『元素周期 萌えて覚える化学の基本』 (PHP研究所)
こ、これは…(苦笑)。
なんだか最近私が「萌え」の研究家だみたいに思われていて、ちょっと厳しい状況であります。私は実はそっちのことは全然知らないし、決してそういう趣味ではないのですが…。
ま、んなこと言って、学術誌の萌え特集に寄稿してたりしますからね。世間的にそう思われてもしかたありません。ただ、そういうわけで、萌え物件に客観的に触れる機会が増えたのはたしかで、そうしていると、最初はナンダコリャって思っていたものが、抵抗なく観ることができるようになっている。慣れっていうヤツですね。良かったのやら…。
でも、さすがにこれはビックリしました。いやはや…。ついにここまで来たか。元素少女118人。118 Element Girls。
いや、元素の擬人化というアイデアは、これはありだと思ってました。というか実際すでにありましたし。
この前、NHKスペシャル「デジタル・ネイティブ」を観てましたらね、アメリカの少年が13歳で起業して、「Elementeo」というカード・ゲームを開発、販売してもうけているという例が紹介されていました。このカード・ゲーム、それぞれの元素がキャラクター化され、カードになっていて、それでより多くの化合物を作った人が勝ちという、なかなか面白そうなものだったんです。
ただ、こちらはいかにも西洋ファンタジー風な絵柄でした。少年がネットで大人のプロ・デザイナーにどんどんダメ出ししていく様子は、ちょっと異様でさえありました。で、出来上がったものはなかなかアダルトな感じですね。
それに比べて我がニッポンは…笑。いい大人が33人で描いて、これですか(笑)。いやあ、すごいなあ、ニッポン。
しかし、しかし、よく見てみると、それなりによく出来ていることがわかります。細かいところのこだわりや、キャラクタライズは、これはいかにも職人的な(オタク的な)お仕事とも言えますね。なにしろ、それぞれの元素の性質をあらゆる萌え属性にあてはめているという、とんでもないことをしでかしているわけですから。顔つきや体つき、服装からポーズ、セリフにいたるまで、たしかによく練られている。元素を暗記するにはこのキャラクタライズはいい手です。というか、暗記の基本ですよね。日本人は昔からこういうこと得意です。
そう、日本の絵画文化においては、擬人化、物語化というのは、とっても普通なことでありました。動物の擬人化なんて、言うまでもなく鳥獣戯画ですでに極致に達してますし、子ども用のおとぎ話で動物や日用品が擬人化されているのはもちろん、大人用の草双紙なんかでも擬人化はよく見られます。山東京伝の作と伝わる『心学早染草』では、人の心という抽象的なものさえ擬人化されている。あの「悪玉」「善玉」っていうやつですよ。すごいですねえ。
で、元素もまた、実在しているとは思いますが、目には見えないわけで(見たことありません)、それをこうして全部女の子にしちゃうという荒技を、ニッポン人はやってしまう。それもなぜかPHP研究所が出しちゃう。Peace and Happiness through Prosperity(繁栄によって平和と幸福を)!!たしかに反映と平和と幸福を感じないわけではない…か。松下幸之助さん!これでいいんですか!?(笑)
そのうち、これはカードも出るな。Elementeoがどの程度特許を持っているかわかりませんが、どう考えてもこっちの方が世界的に流行るでしょう(笑)。女の子と女の子が結合して新しいキャラが生まれるんですから。やばいっすよ。
私の教え子も製作に関わった「もえたん」以来、こうした妖しい萌え教材がどんどん生まれています。まあこれで勉強好きになってくれればいいんですけど…。なんか違う能力も伸長するような気がしないでもない。けっこう売れてるらしいし…。あっそうだ、私も萌え系古文の参考書でも作るかな。この前の記事じゃないけど、古典文法を萌えでやるとか(笑)。助動詞をキャラクター化するのか?いや、悪くないな。すでに現在推量の「ラム」ちゃんとかいるし(笑)。どうですか?PHPさん。あるいは學燈社さん。
Amazon 元素周期 萌えて覚える化学の基本
楽天ブックス 元素周期
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『禅語を生きる』 山川宗玄 (春秋社)(2023.03.01)
- 仲小路彰 『昭和史の批判史』より「二・二六事件の本質」(後半)(2023.02.28)
- 仲小路彰 『昭和史の批判史』より「二・二六事件の本質」(前半)(2023.02.27)
- 仲小路彰 『昭和史の批判史』より「二・二六事件」(2023.02.26)
- 臨時特別号「日刊ニャンダイ2023」(2023.02.22)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 劇的サヨナラ!WBC準決勝(2023.03.21)
- 上野公園にて花見(2023.03.20)
- 「温故知新」再び(2023.03.16)
- 『RRR』再び!(2023.03.14)
- 中西圭三 『Choo Choo TRAIN』(2023.03.09)
「自然・科学」カテゴリの記事
- リュウグウ試料から遺伝物質!(2023.03.23)
- 東日本大震災から12年〜最大余震はこれから(2023.03.11)
- AGIが世界を変える(2023.02.15)
- 中之倉バイパス(ループトンネル)(2023.02.09)
- 「2035年に実用化させる」日本の革新的手法で“レーザー核融合発電”は日の目を見るか?(2023.02.02)
「教育」カテゴリの記事
- 「温故知新」再び(2023.03.16)
- 『禅語を生きる』 山川宗玄 (春秋社)(2023.03.01)
- 「や〜だ」はどこから来るのか(2023.02.24)
- 追悼 松本零士さん(2023.02.20)
- AGIが世界を変える(2023.02.15)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- 『東京画』 ヴィム・ヴェンダース監督作品(2023.02.10)
- 『光を追いかけて』 成田洋一監督作品(2023.01.05)
- 女性配偶者を人前でなんと呼ぶか(2022.12.06)
- 釈迦に説法(2022.12.03)
- シンギング・リンとシルク・ヴァイオリンの共演(2022.11.10)
コメント
庵主さま、冒頭からなにボケかましているんですかっ!
それはともかく、生涯学習として「一部」中年にも良いかもしれませんね。覚えにくい炎色反応の色と女の子の髪の色が同じだといいなあ。
投稿: 貧乏伯爵 | 2008.11.15 08:34
伯爵さま、どうも、こんにちは。
いや、ボケてないですよ(笑)
まじで疎い分野です、ハイ。
で、炎色反応と髪の色に関してですが、残念ながら2色刷りなので、そのへんはよく分かりません。
オールカラーだったら良かったのに。
ちなみにこれ、私が買ったのではなく、向かいの化学の女性教師が貸してくれたものです。
で、話したんですけど、どうせならフィギュア作って、腕で結合できたらいいんじゃないかと。
でもそうなると、やっぱり金属は男、非金属は女にするとかの方がいいような…。
いや、腐女子的には全部男の方が良かったりして(笑)
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.11.15 16:38
この話をするのなら、「炭素太功記」については是非触れないといけないのではないでしょうか。私も「日本SFこてん古典」での横田順彌氏による紹介しか読んだことはないですが。以下のショップに内容の一部紹介がありますので、是非ご覧下さい。
http://www.papy.co.jp/act/books/1-373/
投稿: TKJ | 2008.11.18 16:45
TKJさま、こんばんは!
ああ、これは…すごそうですね。
私、不勉強で知りませんでした。
ううむ、元素の擬人化なんて、とっくの昔に実現してたんですね。
それも、濃すぎるキャラ…日本ってすごいですね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.11.18 22:05