「飾り」と「見立て」
夕方テレビをつけましたら、セクスィー部長沢村一樹さんが「デコ軍団」をいじってました。東京カワイイ★TVスペシャルです。
カワイイはすなわち「萌え=をかし」であることは、今まで何度も書いてきましたが、現代の女の子たちが「チョーカワイイ」すなわち「いとをかし」と言う対象は、こういうデコのような過剰の美であったり、その対極にある簡素の美であったり、いろいろです。
いろいろでありますが、それらがある種の非日常性を帯びているのはたしかです。つまり普通でない時間と空間、すなわち「ハレ」につながっているんですね。そして、時間の経過とともにその時空間は日常に戻っていく、その全体的な抑揚が「Ah!ハレ=あはれ」につながっていく…というのはおいといて…とにかく過剰も不足も普通でない状況であると。
この過剰と不足の美を感受するのに必要なのが「見立て」という想像力(創造力)です。本来それでないものをそれだと見立てて遊ぶ。これは高度な文化作業です。
今日の新日曜美術館はそのお話でした。『日本の美 かざりの喜びを探る』。日本の伝統文化に見られるかざりの実例を挙げ、そこに見られる「見立て」の価値を解説するという内容でした。
どの「かざり」も面白いし、ちょっとやり過ぎでは、と思わせる過剰性が刺激的です。そうそう、以前NHKで放映された『日本美ナンダコリャこれくしょん』に通じるものがありましたね。
戦国の武将の兜なんか、どう考えてもこりゃあ実用性がないどころか、単にジャマなだけじゃないかな。こういうキッチュぎりぎりな感じもまた、デコの重要な要素でしょうね。
ダサいがカワイイになる。非実用性が(やる気という)実用性になる。つまり、見立てはその造形にとどまらず、人間の感覚や思考にまで及ぶということでしょうか。
もちろん、ムダなものを排す、いや必要なものまで排する「侘び・寂び」なんていうのも、ベクトルの方向は違えど、デコ(飾り)と言っていいと私は思います。そこにもまた「見立て」が必要となりますね。今日はそういうベクトルの飾りについては紹介はなかった…というか、やっぱり飾りの反対の概念として「侘び・寂び」という言葉を使っていましたね。そのへん、私とちょっと感覚が違うかなと。
ところで、こうした「見立て」ですが、これはネオテニー日本人の面目躍如たる特技ですよね。皆さんも小さい時は、あるもの・ないもので、いろいろと見立て遊びをしたことでしょう。私もそんなことばかりしていました。爪切りを超ハイテク宇宙船に見立てたりしてましたっけ(笑)。
今日の番組でも紹介されていました見立て人形なんかもそうですね。お皿や壺なんかの陶器がオロチになったり、スサノオになったりする。本来の目的や機能から完全に離れて、全く別の価値を与えるという遊び、これはなかなか高度な文化です。目的や機能というのは日常的な「コト」です。すなわち、人間が自分の都合で作り出した「意味」ですね。それを一端解体してしまい、そんな決まりゴトを反故にしてしまって、そしてそれを単なる「モノ」に帰してしまう。一時的にですね。そして、そこに全く違う「意味」を与えるんです。違う「カタリ」方で、違う「コト」にしてしまう。そこに非日常性が立ち現れ、「ハレ」の時間と空間が作り上げられます。それはそのままエンターテインメントになり、信仰になっていく。
そこに理屈っぽくツッコミを入れるのは野暮なことです。なんだよ、それって皿じゃないか、とか、爪切りじゃん、とか、そういうのはダメです。そうそう、今日番組を観ていてプロレスのことを思い出しましたよ。日常の解体を楽しみ、フィクションに上手にだまされる「粋」って大切ですよね。
それがですね、案外得意なのが日本人だと思うんです。深い部分でのロゴスよりも、表層の感覚で遊ぶことができるのは、子どもっぽい日本人ならではじゃないでしょうか。それが、世界的にも特異な文化を生んだのでは。
考えてみれば、今や日本の文化を代表する存在になったマンガやアニメなんかも、まさに見立ての産物です。私も含めていい大人がああいうものに没頭できるのは、やはり我々の優れた幼性によるものではないでしょうか。
話が妙な方向に行ってしまいましたね。えっと、「かざり」の話でした。とにかくですね、物質としての飾りや見立ても大切ですが、それ以上に心の飾りと見立ても重要だということです。特に不景気ですから、お金をかけない飾りや見立てを楽しまなくちゃ。私もさっそく「ないもの」「不足」「不具」を楽しもうっと。
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