今日は何の日?…大正天皇の漢詩一首
さて、今日は何の日でしょう?クリスマスも結構ですが、日本史的にはそれより重要なことが起きた日です。そう、昭和という時代が始まった日なんですね。キリストの誕生日でもありますが、昭和の誕生日でもあるんです。
違う言い方をすれば、大正天皇が崩御されたのが1926年の12月25日なのです。御存知でしたか?
大正天皇は、明治、昭和両天皇に挟まれて、正直目立たない存在です。そして、いろいろとウワサもあったりして、いわば謎の多い方ですね。私もあまりよく存じ上げません。
ただ、一つ私の印象に残っているのは、大正天皇が立派な漢詩の作り手であったということです。なんでも1300以上の漢詩を残しているとか。これは歴代天皇の中でダントツの数です。次点の嵯峨天皇や醍醐天皇が100弱ですから桁違いです。
御存知のように、一般的に天皇は歌作の方に向かいますよね。そういう伝統です。お父様である明治天皇も優れた歌人でありました。なのに大正天皇は、どうして漢詩に熱中したのでしょう。
大正天皇は性格も行動も明治天皇とは対照的だったと言われます。文学の面でも、こうして和歌ではなく、漢詩を盛んに作ったわけです。偉大な父親に対する複雑な息子の心境がうかがえて面白いですね。
さて、今日はそうした大正天皇の漢詩の中から、この季節にぴったりな七言絶句を一つ紹介しましょう。題は「歳晩」。「年の暮れ」ということです。
歳晩
北風凛洌透人肌
正是今年欲暮時
愛日己臨南殿外
寒梅早有著花枝
ワタクシ流に訓み下してみましょうか。
歳晩
北風凛洌人肌を透す
正に是れ今年暮れんと欲するの時
愛日已に臨む南殿の外
寒梅早や有り花を著くるの枝
ついでに意訳してみましょう。
北風が凛として人の肌を刺す
まさに今年も暮れようとする時
冬の陽はすでに紫宸殿の外にまで届き
寒梅には早くも花をつけた枝が見える
うん、シンプルですが、新春へ向けての明るさ、暖かさが感じられる佳作ですね。歳の暮れと題しながら、新年への希望を歌い込んでいます。ちなみに「愛日」とは冬の日光のことです。夏の日光はおそるべきものですが、冬の日光は愛すべきものだということです。
一部では大正天皇が暗愚であったという風評があります。しかし、このような優れた漢詩に接しますと、とてもそのような感じは受けません。それも短期間に膨大な量を残しているわけですから。ちなみに天皇は漢詩を、二松學舍大学の前身となる漢学塾二松學舍の創立者三島中洲に学んでいたようです。
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