『日本美ナンダコリャこれくしょん』(NHK BSハイビジョン)
面白かった。たしかに「なんだこりゃ」という作品のオンパレードでした。知ってた作品が約半数かなあ。世の中にはまだまだ知らない「トンデモ」たちがたくさんいるんですね。それだけでもうれしくなりました。
今日は紀元節…いや建国記念の日ということで、なんとなくNHKは古来の日本という雰囲気の番組を多く放送しており、ワタクシとしては非常に楽しい一日でした。ここ数日体調も悪くて、そのおかげですっかりぐーたらモード。今日も一日NHKBS-hiをつけたままで本ばかり読んでました。「右翼と左翼」とかね(笑…明日にでも記事にしますか)。
で、日本の絶景とか観ながら、やっぱり日本はいいなあ、落ち着いていて簡素で謙虚で繊細で…とか思っていたら、就寝前のとどめがこれですからねえ。やりますなあ、NHK!
番組の内容は公式ホームページなどでご確認ください。『奇想天外日本にはこんな美の世界があった▽再発見されたスゴイ絵・びっくり建築・不思議な工芸』と銘打って、「過剰」の美を集めてランキングするという番組でした。
実際登場したのは、えっと全部で21もあるのか。全部紹介するのは面倒ですね(ヒマがあったらあとで全部書き出します)。有名どころでは伊藤若冲とか金閣寺とか日光東照宮とか…と書きますとそれこそコテコテな感じですけど、実際には私の知らなかったものも多く、実に興味深い内容になっていました。
あと、それぞれの撰者や番付編成者たちですね。スタジオには美術史家の山下裕二さん、サックスプレイヤーの坂田明さん、日活ロマンポルノの(!)美保純さん、そして司会としていとうせいこうさんと神田愛花アナ、ビデオで登場したのが、荒俣宏さん、假屋崎省吾さん、宇崎竜童さん、横尾忠則さん、武田双雲さん、藤森照信さん、う〜ん濃いなあ。おっと一番の「ナンダコリャ」を忘れてた。
そう、今日の過剰日本美「作品」の中で、私が横綱にランキングしたのは、ジャジャーン!
「楳図かずお」
そうです。彼自身が最高のナンダコリャ作品ですよ!彼は岸田劉生の「野童女」すなわち麗子像の一つをリコメンドしたんですけどね、それを紹介するアナタの方がずっと「ナンダコリャ!」ですよ。素晴らしい。まさに過剰の美(?)です。これを理解できず訴訟を起こしちゃう人もいるんだからなあ。野暮を理解しないなんて野暮すぎますよ。粋って野暮を否定するんじゃないんですよ。私だったら、自分の家の隣に紅白の家が建ったら喜んじゃいますけどね(笑)。
というわけで、なんだかよく分からんことになってしまいましたが、とにかく面白かった。なんていうのかな、一つの視点として、たとえば「待庵」みたいな異常な簡素さというのも、ある意味「過剰」であるということ、これは発見でした。
そういう「過剰さ」、すなわちそれは「演劇性」「工芸性」「わざとらしさ」なんかにつながっていくんだと思うんですよね。そこに現実以上の現実を見るといいますか、現実を超えた真理を見るというか、いやそんな高邁なものじゃなくて、ウソを楽しむといいますかね、そういうのが今世界で評価されているアニメとかマンガとかメイドとかヴィジュアル系とかにつながってるんでしょう。
日本人はそれを「カワイイ」とか「きもカワイイ」とか言って片づけちゃいます。つまり私の言う「をかし=萌え」でどんどん処理しちゃうんですね。外国ではそれを「芸術」にまで高めてくれる。それがまた逆輸入されて、今度は「職人芸」や「もののあはれ」にまで昇華されていく。昔からそういうパターンががありますね。
NHKさんには、ぜひこの企画をレギュラー化してもらいたいですね。「裏・美の壺」とか。まあ考えようによっては「美の壺」で紹介されてるのも、ある意味そういう「過剰さ」が生み出したものたちとも言えますね。日本って案外「中庸」がないんですね。今日読んだ「右翼と左翼」からもそんなことを感じました。面白い紀元節…いや建国記念の日でした。
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