東京大学入試問題(国語)
昨日、今日と国立の二次試験が行なわれました。3年生のみんな、どうだったかなあ。私は担任する2年生のギャル8人と一緒に、先輩が受けに行っている東大の問題を早速やってみました。
以前、「心より物の時代」という記事にも書いたように、とにかく東大の国語の問題というのは素晴らしいんですよ。解いてて楽しいし、感動すらしてしまうのであります。今年の問題もなかなかの良問でありました。
2年生でも基本的に解けてしまいます。東大用の記述テクニックは教えてないので実際には正解とはなりませんが、何を書けばいいのかというのは分かります。
で、今日も出題者の意図、出題者が何を書いてほしいのか、採点基準はどこにあるのかを読み取りながら一緒に解いてみました。それが楽しいんですよ。出題者との対話ができるかどうか。
私もそれなりに模範解答を作りますが、面白いのはですね、各予備校の模範解答を比べることなんです。全然違うんですよ。問題を解いたあと、それを並べて比較するんです。そして、ツッコミを入れる。この問題ではこの予備校の答えは○点しか取れないなとか、焦って対話しきれてないなとか、こいつ落ちたなとか(笑)。それがとっても勉強になるんです。
去年の今頃メイド服着て踊ってたキャピキャピギャルどもも、なんかなあ、こういう問題解いてこういう会話ができるようになったんだなあ、としみじみする瞬間です。あっ、そうだ、来月またメイド服着て踊るとか言ってたな。元副担任の結婚式で(!)。
さて、それはいいとして、今年の現代文の問題ですけど、私が昨日書いたことと深く関連する内容でした。
第一問は宇野邦一さんの「反歴史論」から。歴史と歴史学、記憶と記述などに関する内容。まあ、よく言われる、歴史は誰かの恣意的な切り取り作業の上にあるという話ですね。つまり、ワタクシ的に言うと「言語化」「コト化」されたものであるということで、実際にはそれ以外の茫漠たる「モノ」や妄想(神話など)が無限に広がっているのが本質なわけです。
なのに人は「コト化」された歴史に縛られてしまうと。これは昨日書いた、言葉に人が縛られる(はじめに言葉ありき)と全く同じことですね。私たちはそこに安心を得ようともしますが、結果は不自由を招くことの方が多いような。
第四問は竹内敏晴さんの『思想する「からだ」』からの出題。役者の感情表現についての随筆。これも基本的に同じ話だなあと思いました。「悲しい」とか「楽しい」とか、言語で「コト化」された感情を表現するのではダメだ、「からだ」の中を満たし溢れているなにか(モノ)を表現せねば、と。
まさに言語(コトの葉)の功罪、特に罪のお話ですね。やっぱり東大でも「心より物の時代」なのかな。てか、最近の世の中のはやりなんでしょう。20世紀文化のカウンターってことで。だから私が言ってることも、まあ普通なことなんでしょうね。
そうそう、第二問の古文、第三問の漢文も、ネタがかぶってましたっけ。両方とも「夢」がポイントになってました。夢に観音やら老人やらが出てきて予言したりするんです。こういうのを読みますと、ああ昔は「うつつ」と「ゆめ」が同等だったのかな、いやもしかすると夢の方が重視されてたのかな、なんて思われます。これも考えようによっては、「コト」と「モノ」の関係につながりますよね。
21世紀はいよいよ「物語」の復権の時代なのかもしれませんね。そんなことを考えながらギャルどもとああでもない、こうでもないと言い合った一日でした。実は私の答にも、彼女たちけっこうダメ出ししたのでした(笑)。
今年の東京大学の問題をお読み(お解き)になりたい方は、こちらからどうぞ。
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