« ダンスに学ぶ「愛」の世界 | トップページ | 『笑劇開演 小林賢太郎テレビ』(NHK BS-hi) »

2009.02.14

『アルビノーニ 協奏曲集 作品10』(イ・ソリスティ・ヴェネティ)

Tomaso Albinoni Concertos Op.10
Claudio Scimone , I Solisti Veneti , Giuliano Carmignola , Piero Toso
514hb5sygsl_sl500_aa240_ 年もやってまいりました聖バレンタイン・デー。なんだか「逆チョコ」とか言うまた新しい風習を作って儲けようという、菓子メーカーの魂胆が見え見えの今年の聖日。まあいいんですけどね、昨日の話じゃありませんが、「愛」と「芸術」は市場の外にあるべきですよ。市場の失敗でいいと思います。
 とか言いながら、しっかり家族や生徒たちから手作りチョコをいただいているワタクシです。でも、ウチのクラスのギャルどもは一人もくれません。なぜなら、今、大学入試の真最中で、いくらいつも余裕で楽しそうな彼女らも、さすがに今年はチョコを作っているヒマはないようです。てか、去年はオレがあいつらにロイズのチョコを買ってやったんだ。そうだ、ちくしょう!漢検のせいだ(笑)。
 さて、そんなこんなで、今日は自分史における聖バレンタイン・デーの変遷について復習をしてみたりしたんですが、一つ思い出したことがあったので紹介しておきます。
 私が高校3年生の時だと思います。ウチのクラスのギャルたちとは正反対で、実に暗く淋しい受験勉強をしていた、そのど真ん中に鎮座していた聖日。当然、その日私の手もとにチョコレートなる甘美なものが届くわけもなく、なんともビターな気持ちになっていたのでありました。
 しかし、そんな私をスウィートに慰めてくれた音楽があったのです。そうです。それがこのアルビノーニの作品10だったのです。クラウディオ・シモーネ指揮、イ・ソリスティ・ヴェネティのアナログ・レコード。あの頃の私の恋人は、冗談抜きでこのアルバムだったのです。
 アルビノーニはもともと好きだったんですよね。作品9を聴くのはもちろん大好きでしたし、ヴァイオリン・ソナタ集やトリオ・ソナタ集なども、楽譜を手に入れて演奏したりしてました。そんな時、81年でしたか、幻の曲集が発見された(実際は60年代に発見されていた)という触れ込みでこのレコードが発売されたんです。お気に入りのミュージシャンの新曲が出るのと同じで、そりゃあ興奮しましたよ。もちろん早速購入しました。
 で、聴いてみましたら、これがまた驚きの内容でした。作品9から10数年経っての出版とはいえ、これほど変っているとは思わなかった。そして、当時の私の心のツボに恐ろしいほどはまってしまったんです。
 ロマンチックでメランコリック、これでもかこれでもかというベタな展開。ほとんどムード音楽か映画音楽のよう。バロックでも前古典でもなく、実に不思議な現代性を帯びた作品集でした。
 アルビノーニが晩年に到達した境地はこれだったのでしょうか。同世代のバッハがどんどん対位法を極める方向に行ったのに比べると、アルビノーニはそれとは全く反対の方向に行きました。まあ、単に時代の流れに従ったのがアルビノーニだということでしょうけど。バッハはどうかしてたと(笑)。
 それにしても、アルビノーニってすごい作曲家だと思いますよ。軽いとか浅いとか言う人もいるようですが、このメロディー創作能力は音楽史の中でも稀有なレベルです。そして、そこに絡む対旋律というか、いや、もっと微妙なものだな、セカンド・ヴァイオリンが時々絡ませる合いの手というか、スパイスが絶妙なんですよね。ちょうど大村雅朗さんの編曲みたい。
 そういうおいしい所をうまく強調したのが、このイ・ソリスティ・ヴェネティの演奏です。この作品10はおそらく他の録音がないんじゃないでしょうか、今でも。この演奏、いや録音、アルビノーニの現代性を実にうまく引き出していると思いますよ。そう、録音テクによる部分も大きい。微妙な距離感や深いリヴァーブなんか、こりゃちょっとやりすぎなくらいです。でも、それがアルビノーニにぴったり。メチャ甘なイタリアのチョコ。
 これは正直、古楽器で演奏してほしくない。ぜったい痛い演奏になりますよ。薄っぺらになること間違いなし。私、第1番のスコアを持っています。もう冒頭からして、バロック・ヴァイオリンではパンチに欠けます。弾いてて気持ち悪いですから。モダンで弾くと俄然輝きます。こういうこともあるんだよなあ…。
 というわけで、私から皆さんへの「逆チョコ」をプレゼントします。YouTubeにあったチョコをお譲りしますね。ぜひご賞味くださいませ。

第1番
第2番(高音質版)
第3番

Amazon Albinoni Concertos, Op.10

不二草紙に戻る

|

« ダンスに学ぶ「愛」の世界 | トップページ | 『笑劇開演 小林賢太郎テレビ』(NHK BS-hi) »

音楽」カテゴリの記事

コメント

あたしチロルチョコ一個あげましたよ!

勉強頑張ります^^

投稿: ちゃー | 2009.02.15 16:32

今日 手作りの生チョコ2こあげましたよ!
あと クッキーも\(^o^)/

投稿: マキ | 2009.02.15 16:37

ちゃーよ、チロルチョコは手作りではないぞww
まじで勉強頑張ってくれ。あとちょっとだよ。
現実逃避してんなよ!wwwww

マキよ、たしかにいただきました。
オレもウンチ型食べたかったな。
マキもC日程目指しガンバレ。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.02.16 06:51

アルビノーニの作品10に関するコメント、初めて目にしました。アルビノーニと言えば、馬鹿の一つ覚えのように作品9ばかり。作品9もよいが、あのすばらしい作品10への賞賛、長年の溜飲が下がりましたぞ。

投稿: 亜留美能尼 | 2009.06.23 17:04

亜留美能尼さん、コメントありがとうございます。
いやあ、私も安心しましたよ。
実生活でもネット上でも誰も私の感動を共有してくれなかったものですから。
絶対いいですよね。
とりあえず世界に二人はファンがいるということで(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.06.24 12:05

アルビノーニの作品10、もっと多くの録音が出て欲しいですよね。本当に不遇な作品だと思います。LPの時代には、イ・ムジチによる録音もあったのですが、CD化される気配が無いですね。

古楽器による演奏としては、次のようなものがありますので紹介させていただきます。残念ながら、全12曲中、8曲のみの録音です。

Concerti a cinque op. 10(Tomaso Albinoni)
Conductor: Claudio Astronio
Orchestra: Harmonices Mundi
http://www.artsmusic.de/templates/tyReleasesD.php?id=920&label=SACD&topic=arts-releases-detail

今のところ、日本のタワーレコードやHMVでは売っていないようです。私は、上記のサイトで直接注文して入手しました(約1週間で届きました)。

最大の聴きどころは、第1番の第2楽章だと思います。とても澄んだ弦の音色で、曲の魅力が際立っています。これは、古楽器ならではの演奏だと思うのですが、いかがでしょうか。

投稿: Y.I. | 2009.08.03 23:58

Y.I.さん、コメントありがとうございます!
ああ、とうとう出ましたか。古楽器版。
これは聴いてみたいですねえ。
それにしても、全曲じゃなくて8曲って…笑。
なんとも不遇ですね。
でも、そんなレアな感じがまたいいかな。
当時もこんな感じの待遇だったでしょうし。
貴重な情報ありがとうございました!

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.08.04 08:15

本年十月に音楽学者(評論家)の服部幸三さんが亡くなっていたことを知りました。服部幸三さんといえばNHKFMのバロック音楽の楽しみを担当されておりました。氏はアルビノーニが大好きということで、番組でも作品10の中の何曲かを紹介されていました。もう30年も前のことで、イソリスティベネティのLPが発売されて私も夢中で聴いている頃でした。

投稿: 亜留美能尼 | 2009.12.11 14:30

亜留美能尼さん、おひさしぶりです。
今、私のiPhoneにはアルビノーニの作品10がちゃんと入っていますよ。
やっぱりいいですね、いつ聴いても。
テレビ番組のBGMとかでもっと流れればいいのになあ…と思います。
これを聴きながら街を歩くと、景色が明るくなります。

そう、服部幸三さん、残念でした。
個人的にも何度かお世話になりました。
私も、まさに服部さんの「バロック音楽の楽しみ」で聴いてしびれちゃったクチです。
なんだか、マニアックな体験を共時的に分かち合っていて嬉しいです!

皆川達夫さんとのコントラストが良かったですね。
とっても懐かしい。
ナイショですが、私は服部派でした(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.12.11 17:44

昨晩、昔のレコード評の本を眺めていましたら、アルビノーニの作品9の評論を皆川さんが書いておられることに気が付きました。ひょっとするとバロック音楽の楽しみの中でアルビノーニが好きだといわれた方は皆川さんだったかもしれません。氏はアルビノーニの音楽は物欲しげに騒ぎ立てるヴィヴァルディーの音楽などに比較すればとても上品であることを高く評価されています。私も同意見であり、特に作品10に強くそれを感じます。私見ですが、アルビノーニの音楽は上品だけでなく純粋であるとも思っています。アルビノーニの作品10などの音楽を基準にすれば、バッハの音楽などにすらたくさんの夾雑物が存在する、そんな感じです。
 いずれにしても、いまから30年近く前、私の感受性もまだ衰えてはおらず、また、今のようには音源が氾濫しておらず、一つ一つの音楽の印象も強かった時代、作品10を代表とするアルビノーニ音楽の占める位置は私の当時の生活の中では大きいものでした。こんな時代に思い出を共有できる方がおられたことを幸せに思います。
 YI様ご教示の古楽器による演奏のCDはHMVのonline shopで取り扱われていました。また、イムジチのLPを先日インターネットオークションで見つけ入札しましたが落札できませんでした。品薄で比較的高価で取引されているようです。

投稿: 亜留美能尼 | 2009.12.14 11:43

亜留美能尼さま、こんにちは。
ああ、たしかに皆川さんそんなこと言ってましたね。
バロック名曲100選とか、そのあたりでしょうか。
私の愛読書…というかあれくらいしか情報がありませんでしたね。

私もアルビノーニ大好きなんですが、古楽演奏仲間からも、あんまり賛同は得られないんですよ〜。
いまだにバッハ信仰みたいなのが強いのですかね、日本は。
私の最近のバッハ評は厳しいですよ(笑)。
ある意味煩悩だらけですよ。夾雑物の塊です。
音楽を(この前はヴァイオリンを…と書きましたが)殺した犯人の一人とも言えます。
抽象的で普遍的な音楽の価値も認めますが、やはり音楽は即物的な快楽でもあるべきだと思います(なんて、ちょっと極端ですね)。

演奏する立場になって分かったのは、アルビノーニの作曲法はかなりユニークだということです。
先輩のコレルリやヴィヴァルディとも一線を画しています。
ある意味現代的ですね。
もちろん基礎的なところはしっかりしていて、ちゃんと対位法も駆使できます。
しかし、それ以上になんといっても「歌心」という音楽の根源的なものを忘れていないところがいい!

非常にバランス感覚に優れていると思います。
それはたぶん、職業音楽家でなかったからかもしれませんね。

最近ようやく彼のオペラ作品なども録音されるようになってきました。
本国イタリアでの評価とかどうなんでしょうか。

アルビノーニのファンクラブでも作りますか!?笑

これを機に、私も自分のバンドでこれからどんどん演奏していきたいと思います。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.12.15 13:17

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55913/44062625

この記事へのトラックバック一覧です: 『アルビノーニ 協奏曲集 作品10』(イ・ソリスティ・ヴェネティ):

« ダンスに学ぶ「愛」の世界 | トップページ | 『笑劇開演 小林賢太郎テレビ』(NHK BS-hi) »