« 『もの・こと・ことば』 廣松渉 (勁草書房) | トップページ | 『ビートルズのすべて』 パトリック・モンゴメリー監督作品 (1985年 NHK) »

2008.09.15

『日本ナンダコリャこれくしょん 今度は俳句だ!』&『TOKYO REAL FASHION 2008秋冬』(NHK BShi)

080915_2 京でのオーケストラの練習から帰ってきまして、この二つの番組をゆっくり鑑賞。面白かったなあ。
 春放送された『日本美ナンダコリャこれくしょん』が非常に面白かったので、今回も期待していましたが、はっきり言って期待以上でした。
 この「持ち寄り句会」っていいですねえ。他人の作品を持ち寄って、それぞれプレゼンテーションする。そして投票。点数をつけて優劣を競う。
 私なんかこういう句会があったらすぐに参加しますよ。このブログをご覧になればわかるとおり、私は自分で作品を作るのはもう数十年前にやめまして、今では他人様のいろんな作品を鑑賞して、解釈して、こじつけて、勝手に意味を与えて、ついでにいじって、こうしておススメばかりしています。毎日勝手にプレゼンしてるようなもんですからね(笑)。
 いやあ、それにしても、それぞれの句もたしかに「ナンダコリャ」でしたけれど、またプレゼンも面白かった。プレゼンターもかなり「ナンダコリャ」でしたねえ。
 20の句、全部良かったけどなあ、優勝は「露人ワシコフ叫びて柘榴打ち落す」と「戦争が廊下に立ってゐた」か…。個人的には…いや、やめとこ。長くなるので。
0809152_3 俳句って本当に面白いですね。庶民の芸術、すなわち民芸であり、シンプルかつ縛りの多い中で、いかに新鮮で、しかし共感を得る作品を作るか。枠の中でいかに暴れるか。あるいは枠をいかに壊して、しかし誉められるか。プロレスみたいなもんだな。虚構の中の日常というか。日常の中の虚構というか。
 昨日までの例の「機械語」も、とんでもない言葉の組み合わせで私を驚かせ興奮させましたけど、なんか違うよなあ…。やっぱり昨日も書いた「自己愛」「自意識」が、機械にはないんだよなあ。すなわち、俳人は皆哲学者なんですね。俳句自体もいいけど、それを作る自分であったり、それを理解する自分に酔っている部分がある。いいですね。本当の哲学者の難解さより、ずっと良心的ですから。
 ううむ、今日の俳句たちもまた、あのExicite翻訳サイトに放り込みたい欲求(煩悩)が…いや、やめとこ…いや、あとでナイショでやろう(笑)。
 それにしても、金子兜太宗匠、この方こそ「ナンダコリャ」ですね。89歳とは思えないお元気さと、面白さ。面白さを競っていた感のあるプレゼンターを寄せつけない面白さでありました。最高。
15pic_r さて、この番組が終わってしばらくしましたら、今度は『TOKYO REAL FASHION 2008秋冬』が始まりました。東京ガールズコレクションをたっぷり紹介する番組。これも録画予約している私って…。
 そう、おととし『東京カワイイ★ウォーズ』を観てから結構興味がありましてね。いや、これはですね、自分の世界からはかけ離れていますし、リアルクローズ自体にはそれほど興味はありませんよ。でも、「カワイイ」という言葉と心性は私の研究対象ですので、まあ勉強のために録画したというわけです。あと、生徒で観たいっていうのが必ずいるので、彼女たちに提供するためもある。どうせなら最先端を勉強しろ!と。
 さて、私、この番組を観ていてですね、さっきの番組の影響もあってか、頭の中でリアルクローズと俳句がなぜかぴったり重なって感じられたんです(ほら、またこじつけしてる…笑)。
 いや、まじで。なんというかなあ、決して高尚な、あるいは脱俗的なものではない。日常の中の身近な言葉や服などをいかに組み合わせるか。そういう感じが似てるんですよ。これって、日本の得意なやり方じゃないですか。ああ、日本文化してるなあって。
 その組み合わせには、やはりルールがちゃんとある。で、そのルールの中でいかに遊べるか。または、ルールを破るか。いずれにしても、「痛い」ことになったらおしまいなんです。そのギリギリ感が似ている。意外な組み合わせの中に見つける「萌え」や「カワイイ」。
 実は、こういう日常のリアレンジ、リコンストラクションが一番難しいんですよ。それを日本人は、老いも若きもみんなやっちゃう。特別な勉強や訓練や経験を積まずとも、その瞬間のひらめきでやっちゃう。プロとアマの、玄人と素人の境界がないんですよね。これってやっぱり世界的に見てもすごいことですよ。だって、俳句にせよ、リアルクローズにせよ、もう世界では圧倒的に芸術視されてますよ。
 そして、この番組では、それぞれのファッションについて、わかりやすい解説(実は全然わからないんですけど…)がついていて、それがまるで持ち寄り句会のようだった。投票とかはしませんが、観る人それぞれがそれぞれ採点してるわけでしょう。そっくりですよ。
 そして、俳句にしても、リアルクローズにしても、こういうプレゼンテーションを見てですね、私たち庶民は、それに憧れるんじゃなくて、「あっ、オレも(ワタシも)やってみよう!」って思うんですよね。それがまた日本文化の活性化につながるんです。
 うむ。日本の庶民力、アマチュア力、シロウト根性ってすごいですね。やっぱり日本には本来「芸術」なんて存在しないんだよな…という当たり前のことを確認した夜でありました。ワタシも究極のアマチュアとして、いろいろ頑張ろ。まずは目先のオケの練習と、やばい原稿の締切りが…。

不二草紙に戻る

|

« 『もの・こと・ことば』 廣松渉 (勁草書房) | トップページ | 『ビートルズのすべて』 パトリック・モンゴメリー監督作品 (1985年 NHK) »

ファッション・アクセサリ」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

文化・芸術」カテゴリの記事

文学・言語」カテゴリの記事

モノ・コト論」カテゴリの記事

コメント

初めまして。すみませんが、「日本ナンダコリャこれくしょん 今度は俳句だ!」を録画なさっておいででしたら、見たいのですが。NHKに問い合わせてもダメでした。お返事いただけたら幸いです。

投稿: たかみ | 2009.09.30 16:14

たかみさん、コメントありがとうございます。
探してメールします。
しばしお待ちを。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.10.01 08:25

じっくり見ました。本当に面白くって何度も大笑いしました。授業でも部活でも活用できそうな番組企画ですね。今度生徒とやってみようかしら。ありがとうございました。拝

投稿: たかみ | 2009.10.14 09:47

たかみさん、どうもです。
あの面白さを共有できてなによりです。
ぜひやってみてください。
俳句に限らず、プレゼンの練習は楽しいですよ!

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.10.15 09:19

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『日本ナンダコリャこれくしょん 今度は俳句だ!』&『TOKYO REAL FASHION 2008秋冬』(NHK BShi):

« 『もの・こと・ことば』 廣松渉 (勁草書房) | トップページ | 『ビートルズのすべて』 パトリック・モンゴメリー監督作品 (1985年 NHK) »