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2008.01.30

『実践 学校危機管理―現場対応マニュアル』 星 幸広 (大修館書店)

Hjugi 今とっても忙しいシーズンでして、なかなか本を読めません。机の上に20冊くらい積み上がっているんですけど。
 そんな中、久々に読んだのがこの本。う〜ん、これもまた仕事の一部であって読書とは言えないか。いや、別に上司に読めと言われたわけではありません。どちらかというと上司に読んでいただこうと思って、図書室に入れてもらったものです。
 ウチの学校は、まあ田舎の小さな学校ですから、ある意味平和でして、今までのところ危機的な事件・事故はありませんし、モンスターなペアレントもあんまりいません(スチューデントはある意味かわいいモンスターですけど)。しかし、こういう時代ですからいつ何どきそういうことに巻き込まれるかわかりません。ある意味、こういう平和な学校ほど、いざそういう事態になった時にいろいろな処理ミスが生じやすいのかもしれませんし。
 企業でもそうですね。ここのところ会社のトップ3が頭を深々と下げるような記者会見をたくさん見ますけど、そういう会社って、どちらかというと在庫の管理や製品の管理が出来ていなかったというより、危機管理に失敗したような気もします。有名企業、常に修羅場の企業は、そのへんの管理・処理が上手で、表に出てこないんじゃないでしょうか。よくわかりませんが。
 とにかく世の中で最も危機管理に対する意識が低いのが学校であるのはたしかです。ま、世間知らずの集合体みたいなところですからね。これはしかたがない。だから勉強しなくてはならないわけです。私は「悲鳴をあげる学校」「でっちあげ」を読んで、これはもしかして対岸の火事ではないのではと危機感を募らせたのでした。それで買ってもらったのです。
 この本は、実際に学校にまつわる事件・事故、あるいは訴訟やクレームなどに関わってきた元警察官の方が書いた本でして、たしかに参考になる記述がたくさんありました。さすがその道のプロでして、内容がリアル。なるほど〜と思うことばかりでした。
 印象に残ったのは、相手がモンスターであれば、あんまりまともに取り合わなくていいんだということです。まともに取り合わないというのは、いいかげんにしていいということではありません。いわゆる本当の意味での、というか、教育現場的な意味での「誠意」や「真心」や「サービス精神」はいらないということです。
 いや、星さんはある部分ではそういうことこそ大切と説いているんですけど、なんていうかなあ、どうも先生という「善人」は、自他に「善人」であることを期待されすぎてるんですよね。なかなか「悪人」になりきれないと。私もそうかもしれません。そうすると、相手が「悪人」の場合は、その悪人の思うつぼになりがちなんですね。それはよくわかります。わかっているけれど、まず相手が「悪人」であると決めつけたくないというのがある。生徒に対してもそうですね。で、先生って「大人」と接するのが苦手ですから(笑)、大人の悪人(モンスター)が登場しちゃったりすると、うまく対応できないんです。
 で、いつも大人の悪人(モンスター)と対峙している警察官だった星さんは、その退治方法、それも最も適当な(ある意味テキトーな)退治方法を知っているわけですよ。それをリアルに教えてくれているわけです、この本で。
 非常に参考になったのは、実際の会話例ですね。相手の質問やらおどしに対してこちらからも絶妙な質問を織り込んでいく技。これはさっそく使ってみましょう(使う場面があったら)。マスコミとの対応コーナーも面白かった。小泉元首相がいかに見事に適当(テキトー)だったかよく分かります。彼はそういう意味では天才的な受け答えができる人でしたね(正しい、正しくない、好き、嫌いは別として)。そして、ヤクザさんとの対応については、これは学校でというより、日常生活で役に立ちそうですね。いつそういう方々とお友達なるか分かりませんから(笑)。
 と、読んでいて思ったのは、これはやっぱりプロレスだな、演劇だなっていうことです。純粋なリアルファイトでは絶対負けます。生徒に対する戦闘能力だけでは、絶対に大人なモンスターにはかないません。そういう時こそ冷静に相手の出方をうかがって、相手の勢いを利用して、賢く対処しなければなりません。そういうことを、恥ずかしながら教師歴二十数年目にして初めて知ったウブなセンセイでありました。
 あと、「悲鳴をあげる学校」にもありましたが、そういう闘いこそ相手を理解し近づくチャンスでもあるということ。たしかにそれもありますね。そう思わなきゃやってられないってのもありますが。

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