『性犯罪の心理』 作田明 (河出書房新社)
あなたは性犯罪の実態をどこまで知っているのか?
昨日につづき、「女子にはわからん」お話…かな。
大学院でこのようなことを勉強しようと企てている女子が貸してくれました。まあ、女子の立場からこういうことを研究するというのは、非常に意味のあることですが、どうしても立場上加害者を糾弾する、すなわち特定の男子の変態性、異常性欲、性的倒錯を指摘することで終わってしまうことが多いので、その点は少し注意しておきました。
つまり、昨日のプンプンが象徴していたような、「ムラムラ」や「モヤモヤ」や「ドキドキ」といったモノノケは全ての男が共有しているものであり、決して特定の犯罪者(およびその予備軍と言われる人たち)だけが持つ特性ではないということです。
これは、作田さんがこの本で強調していることでもあります。世の中は興味本位、あるいは被害者たる女性擁護の立場から、どうしても偏った見方をしてしまいがちです。特に報道による偏見の増長は、目に余るものがありますね。
誤解しないでもらいたいのですが、もちろん私は犯人たちを擁護せよと言っているのではありませんよ。そうじゃなくて、正常な男には程度の差はあれ、同様な性質が必ず備わっているということを言いたいのです。そして、それが、ブンブンのように思春期だけに限ったことではなく、おそらく男は一生そのモノノケと付き合っていかねばならないということなんです。
私はぶっちゃけ人間なので、クラスのギャルどもにも自分の恥部をさらけ出し…いやいや勘違いしないでくださいよ、自分の内面という意味です…笑、あえて本当の男の恐ろしさやお馬鹿さ、あるいは偽善性などを折々教えています。世の男性はあんまりそういうことしないでしょうね。なるべく隠すでしょう。でも、私は自信があるんですよ。ぜったいに世の男はみんな紙一重のところで生きてると。実に危なっかしい世の中だと。
おそらく、全ての男は、この本を読むと、全ての記述にドキッとするでしょう。そしてホッとするかもしれません。危ないなあ。自分もこうなりかねないなあ。紙一重だなあ。境界はすぐ近くにあるなあ。少なくとも私はそうでした。
もちろん、それは妄想や合法的代償行為の中に収まるのが普通であり、その最終ラインを越えてしまうのは確かに異常と言えます。作田さんも、そこのところをしっかり知って、そして対策を立てなければならないと力説しています。単なる厳罰化は対症療法に過ぎず、場合によっては逆効果の可能性もあるということです。私もそう思います。一部の特殊な「キモい男」が悪いのだとして片づけることによって、我々一般人のプチ変態性は隠蔽されてしまいます。それはとっても危険だと思います。
ここで取り上げられている犯罪や異常の名称を挙げてみましょうか。
痴漢・のぞき・露出症・フェティシズム・部分性愛・服装倒錯的フェティシズム・サディズム・マゾヒズム・小児性愛・強姦・強制わいせつ・ストーカー
犯罪になった結果、つまり被害者が発生した結果、こういう言葉を与えられたわけで、そうでない、つまり犯罪化していない潜在的な部分においては、こういう心理や行動は、男子にとって案外日常的なものでしょう。
では、犯罪者と私たちを分ける境界はどこにあり、そしてその境界を越えてしまう要因はなんなのか。私たちが短絡的な思考に陥らないように、作田さんは多くの実例を挙げてくれています。その実例はどれも複雑な背景を持っており、本当に単純に「あいつは特別だ」とは言いきれません。読めば読むほど、一般人、あるいは自分との境界がはっきりしなくなってしまうとも言えます。
そこなんですよね。難しいし直視しなければならないのは。この日常も、あるいは男も女も、実に不安定なところに存在している。社会や私たちは、それ自体とっても危うい存在である。日常と非日常は紙一重である。そのことを私たちは忘れがちです。
その危うい世界をなんとか保っている力がなんなのか、はっきりとは言えませんが、何かが働いてることはたしかです。そして、その何かのことも私たちは忘れがちなような気がします。そうした、私たちに潜む正と負の見えない力を意識することこそ、この世の中をギリギリのところで存続させる方法のような気もします。
それにしても難しい問題だよなあ、男としては。このモノノケたちをいかに馴致して、合法的にエネルギーを開放するか。あるいは女の合意や同意をとりつけるか。実は世の男性は、毎日そんなことばかりやっているのかもしれません。いずれにしても虚しい存在ですな。ふぅ。
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