『刑事コロンボ 「狂ったシナリオ」』 (NHK BShi)
↓幻想のコロンボ
土曜日恒例のコロンボ鑑賞。娘たちはインフルエンザで40度の熱があるにもかかわらず、これだけは起きて観ています(結局途中で睡魔に負けていましたが)。
今日は新シリーズの中でも印象的な「狂ったシナリオ」でした。SFX映画監督とコロンボのだまし合いが面白い。フィクション対フィクション。犯人のフィクションはどんどん新たな現実を作り出していく。コロンボのフィクションはたった一つの真実に向かっていく。このせめぎ合いが実にスリリング。このドラマのシナリオもまた素晴らしいですね。
ところで、私はコロンボ世代ですから、まあ半分懐かしみながら観ているわけですが、初見であるカミさんや娘たちはどうしてこんなにもハマっているのでしょう。
娘たちはですね、最近で言えば、コナンとかQEDとかを観て、なんとなく知的推理ドラマに興味を持っていたんですね。そしてたまたま観たコロンボが、そういう意味で最強であることがわかり、それ以来、どの程度内容を理解しているかわからないけれど、すっかりハマってしまったのでした。コロンボが登場したり、得意のポーズをとったり、得意のセリフを吐くと大笑いしていますから、結局、あのコロンボのキャラに魅力を感じているのかもしれませんが。
で、カミさんですが、娘たちにすすめられてあの「祝砲の挽歌」を観てですね、一気にハマってしまいました。なんでも推理物は面倒くさいのであんまり観ないで来たとかで、コロンボについても勝手な先入観を持っていたようです。ご存知の通り、コロンボは犯人が最初からわかっているパターンですから、そういう面倒くささはないんですよね。
それで、カミさんは今日もですね、かっこいい、かっこいいと言いながら観ているわけですよ。それで、ふと気づいた。ああ、これは「プロレスリング」だ。「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」だ。「桜庭和志」だって。
先日参加して大いに勉強、感動させていただいたスネークピット・キャラバン・サイエンス桜庭和志編ですが、あそこで見たサクの動き、攻め、守り、流れは、たしかにコロンボのそれそのものです。私の中で、イメージが完全に重なりました。
つまり、コロンボはマタギなんですね(笑)。熊を追い、対話し、わざと逃がし、動かし、そして敬意を表しつつ最後にはとらえる。「捕まえられるものなら、捕まえてみろ」と言う相手を、あらゆる手段を使って追い込んでいく。
コロンボは見事な格闘家ですよ。まず、野性の勘が鋭い。相手の表情や挙止動作から、気配を読み取ります。観察眼の鋭さ。あらゆる情報を見落とさない。あとは攻めの緩急ですね。プロレスリングで言えば、ひじを使って相手のいやがる所を攻める。とにかく痛いから、犯人は逃げようとする。相手の動きを誘発するんですね。そして、ある時は、わざと空間や時間を作り、相手を遊ばせる、泳がせる。サクの得意技です。しかし、それも所詮コロンボの掌の上のことで、結局、犯人はコロンボの思う通りの方向に動いてしまう。
あと、フェイントもうまいですね。一度帰ったと思わせて、また戻ってくるじゃないですか。実に効果的なフェイントです。あと、サクもよくやる、わざと相手に攻撃させるというヤツです。コロンボもわざとピンチに陥るような行動をとりますよね。しかし犯人にとって、攻撃は最大の防御となるばかりではありません。実は最大の隙をさらけ出してしまう危険もあるんです。パンチを繰り出せば脇が空く。キックを繰り出せばタックルのチャンスを与える。コロンボもそんな感じで、相手を自滅させますね。
なるほど、こう考えてみますと、カミさんがコロンボにハマるわけもわかりますね。なんとなくモサッとしているのに、実は猛者であるという、いわゆるギャップ萌えもあるようです。サクもそういうタイプですよね(笑)。
というわけで、これからは、コロンボをプロレスリングだと思って観ることにします。犯人もなかなかの実力者、そして、いろいろなタイプがいますからね。それにコロンボがどう対応していくか、とっても楽しみじゃないですか。
ビル・ロビンソンはプロレスリングを「フィジカルなチェス」だと言いました。知的なかけひきだと言うことです。そして、アレクサンダー・カレリンは「レスリングは(相手の動きを決める)ダンスだ」と言いました。これはまさに刑事コロンボの捜査方法を比喩しているとも言えますね。捜査は操作であると。
面白いですね。世の中、共通点が見えてくると。
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