泣ける歌…『櫻の園』(大村雅朗・松本隆・松田聖子)
昨日の『「泣ける歌」の「泣ける」は可能か自発か』の内容に関して方々で議論が始まっております。いろいろなご指摘もいただきました。ありがとうございます。
それで私ももう一度考えてみようと思ったのですが、いや、これは考えるより実際体験してみた方が手っ取り早いし、正確だろうと思い、この曲をあらためて聴いてみました。
そしたら、やっぱり泣けました。そして、それはやっぱり「自発」でしたね。自然に涙が出るのでした。
ただ、面白いのは、単純に対象がこちらを泣かせるだけでなく、その対象の持つ「物語」に自分も参加していて、それで「泣かされる」ということですね。完全なる受身ではなく、つまり主体が完全に相手にあるんじゃなくて、どこかある意味積極的に自分も参加し、「泣きに行っている」ところがある。そう感じました。
そして、その場所、その場面が発する「何か」、語られる「モノ」が私たちを突き動かします。実はそこが「自発」の本質ですし、もともとの「る・らる」の本質、そして日本人の心性の一つの本質だと思います。
「櫻の園」。そう、この曲は、もう涙なしには聴けない物語を持っているのでした。
この曲は、12年前に46歳の若さで亡くなった、天才編曲家大村雅朗さんの遺作です。聖子さんに歌ってほしいという言葉を残して、彼は旅立った。そして、それを知った友人の天才作詞家松本隆さんが詞をつけて聖子さんがレコーディングしました。
まずは、こちらでお聴きください。
ああ…泣ける。やっぱり泣ける。ウルウル…。
聖子さんと大村さんの関係は本当に特別なものでした。もしかすると芸能界、音楽界の中で、唯一聖子さんが心を開ける人だったかもしれない。何かの番組で、聖子さんは大村さんとの関係を自ら語り、そして彼が作曲した永遠の名曲「SWEET MEMORIES」の楽譜を見て号泣しておりましたね。あれには本当にもらい泣きしましたっけ。
大村雅朗さんは、聖子さんと同じ福岡の出身。同郷ということもあって、身近に感じたというのもあるでしょうし、なんといっても彼の優しい人柄が聖子さんの心を開かせたのだと思いますね。聖子さんの曲の大部分を編曲し、そういう意味でも「松田聖子」を影で支えていた大村さん。
いや、80年代アイドル全盛時代、本当にいろいろな作曲家、作詞家、歌手と組んで、音楽界を支えました。すなわち、我々日本人を影で支えていたと言っても、本当に過言ではないくらい、あの曲もあの曲もあの曲も…本当に多くの曲を手がけています。
私たちは歌謡曲バンドをやっています。基本コピーバンドですので、彼のアレンジに直接触れる機会がとってもたくさんあります。そして、彼の天才的な才能にいつも感動します。なかなか普通の聴き方をされている一般の方には、あるいは名前さえ御存知ない方も多いかもしれませんね。作曲、作詞までは目が行っても、なかなか編曲までは…。でも、そんなところがまた大村雅朗さんらしさなのかもしれません。
こうした私もある意味そこへ行って参加した「物語」が、私を「泣かせる」んですね。それを「泣ける」と言うべきなのでしょう。だから、やっぱり、ただ待ってるだけじゃダメなんですよ。
最後に、「泣ける」曲ではありませんが、彼が編曲した隠れた名曲、私は好きすぎてレコードまで買ってしまったのですが、この曲も聴いてみてください。いや、私、当時の思い出がよみがえって「泣ける」かも…。
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