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2008.12.27

『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い 禁じられた数字 〈下〉』 山田真哉 (光文社新書)

33403437 日のつづき。こちらも1時間ほどで読了しました。〈上〉では単位時間当たりの単価が高いと感じたのですが、こちらでは損をした気がしませんでした。それだけ内容が良かったということです。
 これぞすなわち、「会計は科学、ビジネスは非科学」ということなのかもしれませんね。数字的には同価値になるはずが、心理的な面では全く違う価値を持つわけです。
 昨日も書きましたけれど、数字というのはあくまで抽象的なもの、すなわち無限に多様なモノから、指を折って数えられるデジットなコトを抽出したものです。だからこそ便利であり、危険であり、有用であり、役立たずなわけです。
 この本では、そうした特殊言語としての数字への関わり方が詳しく分かりやすく解説されていまして、たしかに上巻と相互に補い合い、結果として世の中の多様性、多面性を表現していると感じました。ですから、いわゆるビジネス書や宗教書のようには完結しません。ある意味一つの結論が出ず、納得はするけれどすっきりはしないかもしれませんね。でも、それがこのシリーズの特徴でしょうし、「文学」たる所以だと思いますよ。
 私はいちおう教師ですが、よく「教師はダメだ」というようなことを言いますし、「学校教育」の無力さや危険性についても語ります。それと同様に、会計士である山田さんは、最終的に会計を否定しているように感じられます。しかし、そのような姿勢は決して自己否定ではなく、それこそ世の多様性と自己の他律性を証明するものであり、原理主義に陥らない一つの方策でありましょう。
 で、私も強く共感したのですが、原理主義に陥らないための最初の方法が、1の次の2でして、つまり二分法ですね。そして、それをさらに2→3→…としていく。そういう発想法と判断と行動をとっていくことが、まあ、大人になるということでしょうし、社会性を身につけるということでしょうし、私たち教師が学校で教えるべきことだと思いますね。
 昨日も書きましたとおり、私たちは「コト(フィクション・抽象)」によって安心を得たいと思っています。恣意的、即答的、固定的、画一的なコトに寄りかかっていたいと願望します。それがカネであったり、カミであったりするわけですね。あるいは数字。しかし、実際には、確率が不確定性を証明してしまったり、仏教の教えが不確実性を証明してしまったり、あるいは世界の金融市場が突然崩壊してしまったりして、我々は「モノ」の本質に対峙させられます。
 そんな時にどれだけ柔軟に発想し判断できるか。それこそが我々に(ビジネスに)必要なことなのでしょう。この本では結論的にそういうことを語っているのだと思いました。私の言い方とはずいぶん違いますけどね。
 しかし、多様性の中にある真理ということで、きっと、いろいろな読者がいろいろな次元で共感したのではないでしょうか。どんな仕事をしている人でも、あるいは仕事をしていない人もですね、数字とは関わっていかねばなりません。お金がないと生きられませんし。そういうまさに普遍的に抽象的な「数字」を扱って、その対岸にある普遍的な多様性という真理を証明した名著であると思います。
 こういう、本当は難しいこと、「モノの本質が無常である」という真理(マコト)を、分かりやすく説明するのは難しいと思いますが、筆者はさすが文学部の出身ですね、実に上手に、より具体的に、そして無理せず自分のフィールドで表現してくれました。高校生にもぜひ読んでもらいたい良き教材とも言えるでしょう。

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コメント

 お久しぶりです沙羅双樹です。
 前回はどうもありがとうございました。
 あれからまず一日二食をはじめました。
 おかげさまで体重も約9キロ落ちBMI22になりました。
 しかし、腹周りや顔の脂肪はまだ結構ありますので、新年からいよいよ、一日一食を始めようと思います。
 そこで、蘊恥庵庵主さんの最近の一日の食生活が是非知りたいです。
 コーヒー(砂糖、ミルクはどれくらいか)やアメや野菜ジュースは何時に食べたかなど。
 ご面倒おかけしますが、時間があるときにでも結構ですので、よろしくお願いします。

 

投稿: 沙羅双樹 | 2008.12.29 11:42

沙羅双樹さん、おはようございます。
こちらの記事ではなく、またあちらでやりましょう。
コピペしときます。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.12.30 07:56

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