10cc 『I'm Not In Love』
以前こちらで少し(かなり)ふざけて紹介した10ccの「アイム・ノット・イン・ラヴ」。このとんでもない神曲誕生の秘密に迫る、BS-iの「SONG TO SOUL~永遠の一曲~」の再放送を観ました。ものすごく面白くエキサイティングで、時も忘れて引き込まれながら、「うわぁ」とか「なるほど」とか「どぇ〜」とか、たぶん声を上げていたと思います。
この「アイム・ノット・イン・ラブ」は1975年の発表ですから、もう33年も前の曲なんですね。とてもそんなふうに聞こえません。後にも先にもこんな曲はないでしょうね。おそらく私自身にとっても、あらゆる音楽の中で最も好きな曲の一つであり、最も多く聴いてきた曲でもあるでしょう。
まずは皆さんも改めて聴いてみて下さい。
う〜む、奇跡的な音楽だ。いったいどういう発想でこういう曲が生まれるのか。本当に私は30年以上不思議に思っていたんです。コード進行、メロディー、アレンジ、歌詞…。その秘密の一端が今夜明かされました。
やはりこの曲の裏には、他者との「縁」と奇跡的な「天啓」があったのですね。作った本人たちも驚くような「とんでもない曲」ができてしまったと。「怪物(monster)」が生まれてしまったと。
その秘密を一つ一つ書くのは無理ですが、もし興味のある方はこのサイトをご覧下さい。ほとんど番組の内容と同じことが述べられています(英語ですが)。
番組内でエリック・スチュワートがまとめたところによりますと、ポイントは次の3点だそうです。
1 歌詞が逆説的に愛を表現している点
2 バッキングが「声」である点
3 テープループを使った点
この曲を聴いて多くの天才ミュージシャンから電話がかかってきたと言います。右の映像でエリック・スチュワートが挙げているだけでも、ロイ・ウッド、エルトン・ジョン・ポール・マッカートニー…彼らが口に揃えて「自分が作りたかった」と言ったとか。す、すごすぎる…。
エリック自身も「イマジン」「イエスタデー」「ユア・ソング」などと自作を並べて、「宝石」だと言っています。「あれは一度きりのことなんだ」と。やっぱり奇跡だったのですね。
で、私は知らなかったのですが、あの曲、もともとはサンバっぽいアレンジを施されていたんですね。今回、エリックが再現したそのラテン・ヴァージョンがなかなか良かったので、特別にmp3を置いておきます。
I'm Not In Love ラテン・ヴァージョン
それにしても、あのテープループ(メロトロンではない)の「声」はいいなあ。デジタルでは絶対に出せない。番組で、メンバーが長〜いテープをみんなで持って張って再生した様子が語られていました。ものすごくアナログな、人間的な作業だったようです。そして、失敗が許されない一回性。現代の機器から生まれない「心」がそこにありますね。スタジオ・ワークもまたライヴだったんだなあ、あの時代は。
あと、あのエレクトリック・ピアノの音ね。ムーンライダーズの鈴木慶一もあれを再現しようと頑張ったことを回顧してました。Rhodesでしょうね。あれこそデジタルでは出せない音です。同番組で以前紹介されたスティーヴィー・ワンダーも愛用していました。なぜかサンプリング音源だと今一つあの味が出ないんだよなあ…1台買おうかな。
なお、10ccというバンド名の由来、やっぱりあの説はガセでしたね。
Amazon オリジナル・サウンドトラック
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 『大鹿村騒動記』 阪本順治 監督作品(2025.05.17)
- 『砂の小舟』 丹波哲郎 監督作品(2025.05.08)
- 追悼 大宮エリーさん(2025.04.28)
- 『新幹線大爆破』 樋口真嗣 監督作品(2025.04.23)
- 『アルプススタンドのはしの方』 城定秀夫 監督作品(2025.04.01)
「音楽」カテゴリの記事
- AIで創る「新しいバロック音楽」(2025.05.14)
- 古文訳J-POP(有隣堂しか知らない世界)(2025.05.12)
- 『砂の小舟』 丹波哲郎 監督作品(2025.05.08)
- 『Baby, I Love You』by Suno AI v4.5(2025.05.07)
- 『Tokyo Jazz』by Suno AI v4.5(2025.05.04)
コメント
はじめまして
ネットの海を漂ってなんとなく流れ着いた流れ藻んです
私も この曲が大好きで それもむか~しテレビの短い番組で流れていてその時とっても沁みたのが思い出されます
たしか日立提供で 海の映像だったと
やっぱり普通の生まれ方ではない曲だったのですね
投稿: cantama | 2008.09.05 09:55
cantamaさま,はじめまして。
コメントありがとうございました。
いやあ、時代を超えるこの素晴らしい音楽を共有できるのは、本当に幸せなことです。
こうしたひょんなご縁が生まれるのも、あの曲のおかげですね。
ありがたや、ありがたや。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.09.05 18:07
大変お久しぶりです。
もう死ぬほど好きなエリックを、TVで見ることができて興奮しています。(先週から)
内容はファンとしましては知っていることもありましたが、おっしゃる通り引き込まれっぱなしの1時間でした。
とても良くできた番組だと感心しています。
あのインタビューは8月1日にイギリスとフランスで行われたそうです。
TV業界のことは知りませんが、素早い編集だったのでしょうかね。
投稿: あんりまー | 2008.09.05 23:00
あんりまーさん、お元気でしたか?
私は相変わらずです。
いやあ、いい番組でしたね。
私は初めて知ることばかりで、すっかり興奮してしまいました。
へえ〜、ホントつい最近のインタビューだったんですね。
あんりまーさんも、
最新のエリック様が見れてさぞ嬉しかったことでしょう。
なんか、まだまだ現役っていう感じでしたね。
実にかっこよく歳を取っておられました。
それにしても、ホントにすごい曲ですわ…。
そして、すごいバンドですねえ。
改めて感じ入りました。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.09.06 11:37
ありがとうございます。蘊恥庵庵主さまもお変わりないようでなによりです。
何とか元気にしていましが、ここ2週間ほど汗疹なんぞにやられてしまい、えらい目にあいました(笑)
半世紀も生きてるとこのようなことでも、過剰に反応してしまうのかしら。
実はついこの間、前にも書いた?26年も見続けたTVが遂にだめになり、地デジ対応TVを買ったところだったのです。
ですから奇跡のエリック様とのご対面でした(笑)
本当に素晴らしいバンドですね。
30数年前に偶然買ったアルバムから、当時の私はそこまで感じませんでしたが。。。
さらに月日がこの曲やバンドをどんどん大きくしたのでしょうか。
投稿: あんりまー | 2008.09.06 22:56
あんりまー様、こんにちは。
なるほど奇跡的な再会(?)だったんですね。
これも運命でしょう。
たしかに彼らの音楽は今聴いても本当に新鮮。
全く古びません。
最近は彼らの影響を強く受けた日本のバンドを聴く機会も多く、
あらためて彼らの偉大さを感じているところです。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.09.08 10:24