追悼 グレート草津
今週、久々に「週刊プロレス」を買いました。藤本かずまさ氏による先日の桜庭和志敗戦に関する記事が載っていたからです。ここのところ立ち読みですませてしまうことの多かった週プロですが、今回はカミさんの望みもあり、また書店でパラッとめくってみて、藤本氏の記事に私も感じるところがあったので買うことにしました。
その他の記事もいろいろと読んでいましたら、K-1でも活躍した2代目グレート草津(草津賢治)が父親である初代グレート草津(草津正武)さんについて書いている連載記事を見つけました。そして、ああ、草津さんに一度会いに行こうかなあ、比較的近いところにいらっしゃることだし…などと思っていた矢先の訃報。ショックです。
どうも食道がんが全身に転移したようです。いかに屈強な心身の草津さんも、病魔には勝てなかったのか。66歳、まだまだお若いのに…非常に残念です。無類のお酒好きとして有名でしたが(まあプロレスラーはみんな浴びるように飲みますが)、それが食道がんの原因になってしまったのではないでしょうか。
私が国際プロレスを見ていた小学校の頃には、グレート草津さんは比較的目立たない存在となっていました。ラグビーの八幡製鐵で活躍し日本代表にまでなった男がプロレス界に転身し、一新人としてゼロからのスタートをしたのが昭和40年。力道山はすでに亡くなっており、日本プロレスが迷走を始めた時期ですね。結局翌年、実質上日プロは分裂し、草津さんは国際プロレスに移籍します。
TBSの後ろ盾を得て、国際プロレスのエースになろうかという、まさに出世試合となるべき第1回テレビ放送の日、悪夢のような事件(事故?)が起きます。鉄人ルー・テーズのベルトに挑戦した草津さんは、1ラウンドでテーズのあのバックドロップを浴び、半失神状態で戦闘不能に陥ってしまったのでした。草津さんのみならず、国際プロレスやTBSの目論見はもろくも崩れ去ってしまった…。
この伝説的な事件については、いろいろな憶測が飛び交っていました。草津さんの受け身の失敗だったのか、テーズの新人つぶしだったのか、それともブック(シナリオ)だったのか…お二人ともこの世にいなくなってしまいましたので、真相は永遠に霧の中、伝説は伝説のまま生き続けることとなりました。
その後の草津さんは、ラッシャー木村やストロング小林、阿修羅原らの後塵を拝する立場に甘んじ、いくつかのタイトルは手にしたものの、今一つ目立たぬ存在としてそのレスラー人生を閉じました。
ウチにありますDVD「不滅の国際プロレス」を改めて観てみますと、草津さんが非常にいい選手だったことが再確認されます。まず体が大きい。ラグビーで鍛えた下半身の安定感は特に素晴らしい。それを基礎として様々な大技を惜しげもなく出していきます。武骨で不器用なラッシャー木村とは好対照ですね。まあ、そのためラッシャーは金網デスマッチの方に進み、結局それが大人気になってしまうという皮肉な結果になってしまったわけですが。
草津さんはそういう意味で器用貧乏だったとも言えましょうか。なんでもできたところが逆に彼の個性を殺してしまったのかもしれません。プロレスはキャラクターが大切ですけれど、彼はある意味まっすぐすぎたのかもしれません。
あのビル・ロビンソンもグレート草津さんを高く評価していたようです。上の写真はビル・ロビンソンに指導を受けるグレート草津さん(右端)です。
ある意味日本のプロレスを静かに支えたレスラーだったとも言えますね。ご冥福をお祈り致します。また昭和が遠くなった…。
| 固定リンク
「スポーツ」カテゴリの記事
- 榮山寺のカオスとコスモス(2025.05.22)
- 完全版 『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』 小佐野景浩(2025.05.13)
- 全日本プロレス チャンピオン・カーニバル2025 後楽園ホール大会(2025.05.06)
- 「超々広角」星空観賞用双眼鏡 Super WideBino36(笠井トレーディング)(2025.04.27)
- 神田明神という混沌(2025.04.03)
「ニュース」カテゴリの記事
- 追悼 大宮エリーさん(2025.04.28)
- 福知山線脱線事故から20年(2025.04.24)
- YMOと仲小路彰(2025.03.13)
- 日向灘M7.1発生〜南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)(2024.08.08)
- オリンピックは◯◯の◯◯である!?(2024.08.07)
コメント
はじめまして、
いつも楽しく読ませて頂いています。
グレート草津さんが亡くなったんですね。たしかワールドプロレスでしたかね、豊登とサンダー杉山のタッグチームも良かったのですが、やはりグレーと草津の蹴敏な動きや高く飛ぶドロップキックは杉山の雷電ドロップなどとくらべてとてもかっこよかったですね。
当時日本テレビの全日本とともに毎週見ていました。
外人でとく覚えているのは背の高いスカイハイリーやジョージゴージエンコなどがいました。シャチ横内やグラン浜田なんていう選手も良かったですね。
またまた昭和の火が消えてしまいましたが、記憶遺産として僕らの中には残っていますね。
投稿: ぽらん | 2008.06.22 12:23
ぽらんさん、初めまして。
私の駄文を読んでくださいまして、ありがとうございます!
そして、コメントまでいただきまして…。
なかなか懐かしい(そしてマニアックな)お名前が。
特にシャチ横内とはなんとも懐かしいですねえ。
グラン浜田はバリバリ現役ですね。
この前もリアルジャパンに出てました。
すごいですねえ。
いずれにせよ、昔はプロレスに限らずすごかった…。
昨日の土方巽でもそれを痛感しました。
現代は哲学するのも難しい時代なのかも…ですね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.06.23 08:43
昔はすごかった、ということが実感しやすい時代になったのは
良いことかもしれませんよ。
投稿: 貧乏伯爵 | 2008.06.23 12:55
伯爵さま、たしかに。
すごい昔を持っていて、さらにそれをいつでも味わえる今というのも、それはそれでいいですね。
すごいという基準を、今の人にも疑似的であれ経験してもらえるわけですし。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.06.23 18:20