『こねこ〜旅するチグラーシャ〜』 イワン・ポポフ監督作品
Котёнок
文句なしの名作猫映画!だいたい猫の映像作品は痛いものが多いのですが、これは別格。素晴らしすぎです。
昨日、今日とBS11で放映されていました。私は7年くらい前でしょうか、秋田のディスカウントショップで500円で売っていたVHSビデオを買ったんです。それで初めて観まして、その時も本当に感動しました。猫の可愛さ、素晴らしさも当然だったんですけど、なにしろロシア映画のあの雰囲気ですね、あれが良くてものすごく切なくなったのを覚えています。その時、ちょうど秋田は冬でして、なんとなくあの雪景色というか、あの重たい曇り空というか、そういう雰囲気も手伝ったのかもしれませんが。
その500円の格安ビデオを買った時は、どうせ子猫がたくさん出てくるイメージビデオだと思ったんです。現代(ソ連崩壊後の)ロシア映画なんて観たことなかったし、なにしろディスカウントショップで500円ですから。そしたら、まあなんとも素晴らしい映画ではないですか。思わず見入ってしまったんです。
でも、今日久々に観ましてね、ちょっと意外だったのは、案外明るいイメージだったということです。実はそのVHSの映像は妙に暗くて、ああ、ロシア映画ってこんな感じなのかな、なんかあまりに映像が暗くて何が起きてるか分からないシーンがたくさんあって、これは独特の表現だな、なんて思ってたんですけど、あれは単に商品化の際の映像調整に失敗してたんですね、きっと。
あと、そのビデオは吹き替えではなくて、字幕でした。ロシアの役者さんたちの淡々としたセリフ回しもきっとそういう雰囲気を醸すのを手伝っていたのかもしれません。吹き替えは普通に日本人風に明るい感じですので。
それにしても、この映画に出てくる猫たちの個性的なキャラクターとその演技、本当にいいですね。単にカワイイだけではありません。自然に、しかし雄弁に猫の魅力を語り尽くしています。猫好きにはもちろん、そうでない人の心にも、さすがに響くと思いますよ。
主役(?)の子猫チグラーシャ(タイガー…トラちゃんってことですかね)、ワーシャ、ジンジン、シャフ、イザウラ、プショーク、ペルシーク…本当に素晴らしい演技です。なぜ猫がここまで演技できるか。それは、この猫たちが、人間の主役フェージンを演じるアンドレイ・クズネツォフと絶対的な信頼関係で結ばれ、そして見事にトレーニングされているからです。
というのは、このクズネツォフは実世界において、世界的に有名な猫のサーカス劇場を主催する人。世界一のネコ使いとして有名な方です。このサーカス団、何度か日本にも来てますよね、たしか。ぜひ一度生で観たいものです。
で、このクズネツォフさんが役者としてまた最高です。淡々と、しかし実に味わい深く、ちょっと切ない役を見事に演じています。おそらくご本人そのままのキャラクターだと思います。猫たちに対する温かい愛情はもちろん、売店のお姉さんへのほのかな恋情など(実は、私はそこに感動というか、切なくやるせなくなったんですが)、本当に心に残る演技をしています。
1996年に製作されたこの映画では、ソ連崩壊後のロシアが次第に変化していく、そんな様子も街の風景から少し読み取れます。少しずつですが西欧諸国、あるいはアメリカの文化が流入し、それまでの伝統が崩れていったのでしょうか。
低予算で作られたからでしょうか、決して派手さはありませんが、それがまた我々西側の映画に親しんだ者には新鮮に映りますね。ちなみに子猫の帰りを待つ姉弟役はポポフ監督の実の子どもさんだそうです。
全編を通じて流れるマルク・ミンコフの音楽が郷愁を誘い、これまた実によろしい。短調の中に温かさを表現しています。温かさ、愛情の裏側にある切なさ、それは「もののあはれ」だと思いますが、それが音楽にも表れていますね。ショパンに通ずるものを感じたのは私だけではないでしょう。そして、ちょっとひょうきんなお父さんが演奏するヴィヴァルディのフルート協奏曲「夜」がまたそれらとよきコントラストをなしています。お見事な選曲。
ところで、この映画、外国作品としては珍しく、文部科学省選定映画となっています(ついでに財団法人日本動物愛護協会推薦にも)。でも、よく観ていると、猫たちによる詐欺、家宅侵入、暴力、窃盗、器物損壊など犯罪行為満載ですね(笑)。
Amazon こねこ 「こねこ」とロシア映画のいま
楽天ブックス こねこ 旅するチグラーシャ
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コメント
今日BS11で観ました。
とても良い映画でした。
ご紹介ありがとうございました。
投稿: 貧乏伯爵 | 2009.05.31 21:43
伯爵さま、昨日はありがとうございました!
それこそ映画化したいような世界でしたね。
またよろしくお願いします。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.06.02 08:05
始めまして。
こねこ、いいですよね!
変に商業映画ぶってなくて、叙情性があって。
終わった後、じわ~っと余韻が残る感じでした。
これがロシア映画?!って感じでした。^^;
あの~。。話は変わるのですが、
左横に鎮座してます黒猫ちゃん、里子に分けてもらうことは可能でしょうか?(^^ゞ
とても可愛くてぜひ我が家にも1匹!
ぜひぜひお願いします。(≡^∇^≡)
投稿: こねこfan | 2010.04.19 23:44
こねこfanさん、こんにちは。
ホントいい映画ですよねえ。
猫好きにはたまりません。
左上の黒猫ちゃんですが、
http://purple.noblog.net/blog/c/10009314.html
に設置方法が詳しく書かれていますので、ぜひどうぞ。
私も拾ってきて勝手に育ててますので(笑)。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.04.21 10:22