プロレス・格闘技系雑誌4冊
推薦入試の指導が一段落したのと、大晦日の桜庭vs田村がいちおう決まったのと、元WWEのチャンピオン、ブロック・レスナーがUFCのチャンピオンになったということを祝し、たまっていたプロレス&格闘技の雑誌をまとめ読みしました。
推薦入試の小論文とか面接の指導をしていますと、こういう勉強もぜったい必要だなと思うのです。ただ目前の問題をテクニックによってサブミットしていくだけでなく、他者から学び、自己を変革させ、最終的に調和していく勉強も大切だなと。あるいは、国語の勉強における、受験対策と文学的な授業との関係にも言えるかな。両方必要です。受験テクニックは実は基礎中の基礎です。そこをベースにして文学的創造や鑑賞をすべきです。そしてこれは、総合格闘技とプロレスの関係にも言えるんですよ。
え〜と、読んだのは「Gスピリッツ vol.9」と「紙のプロレス(kamipro)128」と「格闘技通信12月号」と「昭和プロレス!名勝負列伝」です。うむ、濃いな。
アメリカの総合格闘技(MMA)の世界では、プロレスのカリスマ・チャンピオンが最強となりました。非常にうらやましいことです。御存知のようにアメリカ最大のプロレス団体WWEは、八百長を超えたエンターテインメントの様式を完成させ、見事に総合格闘技との差別化を図ることに成功しました。そして、そのエンターテインメントの世界での王者が、スポーツ(とあえて言いましょう)の世界でも頂点に立ちました。つまり、両者が非常にうまい具合に格闘界の両輪になっているんですね。
これはうらやましいことです。私の理想の格闘家観は、ビル・ロビンソンに代表されるような、ガチ(シュート)も最強だが、プロレス(ワーク)的にも最強というものです。つまり、ものすごく簡単に乱暴にまとめちゃいますと、めっちゃ強いしいつでも誰でも殺せるんだけど、無闇に人をあやめたりしない、という武士なんです。
武士という意味では、彼もまたアメリカ人ですけど、世界最強のオタク、青い目のサムライジョシュ・バーネットくらいかな。今、日本の格闘技界で輝いているのは。皮肉なことです。
ま、動物的な強さだけでなく、人間としての道義心というか、賢さというか、敵をも愛する心というか、そういう精神性をも持ち備えていなければならないということですね。
だから本当は、このブログでよく私が使う論法のように、プロレスと総合を対極のようにとらえ、やれどっちがいいとか、どっちは許せないとか、そんなのは間違いなんですよ。本当は同じ直線上にあっていい、いや、そうあるべきものですから。
しかし、私が常にその間違いを犯してまで苦言を呈するのは、やはり日本の両世界が互いに尊敬の念を持っていないと思われるからです。いや、尊敬できるような状況にないと言った方が正確でしょう。
今回、これら4冊の本を読んでわかったのは、昔はちゃんと一本の線上に両者が共存していたということです。今回のGスピリッツは全日本プロレスの特集でした。かつてジャイアント馬場さんは、総合格闘技ブームの走りの頃、「ああいうものも全部含んだのがプロレスだ」と言って泰然自若としていました。これは、どうも本当だったようです。あの頃は私はまだ未熟だったし、プロレス界自体に物語性が色濃く残っていて、実態があまりリアルに伝わってこなかったので、よくわかっていませんでしたが、こうして当時の所属レスラーの回想を読みますと、なるほどそうだったのか、と大いに納得できるのでした。
まあ、これもかなり乱暴なまとめ方で、異論も出るかもしれませんが、あえてわかりやすく書きましょう。つまり、現在の総合の元になった真剣な極め合いは、プロレスの道場の練習や、実際の興行の第1試合から第3試合くらいまでに行われていたんだということです。そこを通って、そこを卒業していわゆるプロレスを身につけていったと。
ロビンソンも語っていますが、プロレスの試合の序盤で、相手の力量を計るために互いにシュートを仕掛けるんですね。で、極める寸前までやって、相手の技術力を見切ってですね、そこからそれに見合ったプロレス的世界を展開していく。これは当然自分の身を守るためでもありますし、相手にケガをさせないためでもあるし、相手を立てたり、成長させたりするためでもあります。特に初めての相手とやる時は、そうした探り合いをしなければいけません。つまり相手が道場でどれだけ練習しているかを知るのが大切というわけです。
そうすると、いわゆるUWF系に走ったプロレスラーたちはですね、これもちょっと失礼かもしれませんが、やっぱりちょっと間違った方向に行ってしまったと思うんですね。いや、本当に強いのは俺なんだとか、あんな茶番はやってられないとか、そういう気持ちは当然わかりますが、やはりプロとして、お客さんありきの仕事として、あるいは自分が長い間身を置く職場として考えてた時に、彼らの判断はちょっと無粋だったかなと思うんです。
もちろん、結果としてはプロレス界に新風を吹き込み、そして現在の総合格闘技ブームを作り、そして他の格闘技ジャンルの選手たちの活躍の場も作ったわけですから、まあ歴史の必然だったと言えばそれまでなんですがね。
ただ、日本の場合は基本それらが両極化してしまって、健全な交流や活かし合いができなくなってしまった。今や、総合はできるけどプロレスはできない人たち(つまり、プロレス的受け身やプロレス的試合の組立て、プロレス的パフォーマンスができない人たち)と、プロレスはできるけど基礎的なグラップリングすらできない人たちが増えてしまった。
だから、総合格闘技の試合は、まるで昔のプロレスの前座試合みたいな地味な動きに終始し、お客さん不在の自己中心的なものになってしまっているし、プロレスの試合は、前座からピョンピョン飛んで跳ねてという試合ばかりになってしまう。両方とも実に味気ないものです。
まあ、今やってる実につまらない相撲にも言えることですよね。とても観る気になりません。ついでに言えば、音楽の世界もそんな感じです。クラシック界もそうですし、この前の記事じゃないけど、J-POPの世界なんかひどいもんです。もっと皆さん、基礎をしっかりやった上で、自己中心的でないより高度な次元を目指しましょう!…って、お前に言われたくないよ!という声があちこちから聞こえますな(笑)。
というわけで、なんか雑誌の内容そっちのけになってしまいしたが、結局全体としてそういう流れがよくわかったということですよ。
最後にそれぞれの雑誌で心に残った記事を二つずつ書いておきましょうか。
「Gスピリッツ」…ザ・グレート・カブキの各選手評(特にジャンボ鶴田への批判的評)&北原光騎の格闘技観
「kamipro」…桜庭和志と青木真也の対談&「PRIDEはプロレスを殺したのか?」
「格闘技通信」…桜庭和志と高山善廣の対談&月刊秘伝の広告(!)
「昭和プロレス!」…「アントニオ猪木×ビル・ロビンソン」「ブルーザー・ブロディー×ジャンボ鶴田」
最後に、やっぱりプロ格闘技には「夢」が必要だ。永遠なる夢…それは私にとってはジャンボ鶴田です。生前もついに一度も本気を出さなかった鶴田。カブキが苦言するように、彼は練習も今一つ、試合も今一つ。もし、そんな鶴田が本気(マジ)で格闘技をやったら、どんだけ強かったのか。ちょっとひねくれた夢だけれど、そんな叶わぬ夢もまたオツなものです。
夢と言えば、桜庭和志vs田村潔司。ある意味プロレスを知りながらプロレスを捨てたプロレスラー二人がどういう結論を出すのか。こちらの夢は今年の大晦日に現実になります。
Amazon Gスピリッツ Vol.9 kamipro No.128 格闘技通信 2008年 12月号 昭和プロレス!名勝負列伝
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コメント
「プロレス・格闘技系雑誌4冊」というので、てっきり往年の「レジャーニューズ」のことでもと思ったのですが、全然違いましたね。
そういえば、グレート草津のデビュー試合で、ルー・テーズがちょっと本気を出したら草津がKOで、それ以来泣かず飛ばずで国際プロレスも練習場爆破(これは私もその現場を見ました)と共に消滅、といったことがあったに聞いています。あのクラスでもそんなことがあるんですね。
人間風車ビル・ロビンソンですが、杉並区で活躍中です。
http://www.suginamigaku.org/content_disp.php?c=441bfb45ac8a9&n=3
投稿: AH | 2008.11.18 21:56
AHさん、こんばんは!
いやあ「レジャーニューズ」は残念でしたね。
グレート草津がくらったバックドロップ、あれはなんだったのでしょうかね。
新人つぶしだったのか、受け身のとりそこないだったのか…。
生き神様、ビル・ロビンソン、近いうちに会いに行こうと思っています。
スネークピット・ジャパンいいですよね。
総合とプロレス、両方やってますから。
私はとても入門できませんが、
スネークピット・キャラバンには近いうちに参加したいなあ。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.11.18 22:16