モンスターのお話
相変わらずウチの娘たちのポケモン熱は冷めません。ポケモンの、作品としてのモンスターぶりについてはこちらに書いたとおりです。子どもに世の本質を見せないところが、あの作品の人気の秘密であり、長続きする秘訣であると書いたような気がします。そうですね、モノ心つかない子どもたちにとっては、ポケットモンスターこそが信頼すべき友人であり、現実の人間はまだまだモンスターにしか見えないのではないでしょうか。
monsterの語源を遡ると、ラテン語のmonēreに行き当たります。monēreは警告するという意味だそうです。やはりかの国でもmon-という音は、日本語の「モノ」と同様、不随意、想定外を表したのでしょうか。調べてみる価値はありますね。
ところで、ポケモンならぬチリモン御存知でしょうか。今ひそかに子どもたちに人気だとか。チリモンとは「チリメンモンスター」の略で、「ちりめんじゃこの中に紛れ込んでいる小さなエビやカニ、タコ、ヒトデなど」のこと。和歌山県のカネ上さんという水産加工業社が紹介して評判になったんだそうです。なるほど、ちりめんじゃこやシラスの釜揚げなんかに、時々小さなタコとか入ってて、ラッキーと思うことがありますね。ふつうはあれは除去するんだそうです。それをあえてそのまま出荷して、モンスター探しを楽しんでもらうというコンセプトなんですね。面白い。
やはり、このモンスターたちも、本体のちりめんじゃこからすると、外部、異物ですよね。それが興味をひくというのは、やはり私たちが本体(標準・日常)だけでは飽き足らないものであるということを証明していますね。平坦で均質的な日常に、ちょっとした変化と刺激を求めるのは、子どもも大人も一緒です。
でも、やっぱり非日常が日常を侵食するようでは困りますね。私のような仕事をしていると、様々なモンスターに出会います。まあ世間的に一番有名なのは、モンスター・ペアレントでしょうか。こんなひどい例もありましたっけ。でも、残念ながら(?)私の周囲にはほとんどいないんですよ。いや、個性的で楽しいある意味でのモンスターはたくさんいますけど、皆さん愛すべき方々です。まあ、ポケモンみたいな感じ?なんて言ったら失礼ですね(笑)。とすると、実は私はポケモンマスターとか、あるいはブリーダーとか。馴化させる技術を持っているのかも…なんてね。
あ、そうそう、このモンスター・ペアレントという言葉、かの向山洋一が命名したんですよねえ。私からしますと、彼こそが忌むべきモンスターでした。体でっかいし。そして、隣の教室では、彼に洗脳された多くのモンスター・スチューデントが製造されていましたっけ(笑)。今や教育界の神扱いされてますけど、まあ、日本では怪物と神の境界線はかなり曖昧ですからね。それはそれでいいか。
ところで、モンスター・ペアレントは日本独特の種かといいますと、そうでもないらしい。アメリカなんかでも、子ども離れできない過保護な親が増えていて、特に大学などでその対応に頭を悩ませているらしい。で、そういう親を、英語ではヘリコプター・ペアレントっていうんだそうです。何かあればすぐに飛んでくる。常に子どもの上空を旋回していて、何かあると急降下してくる。そんなイメージなんでしょうか。
ところで、最近、ウチもモンスター・ペアレントだと思われているフシがあるんです。いや、ウチの下の娘が通っている村の保育所なんですけどね、とっても平和で素朴で素晴らしいんですけど、最近けっこうクレーマーな親が多くて大変らしいんです。
世のご多分にもれず、学芸会とか運動会の演目の内容や子どものポジションに文句を言ったりする親が増えてきたと。運動会ではやりの「羞恥心」ネタをやったり、あるいは発表会で「うる星やつら」をやったり、あるいはビデオ鑑賞の時間に「天才バカボン」を観たりすると、必ず文句を言う親が出てくる。もっと高尚なことをやれ!と(笑)。
ウチなんか、子どもの教育は「うる星」と「バカボン」と「ドリフ」だけにまかせているので、全然OKなんですけどね。もっと低俗にして本質的、ゲージツ的なものをやってもらいたいくらいです。で、こういうことをヘーキでほかの親たちに言うと、みんな呆れるというか、苦笑するというか、引くというか。ちなみに、保育所にバカボンのDVDを持って行ったのはウチです(笑)。ま、たしかに子どもたちの口調が全員「バカボンのパパ」になっちゃったらしいから、問題と言えば問題ですが。で、ウチこそモンスターということになっている(たしにか)。
ま、そんなわけで、世の中、モンスター・ベアレントだけでなく、モンスター・ペイシェントとか、モンスター・コンシューマー(クレーマー)とか、モンスター・ドクターとか、モンスター・ティーチャーとか、モンスター・ポリティシャンとか、モンスター・プレジデントとか…つまり、あらゆる分野にモンスターが出現していまして、いったいどっちが普通なのか、どっちが日常でどっちが非日常なのか、まったく分からない状況になっていますね。いや、ある意味この世にはモンスターしか生息していなくて、その覇権争いが起きているだけかもしれませんね。冷静に考えれば、私もかなりなモンスター・ティーチャーですわ。もしかして、あなたもモンスターじゃないですか?というか、自分がモンスターでないと言い切れますでしょうか。
| 固定リンク
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- 『おそ松さん(実写映画版)』英勉監督・Snow Man主演作品(2023.03.08)
- 「や〜だ」はどこから来るのか(2023.02.24)
- 天王坂に思う(2023.02.23)
- 柴門ふみ 『美は乱調にあり』 (瀬戸内寂聴 原作)(2023.02.17)
- 山田玲司が語る小津のすごさ(2023.02.13)
「育児」カテゴリの記事
- 追悼 のっぽさん(2023.05.11)
- 柳沢正文 vs 落合陽一 『睡眠の謎』(2023.04.26)
- 「や〜だ」はどこから来るのか(2023.02.24)
- 田嶋陽子が説く人権・男女(2022.09.26)
- ひろゆき&成田悠輔 in東大…ヤバすぎる日本の教育(2022.09.05)
「教育」カテゴリの記事
- BossB 『全てのビジネスは”宇宙思考”に学べ』(2023.05.25)
- 『基礎科学としての情報〜エントロピーと生命、超次元複雑性と生成AIの未来と私達』 Dr.苫米地(2023.05.24)
- Style2030 賢者が映す未来〜竹倉史人 (BS-TBS)(2023.05.14)
- 追悼 のっぽさん(2023.05.11)
- 若者との対話 in 石和・甲府(2023.04.25)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- 『基礎科学としての情報〜エントロピーと生命、超次元複雑性と生成AIの未来と私達』 Dr.苫米地(2023.05.24)
- Style2030 賢者が映す未来〜竹倉史人 (BS-TBS)(2023.05.14)
- 『東京画』 ヴィム・ヴェンダース監督作品(2023.02.10)
- 『光を追いかけて』 成田洋一監督作品(2023.01.05)
- 女性配偶者を人前でなんと呼ぶか(2022.12.06)
コメント