「闇」「奥」「深さ」「もの」@センター試験
今日はセンター試験1日目。今年の国語はどうだったでしょうか。
今までずいぶんとケチをつけてきたセンター試験の国語ですが、今年はほとんど問題のない問題でして、本番としては生涯2回目の満点を取ることができました(おいおいたった2回かよ!)。
つまり、自分が間違った問題は悪問と決めつけ、けっこう徹底的にケチをつけていたんですよね。まあそれは生徒に対する、あるいは自分に対する慰めの意味もあったのでありまして、そういう意味においては、今年は生徒に対して厳しい先生にならなければなりませんね。
漢文が難しかったとみんな言ってました。いや、今までが簡単過ぎたんだと思いますよ。今年は論理的な読みを要求するいい問題でした。古文もようやく高校生レベルまで易化しましたので、これで評・小・古・漢のバランスが取れたと思います。
さて、今日はその中の第1問、評論の内容について書きます。昨年も「予言が当たった!」とかほざいていたワタクシですが、今年もウチの生徒にとっては解きやすかったかもしれません。実際ほとんど間違わなかったようですし(てか、全国的にこれは平均点高いでしょう)。
狩野俊次さんの「住居空間の心身論−『奥』の日本文化」からの抜粋。前半は、「闇」の積極的な意味を考えることで、「明るい近代」を批判します。これはですねえ、ワタクシの駄エッセイ「暗黒」を読ませられていた生徒諸君には分かりやすかったのでは(笑)。
後半の「奥」論は面白いですね。「奥」は時間的な要素も含んでいると。たどりつくまでのプロセスが大事だと。なるほどと思いました。「間」との類似性の指摘も納得。
これは私の「モノ・コト論」で言いますところの、「モノ」ですよね。闇にしろ夜にしろ奥にしろ。私は「モノ」としての「道の奥」すなわち「陸奥」論を展開したこともあります。今回もこの評論を読みながらついついいろいろと妄想してしまいました。私にとってはあの「大物忌神社」から北は完全なる「道の奥」ですから。
さてさてついでにもう少し妄想しておきますと、「闇」に存在する「深さ」や「奥」における時間的要素ですが、これはもちろん芸術にも当てはまりますね。あらゆるジャンルにおいていわゆる深みのない作品の多い昨今。分かりやすさはやっぱり近代の所産であって、そこには共通認識はあるけれども、多様性はない。つまり、奥の院へ向かう参道に立った時の、あの緊張や恐怖や興奮がないんですね。プロセスでの自分の感情や感性の参与が拒絶されている。いつも言うように、これは生命力の減退する状況です。多様な縁起がないんですから。
一昨日登場した土方巽なんか、完全なる「闇」であり「奥」です。「暗黒舞踏」の「暗黒」とはそういう意味ですよ。「ワケわからん」ですましてしまう人はそれまでです。つまり、そういう人は参道の奥に何も見えないのを理由に歩を進めない人なんです(私もまだそういう人ですが)。緊張や恐怖や興奮の中で対象に近づこうとすることによって見えてくるもの。その「モノ」は実は最初からそこにあるのではなくて、自分のその働きかける存在によって生起するものなのでした。
というわけで、今年の評論問題は解きながら様々な妄想の浮かぶ、なかなか奥深い内容でありました。
興味を持った方はこちらでお読み(お解き)下さい。
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