フジファブリック 『TEENAGER』
文句なし!名盤です!これはいろんな人に聴いてもらいたいなあ。iTunesでも買えるのでぜひぜひ。既発のシングルもたくさん入ってますけど、それらが浮かないどころか、なぜか新鮮に溶け込んじゃうところがフジらしさですね。1枚目、2枚目と比べてやっぱり大人になったようなと思います。それもいい大人にね。哀愁を帯びた大人。若さをという恥ずかしさをずるずると引きずっている大人。ある意味カッコいい大人の音楽です。
昨年はなんだかんだZeppTokyoと両国国技館2回ライヴに行ってますので、ある意味今一番お気に入りのバンドということになるかもしれません。
彼らの独特の存在感や音楽性については、いろいろなところに書きましたので繰りかえしません。そうですねえ、あえて付け加えるとすれば、魅力的なリフレインのことかな。これは書き忘れていたような気がします。彼らのリフは本当に耳に残りますね。イントロだけではなく全編に織り込まれていたり、あるいはポイント、ポイントでダメ押しされたり、とにかく印象に残ります。全体には変化に富んだ予想外の展開が多いフジ節の中にあって、あれら単純かつ妖しいリフたちはまるで生き物の鼓動のように私たちに刻み込まれます。
ビートルズなんかもそうなんですが、いかにカッコいい、あるいは個性的なリフ(特にギターリフ)を作るかっていうのが、実は曲作りのポイントになってたりしますよね。そういう意味ではフジファブリックはなかなかうまいと思いますよ。少なくとも本家(?)奥田民生さんよりは(笑)。
さてさて、このアルバム、「TEENAGER」と銘打たれております。彼らはもう二十代後半に突入していると思いますが、なぜ「TEENAGER」なのか。
それはもちろん十代があまりにも「ガラスの十代」だからですよね(ってなんなんだ…笑)。おそらく誰にとっても特別な時代であり、誰もがいくつになっても自分の根っこにこれを引きずっているものです。私もそうです。かなり引きずっています。
彼らもそろそろ大人になる頃ですし、業界でもまれたりもして、それこそ社会的な存在になりつつあるわけで、十代のころをそれなりに切なく感じ始めてるんじゃないでしょうかね。
さっき「ガラスの…」って書きましたが、これは確かにうまい表現ですね。輝いていると言えば輝いている。ただし自分自身だけでは光ることができない。壊れやすく、壊れれば人を傷つける。透明で純粋かと思えばすぐに曇る。ある意味周りの枠に守られてるし、優しく取り扱われるし。案外それ自身は冷たいしなあ。で、案外長持ちして、ずっと同じ場所に固定されてる感じがするし、周りはそれなりに古びてきても、けっこうガラスって昔のままだったりしますからね。捨てるのもなんだか面倒くさそう。まあ、こういうのを青春とか言ったんでしょう、昔は。
さて、志村正彦くんが、まさにそういうガラスの十代を送ったここ富士吉田市下吉田ですが(今、ワタクシ下吉田の職場にいます)、なんとも昭和レトロ、ノスタルジーを絵に描いたような街でして(それを売りにしております)、それこそ彼がTEENAGERだった頃、私は同じ下吉田の渋いアパートで一人暮らししておりました。自らの青春を引きずりつつ、仕事がら現在進行形の十代と毎日つきあわないきゃいけない、そんな毎日に沈潜しておりました。なんとも切ない二十代(とちょこっと三十代)でしたなあ。結局自分もそうやって自分の窓ガラスにノスタルジーを感じていたんでしょう。
と、なんか四十過ぎたオジサンの独り言になってしまいましたけどね、つまりはそういうオジサン(大人)誰しもが抱えているレトロ・ガラスへの郷愁や哀愁や憧憬が、このアルバムには見事に詰まってると感じたのですよ。年甲斐もなく泣けてしまいました。あの、たしかに若さとしか言いようのない、愚かさと変態さ(笑)、内側にはじけていく無駄なパワーみたいなものへの、大人としてのオマージュとでも言うのかな。とりあえず私の心のガラスは妙に鈍く輝き、そしてビリビリと共振したのでありました。
御本人たちもおっしゃってましたが、これは十代の人にも聴いてもらいたいけど、やっぱりそれ以上の人たち、元十代の人たちにこそ聴いていただきたい。そして、「あれ、なんだっんだろう」って自分の恥ずかしいあんなことこんなことを思い出して、それらと酒でも酌み交わしながら語り合ってもらいたいですね。あっ、相手は未成年だから酒はなしか(笑〉。
志村くん、大晦日と元旦はこっちに帰ってきてたみたいですね。また吉田のうどんで年越ししたんでしょうか。いつか彼とも呑んでみたいですねえ。
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コメント
気になったので検索してみると PV を試聴出来るサイトが。
http://www.emimusic.jp/capitol/fuji/
若者の全て
Surfer King
パッション・フルーツ
↑の三曲を聴いてみました。なるほどハラハラしました。
投稿: LUKE | 2008.01.25 18:09
LUKEさん、どうもです。
ハラハラするでしょう?
YouTubeにも何本か上がってますのでご賞味ください。
シングル以外がまたいいんですけどね。
こういう音楽がある程度売れるっていうのはいいことです。
今どきの若者にも変態なのが結構いるんですね(笑)
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.01.26 07:22