『詩のボクシング 山梨大会 in つる 2008』
優勝した くりこ さん↓
ここのところ何かと縁のある「詩のボクシング」。今日は初めて生観戦いたしました。
今回の山梨大会は、今2年生の現役生徒が出場していることもあって、生徒10人ほどを連れて都留市のうぐいすホールに応援に行きました。
と、会場に着いてビックリ。彼以外にも卒業生が2名決勝に残っていました。16名中3名が教え子ということですから、かなりの割合ですね。なんなとく嬉しいことです。また、運営の方や応援団にも教え子が何人もいて、なんとも楽しい雰囲気になりました。
さて、結果から申しますと、現役生は1回戦敗退。組織票で敗者復活戦に回りましたが、ネタをちゃんと仕込んでなかった上に、くじでOBと当たるというある意味最悪の事態。結果としてOBくんの用意したネタを一つムダに消費させてしまい、そのためそのOBくんは決勝まで進出したのにもかかわらず、準決勝までに持ちネタが尽きてしまい、決勝は2Rとも即興に近い厳しい闘いになってしまいました。ごめん!
まあ、正直言いますと、全国レベルで考えて、優勝はくりこさんしかないと思っていました。彼女だけは、本当に正統的な「詩」を作って、それを正統的に朗読してくれました。そして、その言葉の響くレベルが非常に高かった。私も久々に心に響く詩を聴かせてもらいましたよ。全国でもかなり行けるのではないでしょうか。
現役の教え子については、私ともども夏休みにあのカリスマチャンピオン木村恵美さんから直接御指導を受けたにも関わらず、本人の怠慢のため不甲斐ない結果に終わってしまいました。「ないものは出ない」…雰囲気だけではダメですね。日常からもっと言葉と格闘し、自分と格闘しなければ。言葉を弄んでいるだけではいけない。ま、彼もとてもいいものを持っているので、来年のリベンジに期待しましょう。
準優勝だった卒業生は、とても「詩」なんていうキャラとは言えない生徒でしたが、もともと彼の一家はユーモアや言葉のセンスを持っていたので、なるほどこういう機会にそれを開花させられたのは非常に良かったのではないでしょうか。よく頑張りました。
難しいのは、やっぱり「詩」かどうかということでしょうね。昨年の全国チャンピオンについて、こちらに少し苦言を呈しましたが、単なるつぶやきや日記の音読やアジテーションや説教になってしまうと辛い。朗読とは、私にとっては音楽の演奏に相当するものなので、メチャクチャな日常的な音の連なりでは存在の意味をなしません。そういう意味で、もう一人の教え子くんも頑張ったけど、日常の言語社会のルールの方に引っ張られちゃって負けてしまいました。でも、彼もまた、高校在学中には現れていなかった、私の知らなかった一面を見せてくれました。強い意志や繊細な感性。大人になると失ってしまうそういうものを、まだしっかり持っていて、感動してしまった。
いずれにせよ、言葉と向き合うということは、すなわち自分と向き合うことであり、ある意味とってもしんどいことですよね。これは私自身のポリシーの問題なので、皆さんとは共有できない感覚かもしれませんけど、私は、日々のしんどさを言葉にするのは詩ではないと思っています。言葉と向き合うしんどさは詩だけれども。そういう意味で、「痛い」発表になってしまう「詩もどき」が、どうしても多くなってしまう。特に若者はね。それはそれで意味があるし、それを消費してくれる聴き手もいます。でも、そこにある意味救いを求めて安住してしまうと、それは「詩」には成長しないと思いました。
さて、そんな難しい論議はさておきまして、もっと軽いミーハーな自分を露呈いたしますとですね、今日の私の中での優勝者は…ジャーン!審査員の山崎バニラさんでした!
いや、まじで感激しましたよ。テレビで観る彼女もとってもステキで、実は密かにファンだったんですが、生バニラはホント素晴らしかった!対戦が始まる前に、アトラクションということで、彼女の活弁を初めて聴いたんですけど、すごい芸でした。今回はバスター・キートンのスラップスティック・コメディ『キートンの隣同士』を、ピアノを弾きながら(小さな太鼓も使ってました)の活弁。本当に素晴らしかった。最初はバニラさんのすごさに心奪われていましたが、最後にはキートンの世界に引き込まれている自分が…。これって活弁の理想像でしょう。私も時々楽器を使っての朗読に参加していますが、非常に勉強になりました。
大会終了後、生徒たちのために快く時間を割いてくれまして、私もちゃっかりサインなどいただいてまいりました。ありがとうございました!この人は賢い。そして、努力家。そして、人柄がよろしい。真摯で前向き。とっても魅力的な女性でした。
あと、友部正人さんのライヴも良かったなあ。私たちの世代からするとまさにカリスマ・フォーク詩人ですよね。和製ボブ・ディランです。お笑い芸人あきげんさんたちのパフォーマンスも楽しかったし、楠かつのりさんともお話できましたので、私にとりましては本当に夢のような時間でありました。これもひとえに教え子諸君、そして木村さん、その他の皆さんのおかげです。ご縁というのは面白いものですね。
いよいよ、来年は私も出陣かな。ウズウズしております。日程が合いますように。
| 固定リンク
「芸能・アイドル」カテゴリの記事
- 『送別歌』 宝田明 (ユニコ舎)(2021.02.14)
- 『俺の家の話 第1話』 宮藤官九郎脚本作品 (TBS)(2021.01.22)
- 今こそ!俺たちの東京スポーツ最強伝説(2021.01.17)
- LUCY(루시) 『Snooze (선잠)』(2020.12.30)
- 追悼 中村泰士さん なかにし礼さん(2020.12.24)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 『ゲンロン戦記ー「知の観客」をつくる』 東浩紀 (中公新書ラクレ)(2021.03.01)
- 『曼荼羅』 石堂淑朗 脚本・実相寺昭雄 監督・冬木透 音楽作品(2021.02.28)
- 『波の盆』 倉本聰 脚本・実相寺昭雄 監督・武満徹 音楽・笠智衆 主演作品(2021.02.27)
- いろいろな「二・二六」(2021.02.26)
- 『ユメ十夜』実相寺昭雄・松尾スズキ・天野喜孝ほか(2021.02.22)
「教育」カテゴリの記事
- いろいろな「二・二六」(2021.02.26)
- (マイナスな)コトタマは恐ろしい…(2021.02.25)
- 保守とリベラル、全ての多様性を奪ったSNSの功と罪【東浩紀×ホリエモン】(2021.02.24)
- 天覧授業(2021.02.23)
- 『ユメ十夜』実相寺昭雄・松尾スズキ・天野喜孝ほか(2021.02.22)
「文学・言語」カテゴリの記事
- 保守とリベラル、全ての多様性を奪ったSNSの功と罪【東浩紀×ホリエモン】(2021.02.24)
- 『ユメ十夜』実相寺昭雄・松尾スズキ・天野喜孝ほか(2021.02.22)
- 『放浪記』 成瀬巳喜男監督作品(2021.02.15)
- これからは音声配信の時代!?(2021.02.05)
- (続)これからは音声配信の時代!?(2021.02.06)
コメント
去年は知人が出場していて見に行きましたが、
今年は仕事があり見にいけませんでした。
「朗読する」となると、言葉の雰囲気が出ますよね。
声によって味付けするというか…。
次回出場なさるのなら応援にあがります!(^-^)v
投稿: ユキ | 2008.10.24 21:47
去年はあの方が優勝でしたね。
今年もなかなか面白かったですよ。
そうだ!ユキねえさん、詩人じゃないっすか。
他人事じゃないでしょ。
来年は対決したりして(笑)。
それにしても山崎バニラさん、最高でした。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.10.24 22:36