IGFプロレスリング「GENOME8」@広島サンプラザ
高山選手と小川選手を制止する鈴木選手
猪木ゲノムをPPVにて初観戦。なかなか面白く、家族みんなで大興奮。
結果などはスポナビでどうぞ。
まずはワタクシ事ですが、先日私たち夫婦を温かく迎えてくださった方々が、テレビの画面の中にいることが大感激でありました。そう、先月、スネークピットキャラバンでお世話になった方々ですね。宮戸優光さんはIGFの現場監督、流智美さんはテレビ解説、鈴木秀樹選手は第1試合に登場…なんだか不思議な感じです。私たちに普通に接してくれた人たちが、こんな大舞台を支えている…つくづく感動であります。
さてさて、どの試合もプロレスの楽しさ、面白さ、奥の深さ、そして歴史を感じるいい試合でしたねえ。ここのところ、比較的いろいろな団体の興行を観戦する機会が多かったのですが、この猪木ゲノムは、ある意味古き良きプロレスが感じられ、最近のハイスピードな曲芸プロレス、あるいは素人参加の演劇プロレスとは、まちがいなく一線を画していましたね(その双方とも、私は好きなんですが)。これは、もしかして求めていたプロレス像に近いのかもしれない。カミさんとそう話しました。
各試合、各選手についても、いろいろと語りたいところですが、このブログの性質上、それは我慢することとします。全体に感じたこと、そして学んだことを書いておきましょう。私にとっては、とても大切な発見が多かったので。
まず、強く感じたのは、「プロレスこそ総合である」ということです。ここでいう「総合」とは、いわゆる「総合格闘技」という意味ではありません。あらゆるジャンルを包括し、あらゆる可能性があるということです。懐が広く深いのがプロレスであり、それはスポーツというよりも、より芸術に近い。
スポーツはそれぞれのジャンルが融合することはほとんどありません。完成されたサッカーと野球を合わせた競技を作ることは不可能ですし、プロサッカー選手がプロ野球で活躍することもまたほとんど不可能です。
しかし、芸術は違います。あらゆるジャンル、たとえば音楽と演劇、美術と舞踏など、あらゆるコラボレーションが可能であり、そこからまた新しい芸術の可能性が生まれてきます。それら各要素の融合や競合こそが、その生命力であるとも言えます。
プロレスについて、私はかねてから、KIng of Sports ではなく、King of Arts だと言っていますね。アートというのは、単に芸術という意味ではありません。技術という意味でもあります。
実は、その「術」の部分が最近のプロレスには抜けているのではないか、最近のプロレスの凋落の主因はそこにあるのではないかと、今日のIGF興行を観て感じたのです。
というのは、今回のIGFの興行では、一部のレスラーを除いて、そうした「術」の部分をしっかりとベースに持った人たちの活躍が目立ちました。それが「芸」の方に向かうにしても、「技」の方に向かうにしても、そこに基礎たる「術」があれば、しっかりと「アート」として成り立つなと思ったのです。
お客様相手のプロの仕事は、いろいろな意味で「アート」でなくてはなりません。いきなり話がそれるようですけれど、あの闘い続ける98歳現役医師であられる日野原重明さんは、医療や看護は「科学に基づいたアート(技)である」とおっしゃっています。単なる経験や人柄ではなく、科学という「歴史の蓄積と継承」を基礎としたアートがまず第一であると。私は、プロレスにもそれが非常に大切だと思うんです。
ある意味、プロレスは総合的であるために、悪い意味での「なんでもあり」に陥りやすい。そうすると、選手が表面的につくろうこと、いや、それ以前に刹那的なエセプロレスラーが存在することをも許してしまう可能性があるんです。
基礎のないところに、立派な建物が建とうはずがありませんね。まさに、強度偽装ではありませんが、現実に表面ばかりきらびやかなレスラーがあまりに多くなってしまいました。
基礎のしっかりしている所には、正しい「なんでもあり」が存在しえます。単なるスポーツ的勝敗論のはるか上空をゆくプロレス的世界…資本主義市場経済での勝ち組負け組、あるいは武力による勝敗を超えたそれぞれの人生があるように、それは必ずありますし必要です…がそこにあるのです。そうして、それこそがプロレスの総合性であり、芸術性であり、魅力だと思うんですね。それを今回再認識させられました。
その基礎たる「アート」の一つがビル・ロビンソンさんの語り継ごうとしている「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」であるのでしょう。そして、猪木さんの遺伝子というのも、まさにその基礎たるアートであるような気がしてくるのです。
なんで、猪木さんはプロレス(特に新日本プロレス)いじめのようなことをしたのか、プロレスを陥れるようなことをしたのか、総合格闘技ブームの片棒を担ぐようなことをしたのか、実は今日初めて解ったような気がします。
自らが一線を退いてからというもの、プロレスの基礎たるアートがどんどん消えていった、それを憂えて、ああいう猪木流の愛のムチを行使したのではないか。総合格闘技の技は、ある意味プロレスの基礎と言えます。ああいうシュートの部分というのは、往年のプロレスラーなら当然身につけているものでした。そうしないと一流になれない、ある意味なめられて仕事にならなかったとも言えます。
そういう事実を、語弊があるかもしれませんが、私は「総合格闘技なんてプロレスの前座じゃん」とあえて表現してきました。しかし、ある時期の(今もかもしれません)プロレスは、前座を飛び越えていきなりメインなみの派手な大技ばかりやるようになってしまった。
猪木さんは、時のメインイベンターを総合に出して負けさせたわけですよね。メインをはるべき人が前座に負けるわけですから、それはショックですよ。でも、そのくらいしないといけないくらい、プロレス界には間違った空気が流れていたんではないでしょうかね。もちろん、UWFもそういう流れの中で、温故知新というか、ある意味極端な形でプロレス界に刺激を与えたわけでしょう。
今日も、猪木さんの口から永遠のライバルであり、永遠のパートナーであったジャイアント馬場さんの名前が出ました。馬場さんの語った「全てのものを超えたものがプロレス」という言葉が、今日のIGF中継を観る私の頭の中に、何度も何度もこだましました。
最後に、ちょっとだけ、具体的な話を。
まず、プロレスって子供の教育に絶対必要だなと。特にメインのタッグは良かった。ああいう物の怪たちがリングで対峙するだけで、子供たちは固唾を呑んで見守ります。リアルなまはげですよ。なんだかわからないけれど、めちゃくちゃ怖い存在って絶対必要です。そのためには、彼らのような非日常的な体躯というのは効果的ですよね。ぜひ生で見せたいところです。
その中で、特に感激したのは、やっぱり高山選手の存在感でしょうかね。昨日グレート・ムタ選手と死闘を繰り広げ、三冠チャンピオンになり、メジャーのベルト全制覇という偉業を成し遂げたその翌日、あれだけの熱いファイトをするんですから。プロ意識の高さを感じました。それに比べて某小川選手はなあ…口はそこそこ達者ですが…。
あと、私の中でMVPを与えたいのは関本大介選手ですね。最近彼の試合を何回か生で観ましたけれど、肉体的にも、技術的にも、精神的にも、いいアートしてますよ、彼は。その良さが存分に発揮された名勝負でした。
それから、最後に、スネークピットジャパンの鈴木秀樹選手。彼も将来いい選手になりますよ。下半身に安定感のある体もいいですし、今日の試合なんか、大先輩に臆せず向かっていくあの姿勢、とってもいいものを見せてもらいました。マウントでの相手の足の畳み方なんか、この前の桜庭選手の教えが生きていたように感じましたね。落ち着いたたたずまいの中に熱くたぎるファイティング・スピリット。ぜひ、確固たるアート(技術)の上に、自分らしいアート(芸術)を作り上げていってほしいと思います。カミさんの目はハートになってましたが(笑)。
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