『ヒロシマ ナガサキ~白い光 黒い雨 あの夏の記憶~』 スティーヴン・オカザキ監督作品
White Light, Black Rain: The Destruction of Hiroshima and Nagasaki
広島原爆の日。録画してあったこのドキュメンタリー映画を観ました。カナダで催されたバンフテレビ祭でグランプリとNHK賞を受賞した作品です。
ううう…言葉がありません。辛くて辛くてしかたありません。しかし、私の辛さが彼らを救うというわけでもなく、さらに辛くなってしまう…。
今までも原爆にまつわる様々な作品に接してきましたが、これが一番心に突き刺さりました。
アカデミー賞受賞作家であるS・オカザキさんが、広島・長崎の被爆者や、原爆の開発、投下に関わったアメリカ人を徹底的にインタビューして、被爆の実態を伝えようとしたのがこの作品です。彼が実際に会って話を聞いた人物は、実に500人に及ぶといいます。
S・オカザキさんは日系3世。その微妙な立場がこの作品を公平かつ客観的にしていると感じました。もちろん、これはあくまで「作品」であり、またあくまで生き残った方の言葉でありますから、表現しきれていないものも無数にありますでしょう。しかし、それらの重い存在をしっかり感じさせてくれるには充分な作品であると思いました。
被爆直後の映像や、今も被爆者の体に残る生々しい原爆の傷跡は、正直直視できないものでした。しかし、それもやはりあくまでほんの一部であり、彼らの心の傷、そして戦後も彼らを苦しめ続けた原爆病など、私たちが知らないこと、知らされていないこと、知ろうとしないことは、きっと無数にあるのでしょう。
作品の冒頭、渋谷の若者たちが「1945年8月6日」に何があったか全く知らない様子が紹介されます。ウチの学校の生徒たちも、はっきり言ってそういう調子です。それがとんでもなく悪いことなのか、彼らを責めるべきなのかどうかは、これは難しい問題です。歴史や記憶というものは、当然そういう運命のものであり、それを「語り継ぐ」ことの難しさ、あるいはその「語り継ぐ」ことの中に生じるいろいろな立場の感情や意図の危険も理解できます。しかし、今日は思いましたね、無数の「語り」が集まれば、いつか真理に近づけるんではないかと。事実や真実に到達はできないけれど、人間としての真理には近づけるのではないかと。断言はもちろんできませんが、そんな気がしました。
番組では、作品終了後、アメリカの高校生たちの感想も紹介されていました。彼らもほとんど学校で広島・長崎を教わっていません。ずいぶんとショックを受けているようでした。日本人の高校生にも近いうちに見せようと思います。人間の、それも自分たちのすぐ近くの世代の、身近な人間たちが犯した過ちを知ることは、やはり知らないことよりも意味があると思います。
核兵器による攻撃を世界で唯一受けてしまった国、それも2度も受けてしまった国、日本。核兵器を2回も使ってしまったアメリカ。それもたった63年前の話です。そして、それを忘れてしまっている両国。私たち。現在、世界には広島型原子爆弾の40万個分に相当する核兵器があります。
とにかくこの作品をご覧になっていない方は、ぜひご覧下さい。7日の午後2時から、BSハイビジョンで再放送されます。また、DVDも発売されています。
Amazon ヒロシマ ナガサキ
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コメント
前略 蘊恥庵御亭主 様
「戦争反対」と叫ぶことの出来る
時代は本当に「しあわせ」ですね。
愚僧の場合を考えますと・・・・
植木等様の御尊父様 植木徹誠様
のように戦時下において「戦争」
を否定できたでしょうか?。
きっと・・・怖くて何も言えない
腰抜け坊主だったことでしょう。
まったく 情けない有様です苦笑
只 ひたすら原爆犠牲者の方々へ
念仏を唱えます。合唱おじさん拝
投稿: 合唱おじさん | 2008.08.10 01:53
合唱おじさんさま、おはようございます。
私ももし当時に生きていましたら、
さっさと体制に呑み込まれてましたね、きっと。
辛いことですし、情けないことです。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.08.11 08:06