『高円寺のレスリング・マスター 人間風車 ビル・ロビンソン自伝』 ビル・ロビンソン (エンターブレイン)
出先から帰ってきて、録画してあったサラリーマンNEOを観ましたら、また「サラリーマン体操」にプロレスネタが…。ついに馬場と鶴田の登場です。どう考えてもこれは私の趣味を考慮して番組を作ってますな(笑)。「オーッ」までやってくれました。
しかし、この前カール・ゴッチについての間違いを指摘させていただいたのと同様に、今回も一つ間違いを指摘いたします。
写真をご覧になってわかりますかね。字幕には「眠気覚ましの三冠王者 J鶴田のジャンピング・ニーバット」とありますが、これは「バット」ではなくて「パット」ですよ。NHKさん、しっかりしましょう(笑)。
さて、カール・ゴッチは「神様」ですと指摘させてもらったのに関しまして、違った意味で再び反論しているのがこの本です。帯にはこうあります。
『カール・ゴッチは決して神様などではない!』
そう、著者であるビル・ロビンソンさんは、実際に手を合わせた者として、ゴッチを神格化する日本のプロレス界(というかマスコミでしょうかね)に苦言を呈しています。たしかにゴッチは優れたシューターの一人ではあったが、彼以上のレスラーはいくらでもいると断言しています。
この本では、ゴッチだけではなく、往年の名レスラー、テーズやガニア、猪木や馬場、そして鶴田などの評価がかなり詳細に書かれています。それらは非常に興味深い内容です。結論だけ言ってしまうと、彼が最も「強い」としているのはダントツでビリー・ジョイスです。私は彼について全く知識がありませんが、とんでもないテクニックを持ったシューターだったらしい。おそらく、今の総合格闘技の試合にビリー・ジョイスやビル・ロビンソンが出たら、余裕で勝つんでしょうね。
日本人ではやはりダントツで猪木を高く評価しています。鶴田はいまいち。馬場はビジネスマン。あとは生徒扱い(笑)。
それから興味深かったのは、桜庭和志を高く評価している点ですね。それと比較して田村や高田の欠点を指摘しています。なるほど、という部分です。
そう、やっぱり桜庭なんかが、ちゃんと「プロレスラー」として、「プロレス」をやればいいんですよ。この本を読んで再びそのことを痛感しました。
この本を読みまして、私のいろいろな疑問が氷解しましたね。なぜプロレスが凋落したか。なぜ総合格闘技に違和感をおぼえるか。真のプロレスラーとはどういう人たちなのか。
つまり、ロビンソンが活躍していた時代のプロレスには、「ショー」も「ガチンコ」も全部含まれていたんですね。馬場もそういうこと言ってたじゃないですか。それが、どういうわけか、「ショー」と「ガチンコ」に分かれてしまった。それで、お互いがいがみあっている、というか全く相容れないものどうしになってしまっている。
この本を読めば、そんな二分法がいかに幼稚でプロ意識の低いものか、よ〜く分かりますよ。象徴的なのは、ロビンソンが語気を荒げて(たぶんね)不快感を表明している『「シュート」と「ワーク」』の章です。ここで、彼は「シロウトが軽々しくシュートとかワークとか言うな」というようなことを述べています。その理由は大変に奥深く、だからこそ完全に言葉になっていないような気もしますが、その理由こそが、今のプロレス界、格闘技界が見失っているものだと思いました。
去年買った国際プロレスのDVDの最後に、ビル・ロビンソンさんと宮戸優光さんによる、伝説の名勝負の一つ「ビル・ロビンソン対バーン・ガニア」の解説があったんですよ。それはそれはすごい内容でした。いかに彼らが高度な攻防を繰り広げていたか、それは単に自分が勝つための技術的な攻防だけではありません。相手を活かし、お客さんを盛り上げるための、非常に知的な攻防がそこにあるんです。
ロビンソンさんは、彼の理想とする「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」すなわちランカシャー・スタイルのプロレスリングを「フィジカル・チェス」と表現しています。そこに全てが表現されていますね。
今、ロビンソンさんは、高円寺に住み、スネークピットジャパンでコーチをしています。古き良き本当のプロレスを後世に伝えるべく、自ら手取り足取り指導をしてくれているそうです。心のプロレスラーとしては、ぜひとも一度行ってご指導いただきたい!
近いうちに訪問したいと思います。
Amazon ビル・ロビンソン自伝
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