『NHK短歌〜ゲスト彌勒忠史さん』
朝、なにげなくテレビをつけたら、ちょうど「NHK短歌」が始まりました。ふだんは子どもが「ポケモンサンデー」を観る時間ですが、今日は私の実家の方に行っておりまして、おかげで静かに短歌を鑑賞し、いろいろと考えることができました。
ま、ああやって短歌で競い合うのも、ある意味ポケモンバトルみたいなものか(笑)。撰者が勝手に手を加えて進化させちゃったりしてね。
百人一首に至っては、最古のポケモンカードだし(笑)。
と、いつもの通り、不真面目な私であります。で、不真面目ついでにちょっと思ったこと、というか学んだことを。
今日のゲストは、声楽家の彌勒忠史さんでした。我が古楽界ではそこそこなじみのカウンターテナー歌手です。イタリアものを得意とする方ですね。
その彌勒さんが登場したからびっくりしたわけです。そしていきなりヘンデルとか歌い出すし。あれ?これは何の番組だっけ、と少し混乱。
しかし、結果として彼のおかげで今まで見えてこなかった本質的なところが明確になりました。
というのは、番組中でもそのような解説がされていましたけれど、和歌こそファルセットで歌われるべきものではないかということです。わかりやすくするためにあえて不真面目に言いますと、やっぱり和歌はオカマ的趣味だということ。
和歌を国文学の中心に持ってきた張本人が、世界最古のネカマだった紀貫之さんです。そのへんの事情については、こちらに不真面目に、しかし真面目に(?)書いてあります。こういうことばっかり書いてるから、文学界から非難されるんだよなあ(苦笑)。
彌勒さんがお好きだと挙げた和歌がありました。例の平兼盛の和歌です。
忍ぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで
私もつい最近こちらでとりあげましたね。たしかにこれなんかも、かなり女性っぽい感性による作品です。
もちろん、平安のスタンダードから言えば、男性は漢詩、女性は和歌のはずです。しかし、考えてみれば、恋情の伝達メディアとしては、漢詩は機能しませんよね。だって女性はほとんど漢字読めなかったわけですから。
それで、男子は女子に歩み寄る必要があった。いや、貴族でなければ、そんな面倒なメディアを使わず、直接「好きだ!」とか言えばいいわけじゃないですか。でも、貴族はヒマですから、そこに一種の遊びを絡ませるわけですね。で、貴族男子は女子への優しさのポーズという意味も含めて、女子の得意とするメディアを使ったわけです。ま、逆チョコみたいなもんでしょうか(笑)。
で、和歌はもともと「歌」なわけですから、メロディーをつけて朗詠したんでしょ。そんな時も、野太い男らしい声で歌うんじゃなくて、やっぱりヤサオトコ風というか、かなり女性的な発声をしたんじゃないでしょうかね。裏声まではいかなかったかもしれないけれど、高目の音程で美しくね。
現代に目を移してみましても、そういうのってありますね。日本のロック歌手、特に女子に人気のヴィジュアル系の男子たちによく見られる、あの女性的な発声と節回しもそういう伝統ですし、演歌における男性による「女歌」なんかもそういう流れじゃないでしょうか。
というわけで、和歌の伝統を継ぐ短歌の世界とカウンターテナーの彌勒忠史さん、結果として意外にマッチしていたんですよ。案外違和感がなかった。
彌勒忠史さん、ぜひ和歌の朗詠というジャンルにも進出していただきたいですね。日本の古い即興詩人とイタリアのカンティンパンカ、日本の貴族趣味とイタリアのセレブレティは通じるところがあるに違いありませんから。
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