『理系の人々』 よしたに (中経出版)
ノーベル賞4人って…。もっと増えたりするんでしょうか。村上春樹さんとか…。
で、とりあえず理系の4人の先生方のインタビューが実に冷静で面白かった。もし私だったら(…って、ないない…笑)宝くじ当たったみたいに喜んじゃいますよ。カッコいいなあ、おじいさんたち。
というわけで、実に好タイミングでこのコミックを読みました。今、職員室でちょっとしたブームです。いやあ、実に面白い。面白すぎる。
よしたにさん、ぼく、オタリーマンでは、自らのオタクぶりとサラリーマンぶり(?)を暴露し、やや自虐の印象が拭えず、よってダヒャヒャとは笑えない空気を醸していましたけど、こちらはもう断然笑える。
そう、私は根っからの文系…ではなくて、根は理系のオタクなのに文系の花が咲いてしまった(咲いてない、との指摘も)やや特殊な立ち位置にいる人間なので、けっこう共感、理解できる上に、客観的に他人事として笑えるんですよね。
ちなみに私が、このマンガのネタとなっている多くの理系属性の中で、自分に「あるある」と思ったのは、約15%でした。まあ、こんなもんでしょう。ちょっと残念な気さえします。向かいに座っている女性化学者はやや謙虚に50%(やっぱり女性ですからね、メカ系とかにそれほど執着しないので)、そして、斜め前の男性数学者は99%当てはまっている!と、嬉々として申しております。
その数学の先生と話したんですけど、やっぱり彼なんか、車を運転している時、前の車のナンバーの4ケタの数字を見てですね、四則計算を駆使して答えを10にするなんていうことを、ほとんど無意識でやるそうです。いや、そんなのは小学校で卒業したとか(笑)。実際はそんな次元ではなく、4ケタの全ての数字の組み合わせの中で、答えを10に導ける組み合わせのパーセンテージを瞬時に言ってのけました。8割超えてるんだ…へえ〜。
考えてみると、私も理系を目指していた頃は、そういう思考が大好きでしたね。やっぱり物事はっきりさせたくてしかたなかった。それができると快感でしたしね。つまり、私の「モノ・コト論」でいうところの「コト」に対する執着です。脳内での成就によってドーパミンがどっかんと出るんでしょう。
で、理系世界において負け組になったのは高校生の時。そうそう、この前高校の数学の授業のこと書いたじゃないですか、自虐的に(笑)。あんな感じで、脳内不可成就を味わっちゃったんで、なんとなく「コト」にふられたような気になって、それで「モノ」世界に行っちゃったわけです。物質とか物品という「モノ」ではなくて、「もののあはれ」の方です。
そんなプロセスを経ての今の私ですから、この「理系の人々」に対しては、半分羨望があり、半分揶揄してやりたい気もあり、まあ屈折したジェラシーみたいなものがあるんですね。お分かりになりますよね。だからこそ笑えるんです。
じゃあ「文系の人々」が出たら笑えるかというと、これは笑えない。なぜなら、「文系の人々」では作品にならないからです。面白くないと思います。だいいち、こういうある意味冷静かつ客観的な自己分析というものを、文系の人間はできませんし、いや厳格な自己分析をしないというのが文系の特徴ですから、原理的にこういう作品は存在しないんですよ。たぶん長編の小説みたいになっちゃうんでしょう。で、結局なんだったのという余韻だけ残して去っていく(笑)。
このマンガの中にもいちおう「文系の人々」が登場しますが、やっぱり描写は甘いと思います。てか、単なる理系の敵として表現されてますね。こんなにスマートじゃないっすよ。文系のヲタっていうのが、実は一番たちが悪いっていうか、使えませんからね(笑)。
ま、一つ言えることは、世の中は案外理系のオタクが回しているということです。文系のオタクは世界のことなんか考えていませんから。理系が世界共通の、あるいは宇宙共通の(しかし、もしかすると脳内宇宙に限ったことかもしれないが…)「コト」にこだわるというのは、それなりの社会性だと思いますからね。執着する自己の世界観が、社会の公約数と一致しているんです。
文系は辛いですよ。自己のモヤモヤにこだわればこだわるほど、それが現実社会から離れていってしまうように感じる。実際はそのモヤモヤの方に、世界の本質があると信じていますが…最大公倍数って、たぶんあるよなあ。
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コメント
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投稿: TKJ | 2008.10.26 21:42
は〜い。
理系の人、大笑いしました。
TKJさんは理系ですよね。
私は理系崩れなので、ちょっとした憧れがあるんですよ。
来世は絶対理系って決めてます。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.10.26 21:48