奇跡の救出劇に見る「日本文化」(?)
父親のiBookが起動しなくなり、もうずいぶん長く使っているのでそろそろ新しく買い替えたらどうかという話になりました。で、結果としてMacBookの一番安いヤツを買うことになったんですね。もうすぐ80になろうかという父親ですが、心身ともにある意味私より若いんですよ。MacBookを使いこなす爺さんというのもなかなかカッコいい。
さてそれで困ったのは彼が作りためた書類たちです。なんだか得体のしれない怪文書がたくさんあるようです。なんとかしてくれとの要請がありましたので、救出作戦開始です。
バックアップなんてものは取っていなかったので、内蔵ハードディスクを救出するしかありません。まあやることは簡単と言えば簡単ですよね。iBookからHDDを取り出して、外付けケースに収めるだけのことです。
ところがまずはそのHDDを取り出す作業が大変でした。今のMacはどの機種も内部へのアクセスが非常にしやすくなっていますが、ちょっと前のは案外苦労します。
いちおうネットで調べた手順でやってはみたのですが、どうにもボトムカバーがはずれません。ネジというネジをはずして、すきまにいろんなものを差し込んでみたりしても、なかなか頑固です。
私が難渋しておりますと、持ち主の親父が業を煮やしたのかやってきて、なんだか非常に手荒な作業を始めました。手にはでっかい金切り鋏をもっています。えっ?これで何するの?
と思う間もなく、おじいさんはiBookをジョキジョキ切り始めたではありませんか!(昔話みたいだな)…これは衝撃的な映像です。まじで動画でその過程をおさめておけばよかった。YouTubeにアップすれば評判になったかも(笑)。
まあ、もう使わないというのは分かりますけどね、なんだか大切に使っていたMacをこういうふうにできる感性って…。それもガハハハ笑いながらやってるぞ。こっちもつられて笑いが止まらなくなり、さらには彼のハサミを奪い取りバキバキッとやり始めてしまう始末。
むむむ、これはさっき親父と議論した南京大虐殺につながるものがあるような気もするぞ…。こういう心理状態って、怖い。
と、まああんまり難しいことは言わないようにしましょう。とにかくすごい惨状になりました。結果として無事HDDは救出されましたが、もちろんその他の部分は壊滅です。完全に死亡。
奇跡の救出劇(?)ののち、ネットで一番安いケースを注文。それがこれです。アキバなんか行けばもっと安いものもありますけど、まあ600円台ならいいでしょう。送料も同じくらいかかるんですけど、電車賃を考えれば安いもんです。
で、今日そのケースが着きましたので早速HDDを収めてウチのMacBookに接続してみましたら、無事認識されました。あの手荒な作業の中でも全くの無傷で生還したのですから、まさに奇跡の救出劇だったのでは(笑)。
しかしですねえ、人間というのはどうしてこのように「コト(データ・情報)」にこだわるんでしょうね。昨日の記事にも関連してきますけど、データ(情報)というのは、それ自体は「死体」みたいなものです。でもそれがなくなるとなると非常に不安になる。常にインデックス化して自分の管理下に置いておきたいんですね。まさに本能です。
そのために、苦楽を共にしてきた(?)、風体もカワイイiBookちゃんを、でっかいハサミでああやって切り刻んじゃうんだから、こりゃあホントに「もののあはれ」ですねえ。なんだか虚しいモノを感じました。たしかにもう使わないからいいんでしょうし、考えようによってはああやって決別することも必要なのかもしれませんが。ウチなんか決別できない、それこそMacの死体たちがたくさん陳列してありますよ。それもまた困ったものなんですけど。
データの保存にこだわるにしても、本体の保存にこだわるにしても、いずれにしてもですね、こうして「死体」にこだわるのが、ワタクシ的な言い方だと「萌え=をかし」にこだわるオタク的性質だと思うんです。データをコピーして疑似的な永遠性を得る。または、フィギュアを保管保存することによって疑似的な永遠性を得る。ある意味では虚しい行為ですね。
この前、NHKクローズアップ現代で「文化財のデジタルコピー」についてやってました。これなんかまさにオタク道極まれりといった内容で、笑っちゃうやら感心しちゃうやら、実に興味深かったんです。日に日に劣化していく(当たり前ですがね)文化財をデジタルコピーして、そのコピーを本来の場に置き、本物は別の場所で保管すると。そのうちに、コピーが商品として販売までされるようになってると。コピーしてるうちにどれが本物かわからなくなっちゃうし、コピーで満足してしまう。日本に特有な妙な文化ですよ。一概に悪いとは言えませんが、なんだかやっぱり虚しさを感じました。
このページでは、ついに人間をスキャンしてるし…(笑)。
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