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2008.02.12

『右翼と左翼』 浅羽通明 (幻冬舎新書)

34498000 さて昨日、紀元節…いやいや建国記念の日にちなんで読んでみたこの本。結局ナンダコリャの過剰さに寄り切られ、昨日の記事の座を奪われてしまいました。ま、右も左もあの楳図かずお先生の赤と白には叶わなかったってことでしょうか(笑)。
 ところで、左は「赤」っていう感じですけど、右は何色なんですか?やっぱり緑なんでしょうかね。飛行機って右翼は赤いランプ、左翼は緑のランプですよね、たしか。
 と、冗談はさておきまして、昨日も「日本人は案外中庸が苦手」みたいなことを書きましたけど、私たちって特にまじめなことになりますと中庸のないデジタル思考になりがちですよね。私のいる教育界なんてのも、まあ形だけはまじめなところですから、すぐに「ゆとり」だ「つめこみ」だって両翼のはじっこを行ったり来たりします。えっと、今度は「つめこみ」でしたっけ。はいはいって感じです。
 で、政治はおそらく一番まじめぶらなければならないステージですから、それはついつい「右」か「左」かという二元論に陥りやすい。つまり、まじめなことは難しいので、なるべくわかりやすくする必要があるんでしょうね。そうしないと、みんながまじめなことに取り組まなくなる。取り組まなくなっちゃうよりは、あっちとこっちで行ったり来たり、あるいはケンカしてる方がいいということです。
 これはいつかも書いた「政治と文学」とか「政治の演劇性」とつながることだと思います。
 で、それらの記事でも作家や役者として評価され、またこの本でも取り上げられている小泉さんなんかも、一見「右」という感じがしながら、実際にはけっこう玉虫色だったとも言えます。格差を容認し市場主義にまかせる自由という意味では「右」ですが、官から民へという面では「左」のようにも見えます。アメリカ追随や靖国問題では「右」らしさを発揮してますが、保守的な自民党をぶっこわす改革という意味では「左」のイメージもなくもない。
 と、あれほどわかりやすい人でもこんな感じですから、たとえば自分は右なのか左なのかと問われると、私はですねえ、いちおう「ソフトな右」って言ってますけど、平和主義という面では左寄りだって言われる時もありますし、いやいや日教組の方々には完全に「右」だと思われてるし(彼らはデジタル思考の権化みたいなもんですから気にしませんが)、極右の人と論議する時は「あれ?自分って左だっけ」と思うこともしばしば、親父と喧嘩になる時は正真正銘右の人だし(笑)…てな具合で非常に難しい。
 そう、しょせん「過剰なデジタル思考」なんてものは「虚構」や「演劇」や「プロレス」や「音楽」や「ゲージツ」での話であってですね、現実の社会や政治や自分や他者はそんなに一刀両断に二分できるものじゃないんですね。そういう本来のカオスがどうしてきれいさっぱり「赤白」じゃなくて「赤緑」じゃなくて「右左」に分かれちゃったのか、世界史的にどうなのか、日本にはどういう特殊事情があったのかという、ある意味非常にわかりにくい現実を非常にわかりやすく解説してくれたのが、この本というわけです。
 今までも右と左を対比して説明する、すなわちデジタル的な解説書はいくつもありましたが、こうして一つ上の次元から虚構としての全体像を見たものって案外なかった。第一、自分たちもそういう視点から自分を見ることなく、どうしても楽でファッショナブルな(あるいはファッショな)デジタルの潮流に乗ってしまうことが多かったじゃないですか。ですから、この本は、私たちデジタル庶民にもわかりやすい、そして最終的により高度な視座を与えてくれるという意味で名著だと思います。名著なんて堅苦しい言葉はふさわしくないかも。浅羽さんGJ!!って感じかな。
 今、正直右も左も形骸化してるじゃないですか。そういう中でどうして「ネトウヨ(ネット右翼)」なんかが出てくるのか。自分もどちらかというとそういうのを面白がっている不逞の輩なんですが、まあネットという無責任な場での空いばりって感じは分かりますよ。なんとなく右翼の方が勇ましいじゃないですか。実際にはそんなことできないけれど、やれやれ〜!みたいなの。今のネトウヨには勇気は必要ないんですよ。だからそういうのを見て右傾化してるとか心配しなくていいんですよ。彼ら(私も)「たくましからず」の「不逞」ですから(笑)。
 それにしても、人間というのは、二つに分けたがりますね。「松田聖子と中森明菜」とか(笑)。あなたはどっち派?って帯に書いてありましたし。そう、つまり人間は徒党を組みたがると。で、グループを作るにはとりあえず全体を二分するしかないですよね。全体のことはグループとはいいませんし、一つしかないものをテリトリーとかカテゴリーとかジャンルとかパーティーとか言えませんからね。そして、どちらかに属し、もう一方を批判し攻撃することによって、自らのグループの結束を強化し、そして自分たちのアイデンティティーを堅固にして、自らの安全や安心を確保する。基本、我々はさびしがり屋で、自信もないのに強がり、そのくせ依存心も強い存在ですからね。
 この本でも、結論としては、そういう二元論的な思考の危険性を説いているような気がしました。私もこれからはカオスや多様性に耐えられる強さを身につけたいですね。目標はやっぱり全てを併呑した出口王仁三郎かなあ。あれは一般人には行きすぎかな。

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コメント

「右翼の正体」

右翼団体の多くは、騒音をまき散らしながら国民を威嚇して、愛国者 =「変質者、危ない人」というイメージを植え付け、

さらに日の丸や、天皇陛下のイメージを汚しながら、企業に無理難題を押し付けて金銭を要求するなどの犯罪を行っています。

(参考URL)
http://www.geocities.jp/uyoku33/

投稿: 「右翼の正体」 | 2008.08.15 18:04

右翼の正体様…(っていうのも変ですね…笑)、
コメントありがとうございます。
右翼にもいろいろいますね。
参考にさせていただきます。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.08.18 09:03

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