「自然淘汰」は自然淘汰された(!?)
え〜!?まじで〜!?ということが起きました。いや、起きていました。いろんな意味でショックだなあ。人間は進化してるのか?それとも退化してるのか?
というのは、中間テストである大学の過去問を出したんですね。そこに語句の問題があった。読みと意味を答えなさいという問題。その中にこういう言葉があったんです。
「自然淘汰」
そしたらですねえ、なんと一人も正解がいなかったんですよ!読みと意味両方できたヤツは一人もいない。というか、意味を知っていたヤツが一人もいなかった。まあ、それを選択受験した生徒はたったの5人だったわけですが、いちおう国立大学受験を目指す連中ですよ〜。信じられん。
なんで知らねえんだよ〜!?と半ば罵倒すると、なんと逆ギレするじゃないですか。そんな言葉今まで聞いたこともない。見たこともない。習ったこともない。そんなのわかるわけないだろ!と。
さすがにそんなことないだろうと、一つ下の学年の教室で聞いたら、なんとそこでも全員知らないとのたまわるではないですか!ま、まさか、「自然淘汰」という言葉は絶滅した…?
さっそく、理科の先生に愚痴を申しましたところ、その理科の先生も落胆した表情で、「そうなんですよ。今や学校の理科では、進化は習わないので…中学では進化どころかイオンすら習わない…」とつぶやかれました。
う〜む、ウワサには聞いていたが、本当にそうなのか…。詳しく説明してもらったところ、現在中学の理科では進化は扱わない、高校の生物Iでも扱わない、選択の生物IIには進化の項はあるが、必修ではないので(入試にはほとんど出ないので)やらない生徒もいると。進化を習わず大学で生物を専攻するということもありうるわけですね。
まあ、たしかにそういう話は聞いてましたけど、ホントにそうなんだ、と実感してしまいました。それにしても、つまり学校で進化は習わずとも、「自然淘汰」という言葉は知っているだろう…と思いきや、このような結果であったわけで、これはまた違った理由で憂慮すべき事態ですよね。
進化論が学校で扱われなくなった理由はまあいろいろありますね。進化論自体が学問的に絶対ではないというのはよくわかります。ま、アメリカやその他のキリスト教国のように過激ではないにしても、やはりダーウィンの学説を疑う立場の人が相当数いるわけですから、教科書には載せるべきではないというのもわかります。
そして、「自然淘汰」という言葉が使われなくなった理由もなんとなくわかります。実は、今、進化論を説明する際にも、「natural selection」の訳は「自然淘汰」ではなく、「自然選択」というのが普通であり、もちろん教科書でもそのように…というか「自然選択論」という言葉で説明されているんですね。「selection」の意味は「良いものを選び残す」ということですから、たしかに「淘汰」より「選択」の方がいいかもしれませんね。「淘汰」は「悪いものを捨てる」という意味ですよね。選択はポジティヴな感じですが、淘汰はネガティヴなイメージがある。「淘汰される」といういわゆる「迷惑の受身」の形で使われることが多いのもうなずけるというわけです。
あと、「淘汰」という漢字が両方とも常用漢字ではないというのもあるのかな。選択だったらそういう問題もないし。
訳語としての正確性、あるいは社会性を重視すると、自然「自然淘汰」という言葉は淘汰され消えてゆくというわけですかね。なんとも皮肉なことであります。いや、これは「自然」ではなく「人為淘汰」なのかもしれないな。なんか、「自然淘汰」という言葉を日常でも使っている私たちが、淘汰されているような気すらしてくるぞ。何かの悪意が感じられる。いかんなあ…なんかものすごく不満だぞ。
ところで、なんで進化論を信じない人が多いんでしょうね。ID論とか、創造論とか、私には全く理解できません。生物に限らず、芸術や文化でさえも、全て「進化論」で説明できるじゃないですか。疑う者はポケモンを御覧なさい。ポケモンは目の前で進化してくれますよ。なんちゃって(笑)。
そうそう、今の子どもたちにとって、「進化」とは、理科の教科書のダーウィンでもなければ、社会の教科書のあの原人から現代人への進化図でもなく、ポケモンの世界の話なんですね。ははは。ところで、アメリカなどのキリスト教国では、ポケモンの進化はどのように考えられているんでしょう。やっぱり神の意思でメタモルフォーゼが起きると考えられているのかな。それとも、日本人によるインテリジェント・デザインだと考えられてるのかな。
いずれにせよ、生徒たちの様子を見て、彼らが進化しているのか退化しているのか、正直わからなくなってしまったのでありました。そして自分は…ふぅ。
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