『「世界征服」は可能か?』 岡田斗司夫 (ちくまプリマー新書)
「いつまでもデブと思うなよ」が好調な岡田センセイ。もしかして私の一日一食の影響受けたんじゃないでしょうねえ。一時期この不二草紙にもいらしてましたので。
というか、ホントにお痩せになりましたね。すごいインパクトです。50キロ減ですか。このインパクトのためにわざと太ってたんじゃないの?…なんてね。すっかりオシャレになってしまって「オタキング」の面影はいずこへ。脱ヲタかな…と思いきや。
この本を読んで安心しました。古き良きアニメやマンガや特撮ものがじゃんじゃん登場します。それでいて、とっても楽しく勉強になる現代社会論や一つの哲学にもなっていて、うん、岡田センセイらしさがよく出ているんじゃないでしょうか。適度な脱力感と適度な力みのバランスが絶妙です。
岡田さんってとっても愛が深い人ですよね。そして、なんとなく悲観的なことを言う時もあるんだけれど、結局は世の中を信じている。性善説というかね。
いや、岡田さんに限らず、我々オタクは性善説なんですよ。だって、日本のアニメやマンガや特撮物見れば分かりますよね。今も娘たちがポケモン観てますけど、なんですか、このロケット団の愛らしさは。偉いっす。一生懸命だし絶対諦めないし懲りないし。この本に出てくる悪役もみんな魅力的ですが、その他の悪役、たとえばこのロケット団もそうですし、バイキンマンやクロミちゃんとバクなんかも、みんなドカーンとやられてお空に飛んでって、そしてキラン!と星になる。毎回ね。とっても可愛いっす。その星になるってとこが、日本人の優しさの表れですよね。
判官贔屓というのがあります。昔から。勧善懲悪ものであってもその「悪」はどこか愛らしく魅力的だったりしますよね。あるいは負け組に対する感情移入というのも日本人は強い。南朝へのシンパシーを引き合いに出すまでもなく、いろんなところに表れています。絶対的に強い者は一時的にはもてはやされますが、いずれ必ず刺されます。最近のニュースに登場する人たちを見れば分かりますね。
さて、性善説の岡田センセイ、結局「世界征服」は可能だと言ってるんでしょうか。たぶんそれは可能ではありますが、あまりに割の悪い仕事なので誰もやらないというのが実情なのでしょう。彼が指摘する通り、たしかに「世界征服」したのちどうするのか分からないことが多い。つまり手段が目的化してしまっていると。地球を征服したところで、実質的なメリットはない…のか?
そのへんについては、この本でいろいろな角度から検証されているのでぜひ読んでみてください。後半では世界征服の具体的な方法も書かれていますが、結局のところその目的がはっきりしないんですね。でも、それは仮想世界での出来事ではなくて、歴史的な「悪者」や、いや歴史に残らない私たち凡人たちのちょっとした成り上がり願望みたいなものとそれに基づいた行動も、全く同じような事象と言えるかもしれませんね。特に「男」のそれら。女はなぜかそういうこと考えないんだよな。仮想世界にも女の悪者いるけど、彼女たちってけっこう「嫉妬心」で動いてるような気がします。男の支配欲とは違いますね。
さて、この本で結論づけられている「悪」の定義、これはなかなか面白いし、世の本質を突いていると思いますよ。すなわち、「その時代の価値・秩序基準を破壊するもの」こそ「悪」であるというのです。たしかにそういう定義の仕方もできますね。それは絶対的な悪ではなく、あくまで相対的な悪ではありますが。まあ、歴史は全てそうした相対的な善悪の関係で動いてきたのは確かです。
そうしますとね、私が提唱している反市場経済的な考え方、「消費は悪徳」的な考え方、仏陀的な考え方は、現代では「悪」ということになりますね。このブログではけっこう世の中の常識と反対のことを言うことが多いので、私はまさに「悪者」だということですね。
それはそれで大いに結構なことであります。できれば愛すべき「悪者」になりたいなあ…なんて、そこまでの器ではありません…てか、どう考えても彼らほど努力家ではありません。
Amazon 「世界征服」は可能か?
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コメント
はじめまして。
ワタシもこの本、興味深く読みました。前半と後半のギャップが激しく。。。でもほんとうに岡田さんは真面目で性善説な方なのだと、最終章を読んで感じた次第です。TBさせていただきます。
投稿: カオリ | 2007.12.05 14:47
カオリさん、どうもです。
岡田さんの優しさはオタクの象徴ですよ。
対象に対する愛の深さこそ、オタクの根源ですからね。
私も早くオタクになりたい…笑
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.12.05 17:00