持ちを胸に、彼らの音をしっかり受け止めてきたいと思います。

ライヴ@エコパ行ってきました

Amazon レミオベスト

不二草紙に戻る

|

« 『仏教のこころ』 五木寛之 (講談社) | トップページ | 『日本語ヴィジュアル系−あたらしいにほんごのかきかた』 秋月高太郎 (角川oneテーマ21) »

音楽」カテゴリの記事

文化・芸術」カテゴリの記事

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

庵主さん、コメントごぶさたしております!
数々のミラクルを拝読させて頂いてはおりました。
人の思いってすごいな...とため息が出るばかりです。
山梨盤、石和のショップで1月に予約、スギッチちゃんが9日にわざわざ
皆の分を取りに行ってくれました(涙)
庵主さんに同じく、滑走路以来、私のレミオ人生が始まりました。
レミオから生まれた数々のご縁には本当に感謝の気持ちです。
あの滑走路のアミナリ(雨+雷=最近治くんがコメントで言った新語)
や全ては必然であり、そこに居た我々もまた互いに知らずではありましたが
既に繋がりが生まれていたかもしれないと本気で信じてしまう私です。
今後ともどうぞ宜しくお願いいたしますっ

投稿: くぅた | 2009.03.12 12:17

くぅたさん、こんにちは!
お久しぶりです。
本当にこの2年半、ものすごく濃く、夢のようなことが続きましたね。
まさに思いは通じるということでしょうか。
一歩踏み出さねば何も起きない、一歩踏み出せば後は自動的に…笑
そういうことを、くぅたさんたちに学ばせていただきました。
まあ、これからもどんどん面白いこと、感動的なことがあるでしょう。
ぜひとも末永くおつきあいください。
まずは、レミオの3人と彼らを支える人々に感謝感謝ですね!

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.03.12 16:33

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: レミオロメン 『レミオベスト』(山梨限定盤):

« 『仏教のこころ』 五木寛之 (講談社) | トップページ | 『日本語ヴィジュアル系−あたらしいにほんごのかきかた』 秋月高太郎 (角川oneテーマ21) »