名著復刻全集 近代文学館
芥川賞と直木賞の受賞作が決まったようですね。最近は比較的若い女性が「性と死」を描くケースが多くてですね、なんとも小説自体の逼塞感しか感じないといいますか、ああまたやってらあ的な感慨しかありません。
私は常々小説というジャンルはとうに死んだって言ってるんです。あれらは近代化という特殊状況の中のナルシシズムが生んだ腫瘍みたいなもので、もうそれ自体の繁殖力もないし、最初は気にしていたその腫瘍の宿主も、もうすっかりその存在を忘れてしまったというか、慣れてしまったというか、これは癌になるんじゃないかとか気にすることもなくなってしまってですね、逆にいつのまにかポロッと取れちゃうんじゃないかという別の不安から、なんだか文化財として保護されているという感じじゃないですかね。
まあそれは大変に意味のある時代もありましたよ、でも今のこの世の中ではなあ…第一商売になりません。いや、今回直木賞を獲った桜庭一樹さん(桜庭和志ファンなのか?)はいわゆるライトノベル作家さんですから、けっこうもうけてるんじゃないでしょうか。いやあ、いよいよライトノベルが直木賞獲るようになったか。いやいや、直木賞ってもともとライトノベルなのか。まあ、どう考えても芥川賞より直木賞の方が良性腫瘍だよな。
なんて偉そうなこと言ってますが、私は全く小説というものを読みませんし、もちろん書くこともできません。よって以上の記述は無責任な自意識の発露であり、またそれを無責任に人に押しつけつつ、しかしどこかで共感を期待するという、まさに小説のパロディーとなっております(なんちゃって)。
さてさて、今日のおススメはそうした「できもの」がまだまだ瑞々しく新鮮で、日本人にもてはやされていた頃の状態、すなわち往年の「文学」という文化財を復元したものであります。
ウチの怪しい和室にある父親お手製の渋い本棚に並んでおりますこれらの本は、いわゆる文学華やかなりし頃の初版本を復刻した全集であります。装丁はもちろん紙質についてもかなりこだわったもので、それなりの評価を得ているしろものです。私がまだ二十代の頃、ある生徒の家に家庭訪問に行きましたらこれが並んでましてね、冗談半分で「譲って下さい」と言ったら、ご両親が本当に格安で譲ってくれました。ほとんど全てアンカット状態、すなわち新品同様だったので、非常にありがたく頂戴いたしました。その後20年間にわたり、ウチのインテリアの中心として相変わらずペーパーナイフを入れない状態で鎮座しております(つまり読んでない)。
これは本当に譲ってもらって正解でした。調べたら4期にわたって刊行されたこのシリーズ(新選・特選・精選・秀選)全部あるようですし(ちゃんと調べてない)、なにしろ状態がいい。まあ所詮復刻復元コピーモデルと言えばそれまでですが、オリジナルがなかなか手に入らない事情を考えれば充分に価値があるでしょう。楽器と一緒だな。
そうだなあ、退職後にでもじっくり読もうかな。その頃にはさすがに「性と死」、すなわち「もののあはれ(不随意に対する詠嘆)」も理解できるようになっているでしょう。いや、もしかしすると、一生ナイフを入れないで終わるかもしれまんせが、その時は美術品として子孫に譲りましょう。なんだかウチはそんなようなもんばっかだな。
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