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2008.10.08

『理系の人々』 よしたに (中経出版)

80613157 ーベル賞4人って…。もっと増えたりするんでしょうか。村上春樹さんとか…。
 で、とりあえず理系の4人の先生方のインタビューが実に冷静で面白かった。もし私だったら(…って、ないない…笑)宝くじ当たったみたいに喜んじゃいますよ。カッコいいなあ、おじいさんたち。
 というわけで、実に好タイミングでこのコミックを読みました。今、職員室でちょっとしたブームです。いやあ、実に面白い。面白すぎる。
 よしたにさん、ぼく、オタリーマンでは、自らのオタクぶりとサラリーマンぶり(?)を暴露し、やや自虐の印象が拭えず、よってダヒャヒャとは笑えない空気を醸していましたけど、こちらはもう断然笑える。
 そう、私は根っからの文系…ではなくて、根は理系のオタクなのに文系の花が咲いてしまった(咲いてない、との指摘も)やや特殊な立ち位置にいる人間なので、けっこう共感、理解できる上に、客観的に他人事として笑えるんですよね。
 ちなみに私が、このマンガのネタとなっている多くの理系属性の中で、自分に「あるある」と思ったのは、約15%でした。まあ、こんなもんでしょう。ちょっと残念な気さえします。向かいに座っている女性化学者はやや謙虚に50%(やっぱり女性ですからね、メカ系とかにそれほど執着しないので)、そして、斜め前の男性数学者は99%当てはまっている!と、嬉々として申しております。
 その数学の先生と話したんですけど、やっぱり彼なんか、車を運転している時、前の車のナンバーの4ケタの数字を見てですね、四則計算を駆使して答えを10にするなんていうことを、ほとんど無意識でやるそうです。いや、そんなのは小学校で卒業したとか(笑)。実際はそんな次元ではなく、4ケタの全ての数字の組み合わせの中で、答えを10に導ける組み合わせのパーセンテージを瞬時に言ってのけました。8割超えてるんだ…へえ〜。
 考えてみると、私も理系を目指していた頃は、そういう思考が大好きでしたね。やっぱり物事はっきりさせたくてしかたなかった。それができると快感でしたしね。つまり、私の「モノ・コト論」でいうところの「コト」に対する執着です。脳内での成就によってドーパミンがどっかんと出るんでしょう。
 で、理系世界において負け組になったのは高校生の時。そうそう、この前高校の数学の授業のこと書いたじゃないですか、自虐的に(笑)。あんな感じで、脳内不可成就を味わっちゃったんで、なんとなく「コト」にふられたような気になって、それで「モノ」世界に行っちゃったわけです。物質とか物品という「モノ」ではなくて、「もののあはれ」の方です。
 そんなプロセスを経ての今の私ですから、この「理系の人々」に対しては、半分羨望があり、半分揶揄してやりたい気もあり、まあ屈折したジェラシーみたいなものがあるんですね。お分かりになりますよね。だからこそ笑えるんです。
 じゃあ「文系の人々」が出たら笑えるかというと、これは笑えない。なぜなら、「文系の人々」では作品にならないからです。面白くないと思います。だいいち、こういうある意味冷静かつ客観的な自己分析というものを、文系の人間はできませんし、いや厳格な自己分析をしないというのが文系の特徴ですから、原理的にこういう作品は存在しないんですよ。たぶん長編の小説みたいになっちゃうんでしょう。で、結局なんだったのという余韻だけ残して去っていく(笑)。
 このマンガの中にもいちおう「文系の人々」が登場しますが、やっぱり描写は甘いと思います。てか、単なる理系の敵として表現されてますね。こんなにスマートじゃないっすよ。文系のヲタっていうのが、実は一番たちが悪いっていうか、使えませんからね(笑)。
 ま、一つ言えることは、世の中は案外理系のオタクが回しているということです。文系のオタクは世界のことなんか考えていませんから。理系が世界共通の、あるいは宇宙共通の(しかし、もしかすると脳内宇宙に限ったことかもしれないが…)「コト」にこだわるというのは、それなりの社会性だと思いますからね。執着する自己の世界観が、社会の公約数と一致しているんです。
 文系は辛いですよ。自己のモヤモヤにこだわればこだわるほど、それが現実社会から離れていってしまうように感じる。実際はそのモヤモヤの方に、世界の本質があると信じていますが…最大公倍数って、たぶんあるよなあ。

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コメント

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投稿: TKJ | 2008.10.26 21:42

は〜い。
理系の人、大笑いしました。
TKJさんは理系ですよね。
私は理系崩れなので、ちょっとした憧れがあるんですよ。
来世は絶対理系って決めてます。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.10.26 21:48

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理系といってもいろいろございますので  奥付によると今月発売となっていますが、恐らく先月に発売された本です。人間を理系と文系のふたつに分類するというのもあまり適当ではないのでしょうけれども、いわゆる理系の人間の不思議な習性について書かれた漫画かなと思って購入しました。  私も現在ではあまり理系っぽくない仕事をしていますが、大学受験では一応理系を騙って、数学IIIとか物理II・科学IIとかを選択していたものです(一般教養の線形代数や解析であっという間に落ちこぼれましたが)。大学では全学のサークルに... [続きを読む]

受信: 2008.10.26 18:21

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