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2009.03.16

仮名遣いイロイロ

 の前、ネオ仮名遣いを提唱する「日本語ヴィジュアル系」を紹介しましたね。で、やッばりあーゆぅ仮名遣ひにわテーコーがあるッてゆー人がたくさんヰました(と、わざとメチャクチャな仮名遣いで書いてみる)。
 今日ですね、ある生徒が、家にあった古い本をたくさん持ってきてくれました。1年ほど前にリードルなどの教科書を持ってきてくれた生徒です。
 今度は江戸時代から昭和の初期の本たちでした。それらの表記、仮名遣いがあんまりいろいろなので、実に面白かった。漢文から始まって、まるでギャル仮名遣いのようなものまで様々。いかに現在我々が標準としている(されている)現代仮名遣いが一面的であるか、あるいは無理があるか、そして、それにこだわることがつまらないことか、考えさせられちゃいました。そういうのを教える仕事をしてる我々が、もうちょっと勉強しないと。単なる押しつけはいかんなと思ったのです。
 ということで、今日はその中からいくつか紹介します。面白いですよ。
Uni_2155 まず、最初はおなじみ(?)「尋常小学読本」です。小学校の国語の教科書です。いきなり京都市の説明か。ルビが面白いですね。「キョートシ」「カンムテンノー」「キンジョーテンノーヘイカ」「トーキョーシ」…今これをやったら、なんか怒られそうですね。「テンノー」とかね。でも「陛下」は「ヘイカ」なんだ。つまり「ヘーカ」とは読まないということですね。ルビがちゃんと発音記号の機能を持っています。今なら「きょうと」と振って「きょーと」と読まなければなりません。子どもや外国人には実に厄介なことになっています。第一、仮名がカタカナですね。当時はカタカナの方が堅いイメージがありました。正式な文書はみんなカタカナです。もちろん、漢文訓読が正式なものという習慣からです。平仮名はけっこう女文字として認識されてたんですよね、最近まで。
Uni_2156 違うページを見てみましょう。こっちは平仮名です。軽い文だからでしょう。「次のよーに、話した」…これも今やったらそれこそ顰蹙ですよね。でも「お父さん」は「おとうさん」です。どうも音読みの語(漢語)には長音記号を使い、訓読みの語(和語)には本来の仮名を使うようです。そのへんに関しましては専門家の分析と解説にまかせましょう。今日はとにかくいろいろなパターンを紹介します。ちなみに、段落が変わった時、一段下げていません。これも最近のネット世界ではけっこう見かける形ですね。
Uni_2157 次は雑誌「婦人世界」です。まずは広告。そうそう、大正時代って琴とヴァイオリンが流行ってたんですよね。まさに私の演奏する楽器じゃないですか。私ってかなり古くさい趣味を持ってるんですね(笑)。それはまあいいとして、一つの広告の中でも「ヴァヰオリン」と「バイオリン」が混在してます。ある意味いい加減。それにしてもヴァイオリンの通信教育なんて、絶対ムリですよ。その他の広告もかなり怪しげで面白い。こういう胡散臭い広告って最近減りましたね。ま、ウラジミール・ゴンチャロフ博士みたいなのもありますけど、昭和ほどではありません。
Uni_2158 違うページを見てみましょう。「米軍の志気を鼓舞する婦人の力」というとんでもないタイトルの記事です。アメリカと仲よかったんですよね。「ニューヨーク」は「ニウヨオク」、「コーヒー」は「コオヒイ」となっています。なんか仮名遣いが違うとイメージもずいぶんと変わりますね。「サンドウィッチ」は「サンドウイツチ」です。それにしても、この20年後には、米軍の志気をいかにそぐかに腐心するようになるんですから、まあ、歴史もいい加減なものです。
Uni_2159 最後に紹介しますは、最強の資料です。「裁縫のおけいこ」というHOW TO本です。いきなり「本書わ」かよ!wwそれもルビは「このほん」となっています。「全然異ッて」の表現や表記もシャレてますが、それを「まるきりちがって」と読ませるあたり、かなりJKしてると言えます。全体を読んでいただくと分かりますが、とにかくルビが訳になっていることや、カタカナの使い方、そして、まるでタグクラウドのように、フォントの大きさが突然変るというのも、実に現代的、いや未来的であります。これが「裁縫のおけいこ」っていうのがミソですね。まあ、ある意味明治時代の女子高生が読んでたわけですから(笑)。正直かっこいいですよ。ファンキーですよ。
 というわけで、ランダムに紹介しましたけれど、こういうのを見ますと、いかに戦後制定され施行された現代仮名遣いなるものが、一面的であり、日本語の生命力を奪ったかがわかります。そうした強制力、煽動力、洗脳力に対抗すべく、最近のネット仮名遣い、ギャル仮名遣いなどが出てきたんだと思いますよ。マジで。
 もう少しちゃんと勉強したいところですが、時間がないので、今日は資料提供だけにしておきます。
 とにかくある習慣をして社会的なルールを決定してしまいますと、便利なことがある反面、このように多様性、すなわち生命力が奪われるのであります。ちょうど今日、こちらの記事にコメントを下さった方がいましたが、ピアノの鍵盤のサイズなんか、ホントめちゃくちゃですよ。日本人にとってなんのメリットもありません。昔はもっと多様でした。自分の手のサイズに合わせて注文できた時代も当然あります。まったく、社会の画一化と、それに盲従する市民というのは困ったものです。

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コメント

薀蓄庵御亭主様も御存知のように・・・
「裁縫のおけいこ」と愚僧の手紙は
瓜二つで御座います。笑笑笑 

投稿: 合唱おじさん | 2009.03.17 11:13

訂正 薀蓄庵御亭主様 ×
   薀恥庵御亭主様 ◎
お詫び申し上げます。「五時脱寺王」

投稿: 合唱おじさん | 2009.03.17 11:17

合唱おじさん様、おはようございます。
「裁縫のおけいこ」最高ですよ。
未来的ですからね。
私ももっと自由に、解放されて書いてみたいものです。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.03.18 08:43

些細なことなんですが、国語教師とお見込みして少々質問があります。

実は、うちの娘が塾の算数の問題に分数で答えたところ、正解として記載されているのが小数であるとして×をもらい、講師に質問しても無視された、と妻に不平を漏らしていたそうです。まあそれは大人げない講師だと思うしかないのですが、これで思い出すのは私自身の高校時代の経験で、漢字の書き取りで沈殿が正解のものに対し、沈澱と答えた(あるいは、殿部が正解で臀部と答えたか)ところ、×になってしまいました。これ、採点する立場からすれば当たり前なんでしょうか。また、たとえば落後と答えるべきところを落伍、世論(与論)と答えるべきところを與論と答えたら不正解なんでしょうか。

ついでにお尋ねすれば、国語の記述問題とかで、旧仮名で答えたら、万葉仮名で答えたら、古文や漢文で答えたら、どうなるんでしょうね? (もちろん、記述法に誤りがないことが前提ですが)

私自身は用字制限には反対なので、代替字ではなく正字で答えても正解にしていただくのが本来ではないかと思うのですが、駄目なんでしょうか。

投稿: TKJ | 2009.03.23 20:41

TKJさま、おはようございます。
些細な…なんてとんでもない。
これは非常に大きな問題ですし、そのような疑問を持たれることは当然であり、また正しいことです。
実は、ここのところが、我々教師にとって一番難しいところなんです。
国語に限らず、高校までに習うことには、いろいろな意味において間違いや嘘がたくさんあります。
それをどうやって教えるか…これは実に難しい。
用字制限による代替字などその最たるものです。
京都に暗躍する(笑)漢検協会さんの試験では、代替字で書かないと×になります。
大学入試の場合はそれぞれ大学によって方針が違うようですね。
もうその時点で実に困ったものなんですが、私としては当然正字も正解にするべきだと思います。
というか、正字こそ正解にすべきです。
しかし、学校においては、より正解率(?)の高い代替字で書くように指導しますね。
そのへんの矛盾が実に辛いのですが、ある意味世の中の仕組みを教えていると割り切っています。
こっちが正しいけれど、点を取るため(損をしないため)には、社会に迎合した方がいいこともあると。
あと、特に言葉の歴史を勉強すればするほど分かることなんですが、記事の仮名遣いをご覧になってもわかるとおり、どの時代のどの用法を正しいとするか、これはとっても難しい問題なんです。
はっきり言って正解を決めようとしても絶対に無理。
どこかで妥協しなくてはならなくなるわけです。
ただですね、その塾の先生のように、正解しか認めない、すなわち思考停止してしまっていて、疑うこともしない、教育的善意の欠如している「先生」が多いのも事実です。
おそらく学生時代、正解や先生の言うことを鵜呑みにして丸暗記してきた「優等生」だったのでしょう(笑)。
そういう先生にはなりたくないですし、そういう優等生は育てたくないですね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.03.24 08:08

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