「平左衛門」(タイヘイ丸大豆しょう油)
春はいろいろと頂き物が多い季節であります。ありがたいことです。特に発酵食品や発酵飲料が多いのが特徴であります。これはおそらくワタクシの嗜好をよくご存知の方が多いためであります。
発酵系食品や飲料や調味料がなんで旨いのか。なぜ私はそれらを好むのか。
それは、やはり「他力」だからでしょうね。漫画もやしもんが人気なのは、その「他力」感ゆえでしょう。見えざる他力のパートナーをキャラクター化したことと、その強力な「他力」が「微力」の結集によるものであるギャップ、また人間とその微なるものたちのコントラストによって、世の中の本質を表現していると思います。
そうそう、そう言えばその「もやしもん」の舞台になった東京農大の醸造科に行ってる教え子が、日本酒の醸造実習で造った酒を送ってくれましたっけ。ものすごく美味かったんですが、笑えたのは銘柄。ラベルに江戸文字で本人の名前が印刷してありました。そう言われるとなんとなく酒の味がそいつのキャラに似ていたような気がします。明るくマイルドな喉ごし(笑)。ネーミングって重要ですね。
さてさて、今日紹介するのは、発酵飲料ではなく発酵調味料です。これも頂き物であります。ごちそうさまです。
普段はもちろんキッコーマンとか使ってます。てか、それしか知らなかった。醤油はああいうものだと思ってました。たまに秋田に行くと、食卓に普通の醤油と東北醤油キーコーヒメの「味どうらく」が並んでまして、ああ地方には地方の醤油文化があるんだなあと思うくらい。あ、あと秋田と言えば「しょっつる」ね。あれは魚醤を使うらしい。
今回初めて本来の醤油を体験したという感じですね。この「平左衛門」、原材料は大豆・小麦・食塩だけです。ちなみに一般的な醤油は脱脂加工した大豆を使いますが、これは丸大豆をそのまま使っています。まあ最近の原材料イメージブーム(?)のおかげで、普及品にも丸大豆を銘打ったものが多くなりましたけどね。でも、ああいうものでも、けっこう甘味料や保存料、アミノ酸なんかが添加されています。それに比べてこの平左衛門のなんとシンプルなこと。
味はかなり濃厚な感じがします。複雑な味ではありませんが、口の中にじんわりしみ込む味わいがなかなかよろしい。私はアミノ酸調味料過敏症なんで、どうもあの作られた「旨味」というのが嫌いなんですよ。それがないだけでも、心理的にもおいしく感じます。濃厚なのにさわやかです。
もともとが醤油はあくまでも調味料なわけでして、あんまり強烈に自己主張しない方がいいですよね。この平左衛門、何にかけてもそれぞれの食材本来のおいしさを引き立ててくれます。特にシュンギクのおひたしに少しかけるのが絶品でした。
それにしても本当に発酵系食品や飲料っておいしいですよね。腐敗と発酵は原理は同じです。納豆なんかもそうですけど、一見(一嗅)腐っていると思われるものを最初に口に入れた人に敬意を表したいと思います。マイナスなものの中からプラスなものを見つける、あるいは前に書いたように他の力にまかせる、そして他者(この場合微生物)にとって快適な環境を作ることに職人魂を注ぎ込む…そんなあたりが、いかにも日本人、日本文化という感じがしていいですね。調味料もあくまで「調える」すなわち「アンサンブル」を目的とするものです。こちらの記事で書いた「きく」というのとも通底してますね。私もそういう世界の中で生きていきたいものです。
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