『赤塚不二夫なのだ!!』 (NHKハイビジョン特集)

先月、「トキワ荘の青春」を観て、そして長谷邦夫さんの書いた「漫画に愛を叫んだ男たち」を読み、ついでと言ってはなんですが、赤塚不二夫と出口王仁三郎のコラボレーションであるこちらを読んでいましたから、今日のこのハイビジョン特集は特に面白く観ることができました。
もうとにかく内容が濃すぎて濃すぎて…。まあ赤塚自身をそのまま紹介するだけでも、それは濃くなりますよ。
古田新太によるコスプレもまあまあ笑えた。でも、バカボンのパパのコスプレは赤塚自身が一番ですね。ちなみに私も一昨年の年賀状でやりました(41歳の春ということで)。
みうらじゅん、しりあがり寿、喜国雅彦の3人の現役漫画家によるトークもなかなかでしたね。この中で話されていた、赤塚作品における平等性、すなわち天才もバカもみんな同列になってしまう、あるいは平等に差別されるということには、大きくうなずかせていただきました。
ケンカやいじめや動物虐待という、今では絶対にタブーになってしまった少年期の体験こそが、彼の(あるいはその時代の大人全ての)仕事や処世術の基礎になっているということ、これにはいろいろと考えさせられました。いちおう教育者の端くれとしてね、ちょっと考えちゃいましたよ。汚いもの残酷なものを子どもたちの世界からどんどん排除していくとどうなってしまうんでしょうか。
学者さんたちによるプロファイリングはちょっと無理があったかな。でも、その、ギャグを学問的に分析するというギャグをですね、NHKはよく理解しているのか、適度にそうしたお偉いさんを茶化して、結果として彼らを救っていました。これは素晴らしい演出だったと思いますよ。
中でも特に無理があるなと思ったのは、町田健先生の言語学的分析ですね。「これでいいのだ!」というのが相手を包み込むような表現だとおっしゃってましたが、私はそういう印象はありません。これは全肯定、完全断定の言霊であって、周囲を納得させるというより、有無を言わせない神の言葉だと思うんですね。まあ、王仁三郎の霊界物語を言語学的に分析せよというのと同じくらい無理があるでしょうね。
後半には長谷邦夫さんも登場しまして、当時のプロダクション形式による創作の様子が紹介されました。ここで感心したことは、赤塚不二夫の天才的なひらめき、そして技術はもちろんのこと、なんといっても彼自身が他者のアイデアをどんどん受け入れる柔軟性や包容力を持っているということですね。人の力を借りることによって自分の能力以上のものが発揮されると。
これはまさにブッダの悟りの境地ですね。才能が溢れているのにそこに溺れず、またそれを必要以上に信じず、そしてそこにこだわらず、ある意味狭小なプライドは捨てて他力を利用するわけです。これは無我の境地でしょう。いや実際忙しすぎてそういう形態になったとも言えますが、それでもやはり才能があればあるほどこういうことを実行するのは難しいことです。
それにしてもなあ、なんでこの時代はこんなにすごかったんでしょう。作る側も受け取る側も、そして作品もパワフルだったし、妄想力に長けてたよなあ。できれば今回タモリにも出演してもらいたかったなあ。最近のタモリは全く元気ないですから。久々にはっちゃけてもらいたかった。
赤塚さん、もう6年も意識が戻らないんですか…辛いですね。いや、それこそ夢の中で思いっきりギャグ飛ばしてるんじゃないでしょうか。あるいは出口王仁三郎と会ってるとかね(笑)。意識を失う前の最後の言葉が「あっオッパイだ!」というのが笑えると同時に泣けました…。
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