サザエさんのオープニングの謎
音楽祭二日目。朝からフリーコンサートの調整と全体合奏のパート譜作り。今年の全体合奏はヴィヴァルディのマニフィカート。この曲は弾いたことも聴いたこともないので楽しみです。
さて、作業の合間にいろいろなレッスン会場をのぞいたり、ロビーに展示してあるチェンバロやクラヴィコードをちょろっと弾いてみたりしまして、ふと思い出したことがありましたので、書いておきます。また話がとんでもない方向に行きますが、気にしないで下さい(笑)。
古楽をやっていますと、いわゆるピッチとかチューニングとかがほとんど無限に多様であることを再認識します。つまり、今どき、普通の楽器(たとえばピアノ)の調律と言えば、A=440Hzで平均率というのが一般的でしょう。ある意味それ以外を許さないとも言えます。これってとっても暴力的だと思うんですよね。ピアノの鍵盤のサイズなんかもそうです。なんであれが標準なんだ?と、古楽器を触ったことがある人は当然感じることでしょう。そういうのを私たちは疑問にも思わず、あまりに無批判、無反省に受け入れてしまっています。そういう意味で暴力的だというんです。
バロック時代では、国により地方により、ピッチはあまりにも多様です。半音や全音違うなんてのは当り前、そこに設置されているパイプオルガンに合わせたりする必要もありましたし、固定ラみたいな発想ってあんまりないんです。だから、ある意味私のように絶対音感がない方が助かる。相対音感だけあった方が便利です。混乱しなくてすみます。
もっと当たり前に多様でいいではないか。あるいは、楽器の都合にこっちが合わせる、でも全然問題ないじゃないか、とか、そういうふうなことを考えていて、ふと思い出したのが、サザエさんのオープニングです(笑)。
皆さんも当然、あの曲を耳にしたことがおありでしょう。さすがに知らないという人はいない。ものすごいスタンダード・ナンバーです。あっそうそう、私なんかこちらでロック・ヴァージョンにして歌ってますよ。バカみたいでしょ(笑)。でも、そんなことをしてみたいと思うくらいスタンダードなわけです、あの曲は。
私はあの編曲ではですね、イ短調で歌っております。もちろんA=440の平均率です。で、原曲はと言いますと、えっと…えっと…えええぇぇぇ…ん?これは…?そう、こちらに懐かしい古いヴァージョン(東芝一社提供時代)のオープニングの映像がありますので、確認してみましょう。
う〜む、これは微妙ですね。嬰ハ長調っぽいけど、A=440のキーボードで音をとってみると、微妙に合わない。嬰ハよりちょっと高いんですね。
それで思ったんです。これって、もしかしてバロック・チューニングなんじゃないかと。A=421くらいのニ長調なんじゃないでしょうか。バッハさんはこれを聴けば、D-durって答えますよ。
バロック風の半音下げチューニングは、現代でもたとえばbump of chickenなんかもやってますね。弦楽器(ギターやベース)の響きが独特になります。ヴァン・ヘイレンもたしか半音下げですね。
で、で、それはまあいいとして、皆さん、気になっていませんでしたか?そう、このサザエさんのオープニング曲、エンディングに入った途端にピッチが下がりますよね。先ほどのYouTubeでの古いヴァージョンはもちろん、今も全く変わらず、エンディングの「ジャカジャン、ジャカジャン…」のところから、微妙にピッチが下がります。ニ長調だとしますと、ここでA=415くらいになってますよね。つまり、6Hzくらい(測定したわけでなく感覚的にですが)下がっているんですよ。
これは気になる。気になり始めたのはたぶん中学生の時くらいからだと思います。つまり、以来四半世紀くらい気になってるんです。
あれって、おそらくテープをつないだ時に、回転数が微妙に違っていて、ああいうことになったと思うんですが(昔なら充分あり得る…テンポも下がっているようですから)、現代のデジタル技術をもってすれば、あれを調整するのは私でもできます。しかし、それをあえてしないということは、あの不自然さがあまりに堂々と何十年もまかり通ってきたので、もうそれはそれで伝統というか、自然?になってしまっており、サザエさんが歳を取らないのと同じく、そこにツッコミを入れることがとっても野暮なことになってしまっているんじゃないでしょうか。つまり、私は野暮であると(笑)。
だいいち、みんな気になってるんでしょうか。どうなんでしょう。私はこの曲をカバーする時には、あのピッチ・ダウンの感じもちゃんと完璧にコピーしようと思っています。
たしかに、ある日突然あれが修正されたら、それはそれで寂しいし、それこそ不自然に感じるのかもしれませんね。
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コメント
前略 蘊恥庵御亭主 様
長旅での運転 御疲れ様でございました。
【サザエさん】様等・・・御長寿番組論考
①御長寿番組には粗筋に変節がない。
②主題歌が変わらない。
③声優・俳優が変わらない。(体調や高齢化を除く)
④出演者の年齢や時代背景に変化がない。
⑤(愚か者)(道化役)(笑い)が必ず用意されている。
⑥家族で見れるよう歌劇× 過激な表現はない。
⑦御当地(名所・旧跡)を大切にしている。
⑧役柄が皆 大袈裟で極(き)め台詞がある。
⑨主人公自身が恐ろしく健康で御長寿である。
⑩政治・宗教・人種の表現の色合いが少ない。
これは人生にも当て嵌(は)まるのかも・・・
しれません。笑
ぶれずに・・・無理・無駄・斑を抑える。
無理・無駄・斑ばかりの愚僧は・・・・
さぞかし短命でありましょう。笑
合唱おじさん 拝
投稿: 合唱おじさん | 2008.08.18 18:02
テープの回転ピッチ説に一票です。
なんか凄みがあるんですよね、あのオープニング。
脱線話を一つ。
森進一のナンバー「襟裳岬」の作者はあの吉田拓郎なのですが、イントロのトランペットの第1音がもの凄く長くて印象的ですが、長すぎる気も。実は元々テンポの速い曲だったそうで、森に提供する際に、演歌らしくゆっくりしたアレンジにしたのが原因だそうです。
投稿: LUKE | 2008.08.18 18:25
合唱おじさん様、こんばんは。
お返事が遅れましてすみません。忙しくて…。
なるほど、とってもよくわかる分析です。
やっぱり揺れない動じないスタイルって大切ですね。
私もいっつもフラフラしてますから、すぐ消えますよ。
LUKEさん、お久しぶりです。
襟裳岬の裏話、面白いですね。知りませんでした。
改めて聴いてみましたが、たしかにあれは長いですねえ。
吉田拓郎ヴァージョンはいかにもフォークっぽいテンポ。
どちらも捨てがたいなあ。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.08.21 21:50
僕も気になっていたので調べていたら、同じように思っていた人が沢山いて驚きました。
前のピッチのものがありましたので、貼っておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=TTH6En5wWnQ
投稿: 店長 | 2009.11.15 21:11
店長さん、ありがとうございます!
気になりますよねえ…。
でも、正しいピッチのものを聴いたら、なんか不自然に聞こえてしまった(笑)。
面白いものですね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.11.16 21:48