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2009.01.09

ステファン・グラッペリ 『ライヴ・アット・ザ・ブルーノート』

Live at the Blue Note ~ Stephane Grappelli
41z0h59trtl_sl500_aa240_ 日、村の成人式。昨年同様演奏を頼まれたんですが、残念ながら私は出張でして、今年は、昨年一緒にやっていただいたチェンバリスト(&胡弓・ガンバ奏者)の渡辺敏晴さんに全ておまかせすることにしました。よろしくお願いします。
 ということで、今日は大雪の中、はるばる群馬から渡辺さんがいらっしゃいまして、夜は恒例?の飲み会。渡辺さんとは、音楽だけでなくいろいろとディープな話で盛り上がるんですが、とてもここでは公開できませんので(?)、まじめに音楽のお話を紹介します。
 渡辺さんのいろいろな話の中で興味深かったのは、リズムの話です。最近、私も1・2・3・4…と数えるのとは違うリズムをテーマにいろいろ考えたり、書いたりすることが多かったので、渡辺さんの話は妙に腑に落ちるものがありました。
 たしかに音楽のみならず、人間が感じるリズムというのは、リニアなものではなく、サイクルですよね。一周をいくつに分けるか。つまり時計のように円を描いて回っていると考えられがちです。
 では、それが中心の定まった真円であればより良いのかというと、どうも違うらしい。実は中心もある種の円運動をしていたりして、つまり、微妙な揺らぎというかぶれというか、そういうものがないと、生命力のあるリズムにならないのではないかと。
 これはもちろん、我々音楽を演奏するものにとっては、日常的に感じていることでもあります。メトロノームのような、あるいはシーケンサーのような正確なリズムからは、私たちは人間的な音楽を感じません(最近はそれを逆手にとったクールな商業音楽もありますが…)。
 ですから、その中心の運動というのが実は重要なのではないか、と思ったのです。適当に中心をずらして、でも一周回って帰ってくるところで辻褄を合わせる、というのは、たぶん私でもできます。でも、それが本当に心地よいかというと、おそらくそうではない。単に不正確なリズムに聞こえるかもしれません。
 その点、今日も話に出ました、美空ひばりやステファン・グラッペリなんか、その中心の運動がそれこそ見事なのではないか。さらに彼らのすごいところは、それが1周単位ではなく、何周も何周も、あるいは1曲通しての正確な設計図のようなものがあって、それに従って細部に分割して「リズム」を刻んでいるように感じるところです。これは私なんぞにはとてもできません。
 まあ、その揺らぎこそが、ノリでありスウィングであるわけですが、それを万人が感じて、そして共振して心地よくなるというのは、本当に不思議な気がします。この前のオスカー・ピーターソンで言えば、「ストリーム」というやつですよ。これを科学的に、数値的に表すのはほとんど無理でしょうね。
 で、渡辺さんの話で面白かったのは、それを陶芸家の方に話したら、みんな納得したというか、なるほどそれでいいのか!と言ったというんですね。たしかにろくろを回している時、最初はどうしても真円を目指す、つまり中心を定めることに執心しちゃうじゃないですか。でも、実際の名品は微妙に中心のぶれているものが多い。それは確かです。
 考えてみれば、天体の運動も、ほとんどが真円ではなく、揺らぎを伴った楕円軌道を描きます。宇宙全体で考えても、相対的には不動の点を設定できますが、絶対的には不動の点など存在しません。そして、そうしたある種の不均衡の状態は対称性の破れとして、実は宇宙に根源的に存在しているのでした。
 と、ちょっと話が大げさになってしまいました。お酒のせいで、脳内に不均衡が生じ、無用な生命力が生まれたようです(笑)。
 で、今日突然紹介するのは、グラッペリ翁の名演です。95年ですから亡くなる2年前、87歳の時のライヴでしょうか。生き生きとしたリズム、正確な音程、しゃれた表現…私からしますと、この次元でそれらを実現しているのは、グラッペリとひばりしかいないような気さえします。
 そして、このライヴの素晴らしいところは、ブルーノートならではのお客さんとの距離感、そして、両ピザレリのすごすぎるギターです。こんなのを生で聴いたら、卒倒しちゃいますよ、きっと。これは宇宙だ!

Amazon Live at the Blue Note

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