両虎二龍の闘い
ああ、行きたかったなあ。まさに夢の対決です。和田良覚レフェリーも感無量のご様子。
今日、リアルジャパンプロレスの興行「Conclusion〜決着〜」が後楽園ホールで行われました。メイン・イベントは、タッグマッチながら、初代タイガーマスクと二代目タイガーマスクの初対決。本当にあり得ないカードです。ああ、現地にいたら絶対泣いたな…(笑)。両虎の腹が多少出ていることなど気になりません。いや、そこにこそ両虎の年輪、プロレスの深さを見るのだ!
何度仕事を早退して駆けつけようと思ったことか。これを逃したらもう見られないかもしれない。でも、さすがにそれはできませんでした。う〜ん、ちょっと後悔してます。
まさに「両虎二龍の闘い」です。これで三沢のパートナーが藤波辰巳だったら完璧だったんですけどね(笑)。ま、そこまでは望みません。
結果は次のとおり。
初代タイガーマスク
ウルティモ・ドラゴン ●
15分24秒 エメラルドフロウジョン→片エビ固め
三沢光晴 ○
鈴木鼓太郎
プロレスは結果ではありませんから、これだけ見てもへえ〜そうなんだで終わりでしょう。まあ予想通りと言えば予想通り。予定調和かもしれません。しかし、私のようなプロレス・ファンからしますと、こうして活字になって二人の名前が並ぶだけでも、それはもう感動的なのであります。
新日本の虎と全日本の虎が相まみえる…昭和のプロレス黄金期には夢の中でさえ叶わなかったカードが、こうして四半世紀の時を超えて実現する…実に感慨深いことです。
しかし、一方でプロレス文化、すなわち日本の伝統的な芸能や真の武士道、あるいは本当の意味での八百長精神が失われた、その裏返しでもあります。それはいつも書いているとおりです。
その点、初代タイガー佐山聡さんのこれまでの格闘家人生を顧みると、面白いことがわかりますね。
彼は御存知のとおり、プロレス界で一世を風靡し、ある意味革命を起こして、その絶頂期に突然引退しました。そして、シューティングという新しい格闘競技の概念を生み出し、現在の総合格闘技の基礎を作りました。しかし、近年、再びリアルジャパンプロレスというプロレス団体を作り、プロレス回帰を果たしました。彼はそれ以前に、真の武士道復権のために、掣圏真陰流という心武一体型武道を創始しています。
つまり、彼の考える武士道を体現する一つの具体的方法がプロレスだということです。これは、私の考えと深く通じ合うところがありますね。いや、私のような実践の伴わない野狐と、格闘界の神である佐山さんを一緒にするのは申し訳ないのですが、古武術に詳しい知人と話をする中でも、よくプロレスにこそ本来の武術が持つ精神性が生きているという文脈が出てくるんですよ。これは分からない人には全く分からないことでしょう。両者は一見かけ離れた世界に見えますから。
しかし、身体性を凌駕する精神性という面や、互いを活かし合うという面、形式を重視する面などにおいて、実は両者は非常に近いものなのです。もちろん、プロレスは幅広い芸術(芸能)なので、そういう世界と対極にあるものもありますよ。しかし、おそらく佐山さんが目指すリアルなプロレスや、三沢さんが守ってきた王道プロレスには、そういった面が色濃く残っているのだと思います。
ところで、この夢の対面ですが、実は20数年前に一度実現しているんですね。それも全日本プロレスのマット上で。これは実に貴重な映像です。そして、今思えば、馬場さんの「シューティングを超えたものがプロレスだ」という名言を実証しているシーンとも言えますし、今の佐山さんの活動を予言するシーンだとも言えますね。ご覧下さい。
今日の試合会場には、あのビル・ロビンソン先生もいらしていたそうです。彼もまた「シューティングを超えたプロレス」の生き証人ですね。ああ、かえすがえす、行けば良かった…。行きたかったなあ。
古くから「両虎相闘えば勢い倶に生きず」「両虎争う其の時は必ず一虎死す」と申しますが、昨日は一龍が死して、両虎は生き残りました。必ず再び相闘う時が来るでしょう。その時こそは私も歴史の証人になれるよう参戦いたします。その日まで、心のプロレスラーを目指して精進いたします。
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