『私は、こう考えるのだが。―言語社会学者の意見と実践』 鈴木孝夫 (人文書館)
久々に鈴木孝夫大明神の御本をまとめ読みしています。この本は、ある意味先生の専門外の話ばかりですが、まあ、御自身も書いておられるように、とにかくあらゆる分野に興味を持ち研究してきた多才で多彩なる神でいらっしゃいますし、今や言語社会学者じゃなくて孤高の「(自称)哲学者」になられているような気もしますから、これはこれでいいと思います。
初出を見ても分かる通り、それこそいろいろなところで発表された短文をまとめたものでして、話があちこちに飛びますけれど、それがまたいかにも大明神的であり、八百万の神々の言霊という感じがして、私は好きです。
ちょうど3年前になりますか、私は幸運なことに、大明神とさしでお話させていただく機会を得ました。お酒を囲んでの実に楽しい時間でした。淀みなく流れ出る鈴木孝夫節に、私の脳はドーパミンを大量放出。面白かったなあ。その時のお話もたくさんこの本には収録されています。
大明神のお考えの中心にあるのは、現在の日本が繁栄の頂点を過ぎており、あとは下るだけ、あるい下るべきだということです。私も全くそれに賛成です。この前の「幸せって、なんだっけ」でも書いたように、お金をめぐる世の中のシステムというか、人間の根本的な考え方を変えなければ、なんにも解決しないと思っています。
大明神はただ言葉だけでなく、ちゃんと実践してるから偉いんですよね。その偉大さは「人にはどれだけの物が必要か−ミニマム生活のすすめ」を読めばわかります。私なんかとてもあそこまで徹底できませんよ。世間に流されずああいうスタイルを貫くというのは、これは勇気のいることです。御本人は当然のごとく実践されていますが、私たち凡人にはそんな強さはありませんね。ちょっと笑っちゃうくらいです。
さて、この本にもそういった、ウンウンとうなづかれ、なおかつ、ちょっとクスッとしてしまう、いかにも日本の神様的な言霊が並んでいるんですけど、私の印象に残ったのは、まず、原稿料や取材への謝礼の話。あるいは入試問題の出題報告の話ですね。これらは他人事ではありませんので、面白かったし勉強になりました。
次に、大学生活と知的放浪に関するお話。知的とは言えない私ですが、かなりの放浪癖がありますんで、このお話には自信と勇気をいただきました。私も先生のように放浪の末の哲学者になりたいんですよ。
あと、最近大明神が設立し、自ら教祖となったと語る「日本語教」の信者になりたいなあと。教えはこうです。引用します。
「世界中に日本語を広めて、この美しい言語と、それに固く結びついている本来は外国との対立抗争と無縁であった文化の持つ良さを、残念にも知らずに死んでゆく可哀想な人間を、この世から一人でも少なくしたいという慈悲の気持ちに目覚めよ」
ハハハ、痛快ですね。ここまで言える人、そしてそれが許される人は、人間界にはいませんよね。さすがです。
同様に痛快だったのが、「江藤淳と私」ですね。江藤淳というより、江頭淳夫(本名)の人物像に関する実に手厳しいお話です。なんとなくですが、私の中でも神格化されていた「江藤淳」。彼がこんなにやなヤツ(笑)だったとは…。大明神もかなり怒ってます。でも、ちょっと面白かった。ここまで困った人がいるんだなと。
あと、小ネタですが、「新幹線にシートベルトを」は、私も思っていたことなので、我が意を得たり!という感じでした。
総括しますと、まさに「古今東西・硬軟聖俗なんでもござれ」ですね。そして、ユーモア。ユーモアこそが知性であると感じました。本当に愛すべき神様です。また、何かのご縁があれば、ぜひ。
Amazon 私は、こう考えるのだが。
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コメント
おお、江藤淳出ました!前にもネガティブコメントを書きましたが、彼の(私には)訳のわからない文章に、受験時代大変悩まされたものでした(トラウマ)。やったあ。今内容を思い出せなくて恐縮ですが、鈴木孝夫先生の岩波新書は興味深く読んだ記憶があります。この本もぜひ購入したいと思います。
投稿: 貧乏伯爵 | 2008.08.27 21:43
伯爵さま、どうもです。
いやはや、この大明神の江頭評は素晴らしいですよ。
思わず二度読んでしまいました。
頭がいいだけではダメですね、人間界では。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.08.28 09:44