『笑劇開演 小林賢太郎テレビ』(NHK BS-hi)
笑いに興味はあります。嫌いではありません。仕事柄けっこう使います。しかし、難しい。笑いとはなんなのか。答が一つではないような気もします。たとえば、今日「麻生総理の支持率が9.7%」というニュースがありましたが、ほとんどの人が笑ってしまったことでしょう。どこが笑いのツボなのか。ちなみに、それを伝えるアナウンサーは笑っていませんでした。
ラーメンズについては、以前2回書いています。
第11回定期公演「CHERRY BLOSSOM FRONT 345」。
第16回公演 『TEXT』。
今の私の脳ミソで語れることは、そこに全て書いてありますね。この番組でも同じ印象を持ちました。
ただ、芸ではないドキュメンタリーの部分には、新しい発見がありました。
まず、彼が言語化せずに絵で構想を練ること。言語、言葉にすると、もうその時点で制約が生まれると。なるほど。そのとおりです。言語とはルールであり、フィクションですからね。意味が固定してしまう。それも社会的な意味が固定されてしまうわけで、おそらく「笑い」の要素たる、パラダイムの崩壊と再構築は難しくなりますね。もちろん彼は、それを逆手にとって「TEXT」のようなメタな作品を作り上げているわけですが。
絵というか、右脳のイメージというのは、これは実に個人的なものです。そう、言語は「コト」ですが、イメージはまだ半分「モノ」なんですね。「モノ」は不随意ではありますが、生々流転し、無常なる存在ですから、だからこそ、我々の常識やルールを崩してくれる。そこが笑いという快感に結びついていく。
前にも触れましたが、「笑い」には経験をベースにした、「予想どおり」と「予想外」の両方が必要なんですね。まあ、ワタクシ流に言えば、「コト」と「モノ」のアンサンブルですよ。反復と変奏。お約束とまさか。つまり、左脳と右脳が絶妙なバランスでアンサンブルするのが、小林さんの語った「面白さ」だと思うんですね。そう、昨日まで続けざまにいくつか語りましたけど、いわゆる芸術や芸能、スポーツが生み出す「快感=面白さ」とは、そういう部分に依拠しているような気がするんです。
それを小林さんは見事にイメージして、そして具現化してくれる。右脳で思いついて、左脳で表現してくれる。その過程を我々は追体験しているんじゃないでしょうかね。
あと、面白いなと思ったのは、小林さんが「人を笑わせることに対する憧れ」を持ち続けているということです。天才と呼ばれる彼がそう言うのが新鮮でした。この「憧れ」って、この前のダンスの記事に書いた、その行為自体への「愛」っていうやつでしょう。基本的な「愛」が、小林さんには充実しているんですよ。
ちょっと、というか、だいぶ話がそれます。今日、生徒と、たまたま、アンサイクロペディアの「風が吹けば桶屋が儲かる」の項を見ました。とても全部読み切れないので、ざっと見ただけです。そこにも笑いの本質が感じられましたね。最初は笑えたんですけど、だんだん飽きてきた。パターン化してきたり、あるいは、狙いが感じられるようになってきたり、どんどん鮮度が落ちてくる。とても2500も読めません。そこで、ぐっと下の方まで飛んでみて、そうしたら、再び大笑いしてしまった。そう、「簡易版・・・というより真理」という項目です。
風が吹く
寒くなる
風呂が普及する
桶屋が儲かる
これも、いきなりこれだけが提示されても笑わなかったかもしれない。グダグダ2500も無意味な羅列があって、そして一気にここに収束するおかしさでしょうかね。こんなところにも、「笑い」の本質が見えたような気がしました。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- カムカムギターキッズに高木ブー降臨(2022.08.17)
- 【討論】政治と宗教の深淵(2022.08.10)
- 解禁!JFK暗殺事件の未公開ファイル(2022.08.03)
- ウイルス療法(2022.07.25)
- 【ひろゆき&成田悠輔】坂上忍が暴露!テレビ滅ぼすのは誰だ? (日経テレ東大学)(2022.07.24)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- バッハ 『シャコンヌ(オルガン版)』(2022.08.15)
- 「みんな仲よく」の信念(サンリオ辻名誉会長)(2022.08.13)
- 追悼 オリビア・ニュートン・ジョン(2022.08.09)
- 誡太子書(花園天皇)現代語訳(5)(2022.08.08)
- 誡太子書(花園天皇)現代語訳(3)(2022.08.06)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- ミャクミャク様(2022.07.21)
- 《大勉強 by PHAETON 》Issue 4 死生ってる?(2022.06.17)
- 現在の観測が過去を変える?!(2022.05.24)
- この世界を支配する“もつれ”(2022.05.23)
- 『都道府県別 にっぽんオニ図鑑』 山崎敬子(ぶん)・スズキテツコ(え) (じゃこめてい出版)(2022.04.24)
コメント
前略 薀恥庵御亭主 様
毎度の駄文で御迷惑 御掛け致しております。
「笑い」は人生哲学ですね。笑
「笑い」は本当に奥が不快×深い◎です。
えぇぇぇぇ・・・
今日(こんにち)では様々な芸人の御方様方が
誤活躍× 御活躍◎されておられますが
愚僧の個人的な想(おも)いでは
「笑い」は「悲哀」だと感じております。
そして「我慢」「人情」「知性」と
続いている様です。笑
そうなりますと・・・・やはり
「笑い」の原点は「人生経験」。
それも悲惨な経験や差別的待遇や
大きな挫折や愛する人との別れなど。
まさに「笑い」は「人生」そのものです。?
うぅぅぅぅん。
愚僧が尊敬する芸人様方を考えますと
「笑い」を極めた一流方ほど・・・・
常識では考えられないような悲惨な・・・
酷い体験を受けておられます。笑
「人間 どれだけ・・・
泣いたかで 笑いの厚みが鱒×増す◎」
のかもしれません。合唱おじさん 百拝
投稿: 合唱おじさん | 2009.02.17 07:14
合唱おじさん様、いつもありがとうございます。
なるほど、「笑い」は「悲哀」ですね。
優れた芸人さんは、皆、悲哀を笑いに昇華しておられます。
そういう裏表の関係は面白いですね。
悲喜も不二一如なのでしょう。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.02.17 17:09
前略 薀恥庵御亭主 様
御亭主様の申される通りだと凶漢×経巻×
共感◎致しております。
愚僧が学生時代・・・
インド哲学で「梵我一如」を学んだとき
赤塚不二夫様は「ブラフマン」であり
「天才バカボン」は不二一元論文の
最高峰であると確信致しました。←「天災莫迦僧」ですね。笑
想像も出来ないような苦境を乗り越えたとき
「最高の笑い」が生まれるのでありましょう。笑
しかし「ツクヅク自分は馬鹿」だなぁぁぁぁぁ・・・
と思う今日この頃ではあります。苦笑
合唱おじさん 頓首百拝
投稿: 合唱おじさん | 2009.02.18 10:00
合唱おじさん様、おはようございます。
ワタクシも「天才バカボン」は不二一元論の最高峰だと思います。
まじめにそう思っていますし、子供たちに毎日のように見せているのも、実はそういう意味です。
本当に深いですね。救いです。
神です。仏です。
私も馬鹿でいたいなあ。
人間やめて馬鹿になりたいですね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.02.19 08:34
前略 薀恥庵御亭主 様
いやぁぁぁ・・・本当に
ゆっくりと御亭主様の御文章を
拝読でき「しあわせ」であります。
御亭主様のこの日常の語録・・・
本当に貴重であります。
とても内容が豊かで濃くて
楽しくて面白いのです。
とても「大切な物語」であります。
愚僧にとりましては・・・
まさに「断腸亭日乗」の世界です。
「薀恥庵日乗」として後世に
語り継がれてまいりましょう。
笑いといえば・・・・
「永井荷風」様も・・・若かりし頃
朝寝房夢羅久・・・違う・・
「六代目朝寝坊むらく様」に弟子入り
なされ落語家になっておられます。
愚僧のなかでは・・・・
腸×超◎大偉人で在らせられます。笑
うぅぅぅぅん。やっぱり・・・
「笑うってことは素晴らしい」
笑いによって・・・多くの人々が
「しあわせ」になれます。
「笑いは人生の宝」
「不二草紙 万歳」
薀恥庵御亭主様の益々の御活躍を愚僧
こころより御祈念致しております。
合唱おじさん 頓首百拝
投稿: 合唱おじさん | 2009.02.25 21:37
合唱おじさん様、どうもありがとうございます。
過分なおほめの言葉にたじろいでしまいます(笑)。
本当につまらぬ独り言にしかすぎないのです。
でも、どなたかに読んでいただいているというご縁をいただいて、
言葉が勝手に生まれてくるのも事実です。
ありがたや。
自分一人では絶対に絶対に毎日文章なんて書けません。
皆様のお力あっての不二草紙です。
私も精進しなくてはいけませんね。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.02.26 08:02